ecaljで強磁性鉄のスピン分極計算

ecaljでは、デフォルトではスピン分極を考慮しない(非磁性の)計算となっています。スピン分極を含む計算を行う場合、デフォルトの手続きに加えて、以下のことを行う必要があります。
  1. 結晶構造ファイル ctrls.fe にスピンモーメントの初期値を記入する
  2. 制御ファイル ctrl.fe に nspin=2 を設定する



001_20150927005941da8.png

Fig.1: 鉄のバンド構造



体心立方構造(bcc)の強磁性鉄


第一原理計算を行う際にスピン分極を考慮しない計算は、スピン分極を考慮する計算よりも計算時間を短くできます。そこでシリコンや銅といった非磁性であることが予想できる物質の計算を行う場合は、スピン分極を考慮しない計算の方が有利です。
このためecaljのデフォルトの設定では、スピン分極を考慮しないようになっているようです。これに対して体心立方構造(bcc)の鉄などは強磁性体なのでスピン分極を考慮した計算を行う必要があります。

結晶構造ファイル ctrls.fe (初期スピンモーメントの指定)


初期のスピンモーメントを2μBとした体心立方構造(bcc)鉄の結晶構造ファイルは以下のようになります。

#id  = Fe
%const bohr=0.529177 a=2.8665/bohr
STRUC ALAT={a}
PLAT=-.5 .5 .5
.5 -.5 .5
.5 .5 -.5
SITE ATOM=Fe POS= 0 0 0
SPEC ATOM=Fe Z=26 MMOM=0,0,2,0


これまでの入力ファイルに加えて SPEC の行が追加されています。
ATOM は SITE で定義したサイト名です。それに続く Z は原子番号です。スピンモーメントを指定する場合、原子番号は省略することはできません(だったと思います)。

MMOM がスピンモーメントで左から順にs,p,d,f状態です。
鉄の強磁性は主にd電子に起因するのでd電子の値を実験から得られている全磁気モーメント(2.2μB)に近い値としておきます。あくまで初期モーメントなので、固定スピンモーメント計算ではないのですが、リーズナブルな値を与えておく方が良いと思います。(参考: AkaiKKRで固定スピンモーメント計算)

制御ファイル ctrl.fe (スピン分極計算の設定)


次にスピン分極を計算するための制御ファイル ctrl.fe を作成します。制御ファイルの作成にはecaljの実行手順(LDA計算)の通り ctrlgenM1.py を使います。ここで追加のオプションとして --nspin=2 を指定すればスピン分極計算用の制御ファイルが作成されます。
ctrlgenM1.py fe --nspin=2
cp ctrlgenM1.ctrl.fe ctrl.fe

後は通常通りにLDA計算を行います。

制御ファイルのオプション(k点数の変更など)


ctrlgenM1.py にオプションを追加する方法は、他の用途にも使えます。例えば、状態密度計算のためにk点の数を増やすことを考えます。
ctrlgenM1.py fe --nspin=2 --nk1=8
cp ctrlgenM1.ctrl.fe ctrl.fe



002_20150927005941a99.png

Fig.2: 鉄の状態密度


他にも交換ポテンシャルの種類やスピン軌道相互作用の有無などが指定できるようです。--helpオプションを付けて実行するとデフォルトの設定が表示されます。
ctrlgenM1.py --help

以下のようにデフォルトの設定などが表示されました。
ctrlgenM1.py. tkotani and h.kino aug_2013 version :
---------------
Purpose:
Generate a template of ctrl file names as ctrlgenM1.ctrl.{ext}."
Before you run lmfa, you have to copy ctrlgenM1.ctrl.{ext} to ctrl.{ext} and edit it.
Usage : ctrlgenM1 {extension of ctrl file} [option]
[options] = INPUT arguments in the followings.
Your given options (also defaults when not specified) are shown at the begining of console output.
Example:
After you write ctrls.si, run
>ctrlgenM1.py si --nk1=8 --nk2=8 --nk3=8 --tratio=1.0 --xcfun=vwn


=== INPUT options (shown values are default) ===
--help given
--showatomlist Not exist
--nspin=1
--so=0
--nk1=4 Division for BZ integral along a-axis
--nk2=4 (if not give, nk2=nk1) along b-axis
--nk3=4 (if not give, nk3=nk1) along c-axis
--xcfun=vwn !(bh,vwn,pbe)
+++ Followings are for experts to change +++
--tratio=0.97 (for MT radius: we use touching MT radius \times this ratio. lmf --getwsr is called.
if negative, we use use defalut MT radius in ctrlgenM1.py)
--systype=bulk !(bulk,molecule)
--insulator Not exist !not set this if you are not expert. (do not set for --systype=molecule)
--fsmom=0.0 ! (only for FSMOM mode. --systype=molecule automatically set this)
--ssig=1.0 ! ScaledSigma(experimental =1.0 is the standard QSGW

--- end of help ---


関連エントリ




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参考文献/使用機器




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