ecaljでAg2Oの状態密度

ecaljではGW近似を用いてバンドギャップを精度良く計算できます。今回はAg2Oの状態密度を計算しました。その結果1eV程度のバンドギャップが見られました。この値は1.3eVの実験値と比較してもよい値と思います。


001_20150919224215283.png
Fig.1: Ag2Oの状態密度。LDA計算(赤)とOne-shot GW近似(緑)



Ag2Oのバンドギャップ


ecaljはLDAでは難しい半導体のバンドギャップをGW近似を用いて精度良く計算できます。密度汎関数理論入門: 理論とその応用ではAg2Oが半導体であるにも、金属のようなバンド構造が計算されてしまうLDAの問題点の例として紹介されています。
そこで今回はAg2の状態密度をecaljを用いてLDA計算とone shot GW計算の両方で描画し、GW近似によってバンドギャップに改善がみられることを確認します。

Ag2Oの結晶構造


Ag2Oの結晶構造を表すcifファイルはGitHubのAg2O.cifのページのものを使いました。これをVESTAで描画したのがFig.2です。
格子は単純立方格子で、体心立方構造の位置に酸素の原子が(1/4 1/4 1/4), (3/4 3/4 1/4), (3/4 1/4 3/4), (1/4 3/4 3/4)に銀の原子が存在しています。


002_20150919224215331.png
Fig.2: Ag2の結晶構造(標準化前)



003_201509192242139aa.png
Fig.3: Ag2の結晶構造(標準化後)


VESTAでUtilities → Standardization of Crystal Dataを実行するとFig.3の構造が表示されます。これらは等価な構造なのでどちらを使ってもよいのですが、私にとっては後者の方が(なんとなくちょっかんてきに)分かりやすかったので、後者で結晶構造ファイルを作成しました。

STRUC    ALAT=8.995
PLAT=1.0 0.0 0.0
0.0 1.0 0.0
0.0 0.0 1.0
SITE ATOM=O POS=1/4 1/4 1/4
ATOM=O POS=3/4 3/4 3/4
ATOM=Ag POS=0.0 0.0 0.0
ATOM=Ag POS=1/2 1/2 0.0
ATOM=Ag POS=1/2 0.0 1/2
ATOM=Ag POS=0.0 1/2 1/2


結果


以下に示すFig.4がLDA計算によるAg2Oの状態密度です。フェルミ準位(というか価電子帯の上部というか)で、状態密度が小さくなっていますが、バンドギャップは生じておらず、密度汎関数理論入門: 理論とその応用に載っているのと同様な図が得られています。

004_20150919224212e14.png
Fig.4: LDA計算によるAg2Oの状態密度


Fig.5がGW近似を用いたAg2Oの状態密度です。


005_201509192242126fe.png
Fig.5: One-shot GWによるAg2Oの状態密度


約1eVのバンドギャップが開いていることが分かります。現実のバンドギャップが1.3eV程度ということなので、LDA計算からの改善が確認できます。

関連エントリ




参考URL




付録


このエントリで使用したファイルを添付します。ファイル名末尾の".txt"を削除して、"_"を"."に変更すれば使えるはずです。(参考:ねがてぃぶろぐの付録)


参考文献/使用機器




フィードバック



にほんブログ村 その他趣味ブログ 電子工作へ

 ↑ 電子工作ブログランキング参加中です。1クリックお願いします。


コメント・トラックバックも歓迎です。 ↓      


 ↓ この記事が面白かった方は「拍手」をお願いします。


tag: ecalj 半導体 バンドギャップ GW近似 

comment

Secret

FC2カウンター
カテゴリ
ユーザータグ

LTspiceAkaiKKRmachikaneyamaScilabKKRPSoCOPアンプCPA強磁性PICモンテカルロ解析常微分方程式odeトランジスタecalj状態密度DOSインターフェース定電流スイッチング回路PDS5022半導体シェルスクリプト乱数レベルシフトHP6632A温度解析分散関係I2Cトランジスタ技術R6452A可変抵抗ブレッドボードセミナーバンドギャップ数値積分確率論反強磁性偏微分方程式バンド構造絶縁熱設計非線形方程式ソルバフォトカプラシュミットトリガLEDLM358カオスISO-I2C三端子レギュレータGW近似A/Dコンバータカレントミラーアナログスイッチ数値微分マフィンティン半径TL431発振回路サーボPC817CUSB直流動作点解析74HC4053補間FFTBSch開発環境パラメトリック解析2ちゃんねるチョッパアンプ量子力学bzqlty電子負荷イジング模型LDA標準ロジックアセンブラ基本並進ベクトルブラべ格子単振り子熱伝導位相図TLP621キュリー温度繰り返し状態方程式MaximaVESTAスイッチト・キャパシタ相対論FETランダムウォークスピン軌道相互作用SMP六方最密充填構造抵抗不規則合金ewidthスレーターポーリング曲線GGAラプラス方程式cygwingfortranQSGW失敗談コバルト条件分岐TLP521テスタLM555Writer509TLP552格子比熱マントルデータロガー自動計測詰め回路ガイガー管ダイヤモンドQNAPMCUFXA-7020ZR過渡解析三角波UPSNE555固有値問題熱力学ブラウン運動フェルミ面awk起電力第一原理計算OpenMPfsolveubuntu最大値xcrysden最小値最適化仮想結晶近似VCA差し込みグラフスーパーセル井戸型ポテンシャル平均場近似シュレディンガー方程式FSMフラクタルOPA2277固定スピンモーメント2SC1815全エネルギー合金multiplotgnuplotc/aTeX結晶磁気異方性interp1ウィグナーザイツ胞初期値マンデルブロ集合疎行列面心立方構造fcc不純物問題非線型方程式ソルバフィルタL10構造PGA半金属二相共存SICZnOウルツ鉱構造BaO重積分クーロン散乱磁気モーメント電荷密度三次元CIF岩塩構造CapSenseノコギリ波デバイ模型ハーフメタル正規分布フォノンquantumESPRESSOルチル構造スワップ領域リジッドバンド模型edelt縮退キーボード軸ラベルグラフの分割凡例トラックボールPC不規則局所モーメント片対数グラフトランス両対数グラフCK1026MAS830L直流解析Excel円周率パラメータ・モデルヒストグラム日本語最小二乗法等価回路モデルGimp線種シンボルTS-110TS-112PIC16F785LMC662化学反応文字列specx.f入出力ifortマテリアルデザインヒストグラム確率論Realforce等高線ジバニャン方程式P-10Ubuntuナイキスト線図Crank-Nicolson法陰解法熱拡散方程式HiLAPWAACircuit連立一次方程式負帰還安定性境界条件EAGLEMBE関数フィッティング

最新コメント
リンク

にほんブログ村 その他趣味ブログ 電子工作へ