AkaiKKRとecaljでCuGaTe2 その1

第一原理計算パッケージには、それぞれ特徴があり、計算したい物質によって適切に使い分ける必要に迫られることがあります。AkaiKKR(machikaneyama)は不規則系に適しており、ecaljは半導体のバンドギャップを求めるのに適しています。

例えば、不規則を含む半導体の計算をAkaiKKRで行いたいと考えたとき、不規則を含まない端成分の計算をecaljの結果と比較しておくことは有用です。今回はCuGaTe2を対象として、AkaiKKRで状態密度の計算をおこないました。

CuGaTe2DOS.png
Fig.1: CuGaTe2の状態密度



AkaiKKRとecaljの長所


AkaiKKR(machikaneyama)は、コヒーレントポテンシャル近似(CPA)を導入することによって、合金などの不規則性を扱うことが可能であるという特徴があります。
またecaljはGW近似を用いて、半導体のバンドギャップの見積もりを局所密度近似(LDA)から改善できる長所があります。

他にもさまざまな第一原理計算パッケージが、それぞれ特有の長所を持っています。このため、しばしば複数のコードでの計算結果を比較するということが起こります。

今回と次回では、AkaiKKRの掲示板に投稿された CuGaTe2 のバンドギャップをこれら二つのコードで計算し、バンドギャップと状態密度の比較を行います。今回はAkaiKKRでの計算です。

計算手法


入力ファイルはCannot reproduce the bandgap of CuGaTe2に投稿されているものとほとんど同じですが、少しだけ変更してあります。一つ目の変更点は、スピン軌道相互作用を(計算が重いので)はずした事。二つ目はewidthを小さくしたことです。

c--------------------CuGaTe2---------------------------------
go data/cugate2
c------------------------------------------------------------
c brvtyp a c/a b/a alpha beta gamma
bct 11.5388 1.992 1 90 90 90
c------------------------------------------------------------
c edelt ewidth reltyp sdftyp magtyp record
0.001 0.7 sra pbe nmag 2nd
c------------------------------------------------------------
c outtyp bzqlty maxitr pmix
update 4 500 0.015
c------------------------------------------------------------
c ntyp
5
c------------------------------------------------------------
c type ncmp rmt field mxl anclr conc
Cu 1 0 0.0 2 29 100
Ga 1 0 0.0 2 31 100
Te 1 0 0.0 2 52 100
Es1 1 0 0.0 0 0 100
Es2 1 0 0.0 0 0 100
c------------------------------------------------------------
c natm
16
c------------------------------------------------------------
c atmicx atmtyp
0.23703x 1/4y 1/8z Te
0.76297x 3/4y 1/8z Te
3/4x 0.23703y 3/8z Te
1/4x 0.76297y 3/8z Te
1/2x 1/2y 0.0z Ga
1/2x 0.0y 1/4z Ga
0.0x 0.0y 0.0z Cu
0.0x 1/2y 1/4z Cu
c
0.75x 1/4y 1/8z Es1
0.25x 3/4y 1/8z Es1
3/4x 0.75y 3/8z Es1
1/4x 0.25y 3/8z Es1
c
0.0x 0.0y 0.25z Es2
1/2x 1/2y 0.25z Es2
0.0x 1/2y 0.0z Es2
1/2x 0.0y 0.0z Es2
c------------------------------------------------------------


結果


Fig.1に状態密度を示します。
AkaiKKRでの状態密度やバンド構造(ブロッホスペクトル関数)のエネルギー分解能は source/specx.f の msex で指定することが可能で、デフォルトでは msex=201 となっています。したがって、状態密度を計算するために ewidth = 0.8 Ry とした場合の分解能は 4 mRy 程度になります。その結果、状態密度の図だけを見ると、バンドギャップが存在するか否かが微妙です。

AkaiKKRでバンドギャップの測り方では、バンドギャップを決める場合、状態密度から値を読むよりも、バンド構造から見るほうが良さそうであると書きました。CuGaTe2は、伝導帯の上端(CBM)と価電子帯の下端(VBM)が共にΓ点に存在する直接遷移型の半導体であるとの事なので、その付近のバンド構造をプロットしたのがFig.2です。

CuGaTe2band.png
Fig.2: Γ点周辺のCuGaTe2のバンド構造


GaAsの場合と異なり、CBMにフェルミ準位(というか計算上のエネルギー基準点)が張り付いてしまっていますが、電子の数を足し上げるときの数値計算上の誤差と思うので、いまは気にしないことにします。

