AkaiKKRでPd-Rh二相共存領域

二元系の状態図には、全率固溶型や共融型などいくつかのパターンが存在します。Pd-Rhの二元系では、端成分が共に面心立方構造となっています。そのため高温では固溶体となります。しかしながら、低温では二相に分離します。今回はAkaiKKR(machikaneyama)を利用して、この境界となる温度を求めてみます。

Pd-Rh-520.png

Fig.1: Pd-Rh二元系の合金状態図とAkaiKKR(machikaneyama)によって計算された固溶と二相共存の境界温度(紫:マフィンティン近似, 緑:原子球近似)



熱力学


全エネルギーの組成依存性が上に凸の形になる場合、定性的に二相分離が予想されます。境界温度を推定するためには、二相分離した状態と固溶した状態のギブスエネルギーの差がゼロになる条件を探せばよいことが分かります。

\begin{equation}
G = E + PV - TS
\end{equation}

まず、常圧のみを考えると P≒0 としても影響はほとんどありません。エネルギー E の項には、第一原理計算から得られる全エネルギーの他に格子振動の寄与などが考えられますが、二相分離状態と固溶状態の差は小さいと仮定して無視します。

エントロピーSについても配置のエントロピーのほかに格子振動の寄与などが考えられますが、配置のエントロピーのみを考えることにします。するとRh濃度が x のときの全エネルギーの差と、固溶体の配置のエントロピーは、以下の様になります。

\begin{equation}
\Delta E(x) = E_{\mathrm{Pd_{1-x}Rh_{x}}} - \{ (1-x)E_{\mathrm{Pd}} + x E_{\mathrm{Rh}} \} \\
S_m(x) = - k_B \{ (1-x)\ln (1-x) + x \ln (x) \}
\end{equation}

したがって求める温度は以下のようになります。

\begin{equation}
T(x) = \frac{\Delta E(x)}{S_m(x)}
\end{equation}

計算手法


AkaiKKR(machikaneyama)を用いてPd-Rh合金系の全エネルギーを計算しました。交換相関汎関数にはpbeを用いました。シェルスクリプトPdRh_sh.txtを用いて、組成と格子定数を変化させながら、各組成における最安定な格子定数とそのときの全エネルギーを決定しました。ポテンシャルの形状は、マフィンティン近似と原子球近似(ASA)の両方を試しました。

全エネルギーを計算する際に、状態密度の計算も行いました。端成分の状態密度に関してはecaljでも計算し、クロスチェックしました。

結果と議論


Fig.2-3に純粋なPdとRhの状態密度を示します。AkaiKKRで計算した結果とecaljで計算した結果が良く一致していることが分かります。

Pd-DOS.png
Fig.2: Pdの状態密度

Rh-DOS.png
Fig.3: Rhの状態密度


Fig.4にPdの体積と全エネルギーの関係をプロットしたものを示します。ゼロ気圧における体積V0とそのときの全エネルギーE0を得るためにBirch-Murnaghanの状態方程式にフィッティングしました。

\begin{equation}
E(V) = E_0 + \frac{9V_0B_0}{16}\left\lbrace \left[ \left( \frac{V_0}{V} \right)^{\frac{2}{3}} -1 \right]^3 B_0^\prime \\
+ \left[ \left( \frac{V_0}{V} \right)^{\frac{2}{3}} -1 \right]^2 \left[ 6 -4 \left( \frac{V_0}{V} \right)^{\frac{2}{3}} \right] \right\rbrace
\end{equation}

PdRh_0.png
Fig.4: Pdの体積と全エネルギーの関係


フィッティングする体積の範囲はV0付近でフィッティング結果が良くなるように適切に選びます。

得られた全エネルギーから固溶と二相分離の境界の温度をプロットしたのがFig.1です。計算結果は、二元合金状態図集の状態図と比較してあります。Pd-Rh合金の計算ではASAの結果が実験結果を驚くほどよく再現しています。しかしながら、今回のような良い結果が得られるのは、どうやら周期表で同じ周期に隣接している元素同士の合金だけのようです。

関連エントリ




参考URL




付録


このエントリで使用したファイルを添付します。ファイル名末尾の".txt"を削除して、"_"を"."に変更すれば使えるはずです。(参考:ねがてぃぶろぐの付録)


参考文献/使用機器




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