密度汎関数理論入門: 理論とその応用

密度汎関数理論入門: 理論とその応用を購入したのでレビューします。

英文タイトルは Density Functional Theory A PRACTICAL INTRODUCTION です。この PRACTICAL の部分が日本語のタイトルには反映されていないのですが、この本の重要な点は、まさに PRACTICAL な入門書であるという点です。




PRACTICALな入門書という点に関して、訳者まえがきから引用します。
国内では, このDFTの理論を取り扱った書籍は, 和書・翻訳書ともにある程度の数が存在する. 特にDFTそのものについての解説には優れた書籍が出版されている. しかし, 量子力学に十分精通していない研究者や技術者がこういった書籍を読みこなすには多くの困難が待ち受けていると思われる. これに対し, 本書は, DFTを用いて物性値(あるいは「材料の特性値」)を実際に導くために, どのような条件を設定するか, 何に気を付けないといけないか, またDFT計算から直接得られる値をどう用いるかについて丁寧に書かれており, 非常に実践的な(副題にもなっている, プラクティカルな)内容となっている.


つまり密度汎関数理論の高尚な解説ではなく、第一原理計算ソフトウエアのユーザーのための入門書という事です。
魔法のように物性値を計算してくれる(?)第一原理計算ソフトに興味を持ったものの、少し勉強しようと思ったら、いきなりシュレディンガー方程式が出てきて、自分の知りたい知識(求めたい物性を計算する方法)とのあまりものギャップに面食らったという人のための本です。

具体的な第一原理計算パッケージに依存した記述はありませんが、基本的には平面波基底+擬ポテンシャル法(VASPとかAbinitとかQuantum ESPRESSOとか)のソフトの利用を想定しているようです。そういう意味では全電子法であるAkaiKKR(machikaneyama)などには当てはまらない内容もあります。ただ、どのパッケージを使うにしても、(最も良く使われているであろう)平面波基底+擬ポテンシャル法の知識はあった方がいいと思います。(さもなければ自分の使うコードのアドバンテージを説明できません。)

内容はおおざっぱに言って3パートに分類できると思います。

1章と10章は、基本的な背景となる理論です。
このパートには、密度汎関数理論のお決まりの説明(シュレディンガー方程式は多体問題だから直接は解けなくて、密度汎関数理論を使ってコーンシャム方程式に書き直して...でも、多体問題のところは結局どうしようもないから、局所密度近似などの近似を使うけど、その近似のせいでときどき変な結果になって困る...というような話)が書いてあります。
このたぐいの話も理解しておきたいのですが、重要な点は、このパートに出てくる数式を理解できなくても以降のパートを読むのに支障はないという事です。

2章と3章がこの本のメインだと思います。
2章は、実際に最も簡単な固体の計算を行うために必要な知識について書いてあります。まず計算のための入力ファイルを作るために必要な最低限の結晶学について、次に計算結果である全エネルギーを理解するための最低限の熱力学です。
3章は、もう少しDFT計算寄りの話です。第一原理計算の文献によく出てくるパラメータの意味(k点の数とかカットオフエネルギーとか)について解説されています。

4章から9章までは各論です。興味のある順番に読むのが良いと思います。
AkaiKKR(machikaneyama)に最も向いているのは8章の「電子構造と磁気的性質」なので、私はそこから読みました。

  1. 密度汎関数理論とはなんだろう?
  2. 単純な固体のDFT計算
  3. DFT計算の実際
  4. 固体表面のDFT計算
  5. 振動数のDFT計算
  6. 遷移状態理論による化学反応速度の計算
  7. 第一原理熱力学による平衡状態図
  8. 電子構造と磁気的性質
  9. 非経験的分子動力学法
  10. 正確さと“標準的な”計算を超えた方法


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