ローレンツ関数へのフィッティングは、あまりきれいにいかなかったので、目視で読むと、バンドギャップの大きさはおよそ 30 mRy 程度でしょうか。換算すると 0.4 eV 程度となるので、Cannot reproduce the bandgap of CuGaTe2に書かれている通り 1 eV 程度存在するはずのバンドギャップから見ると過小評価です。

AkaiKKRに限らず密度汎関数理論(DFT)に局所密度近似(LDA)や一般化勾配近似(GGA)を組み合わせた第一原理計算パッケージは、バンドギャップを過小評価してしまう問題が広く知られています。
ecaljで利用できるGW近似は、この問題に対する回答のひとつです。AkaiKKRとecaljでCuGaTe2 その2では、ecaljを用いてCuGaTe2の状態密度とバンドギャップを計算します。

関連エントリ




参考URL




付録


このエントリで使用したファイルを添付します。ファイル名末尾の".txt"を削除して、"_"を"."に変更すれば使えるはずです。(参考:ねがてぃぶろぐの付録)


参考文献/使用機器




フィードバック



にほんブログ村 その他趣味ブログ 電子工作へ

 ↑ 電子工作ブログランキング参加中です。1クリックお願いします。


コメント・トラックバックも歓迎です。 ↓      


 ↓ この記事が面白かった方は「拍手」をお願いします。


tag: AkaiKKR machikaneyama KKR CPA ecalj 半導体 バンドギャップ バンド構造 分散関係 GW近似 

comment

Secret

FC2カウンター
カテゴリ
ユーザータグ

LTspiceAkaiKKRmachikaneyamaScilabKKRPSoCOPアンプCPA強磁性PICモンテカルロ解析常微分方程式odeトランジスタecalj状態密度DOSインターフェース定電流スイッチング回路PDS5022半導体シェルスクリプト乱数レベルシフトHP6632A温度解析分散関係I2Cトランジスタ技術R6452A可変抵抗ブレッドボードセミナーバンドギャップ数値積分確率論反強磁性偏微分方程式バンド構造絶縁熱設計非線形方程式ソルバフォトカプラシュミットトリガLEDLM358カオスISO-I2C三端子レギュレータGW近似A/Dコンバータカレントミラーアナログスイッチ数値微分マフィンティン半径TL431発振回路サーボPC817CUSB直流動作点解析74HC4053補間FFTBSch開発環境パラメトリック解析2ちゃんねるチョッパアンプ量子力学bzqlty電子負荷イジング模型LDA標準ロジックアセンブラ基本並進ベクトルブラべ格子単振り子熱伝導位相図TLP621キュリー温度繰り返し状態方程式MaximaVESTAスイッチト・キャパシタ相対論FETランダムウォークスピン軌道相互作用SMP六方最密充填構造抵抗不規則合金ewidthスレーターポーリング曲線GGAラプラス方程式cygwingfortranQSGW失敗談コバルト条件分岐TLP521テスタLM555Writer509TLP552格子比熱マントルデータロガー自動計測詰め回路ガイガー管ダイヤモンドQNAPMCUFXA-7020ZR過渡解析三角波UPSNE555固有値問題熱力学ブラウン運動フェルミ面awk起電力第一原理計算OpenMPfsolveubuntu最大値xcrysden最小値最適化仮想結晶近似VCA差し込みグラフスーパーセル井戸型ポテンシャル平均場近似シュレディンガー方程式FSMフラクタルOPA2277固定スピンモーメント2SC1815全エネルギー合金multiplotgnuplotc/aTeX結晶磁気異方性interp1ウィグナーザイツ胞初期値マンデルブロ集合疎行列面心立方構造fcc不純物問題非線型方程式ソルバフィルタL10構造PGA半金属二相共存SICZnOウルツ鉱構造BaO重積分クーロン散乱磁気モーメント電荷密度三次元CIF岩塩構造CapSenseノコギリ波デバイ模型ハーフメタル正規分布フォノンquantumESPRESSOルチル構造スワップ領域リジッドバンド模型edelt縮退キーボード軸ラベルグラフの分割凡例トラックボールPC不規則局所モーメント片対数グラフトランス両対数グラフCK1026MAS830L直流解析Excel円周率パラメータ・モデルヒストグラム日本語最小二乗法等価回路モデルGimp線種シンボルTS-110TS-112PIC16F785LMC662化学反応文字列specx.f入出力ifortマテリアルデザインヒストグラム確率論Realforce等高線ジバニャン方程式P-10Ubuntuナイキスト線図Crank-Nicolson法陰解法熱拡散方程式HiLAPWAACircuit連立一次方程式負帰還安定性境界条件EAGLEMBE関数フィッティング

最新コメント
リンク

にほんブログ村 その他趣味ブログ 電子工作へ