AkaiKKRの原子半径比

AkaiKKRのマフィンティン半径のメモでは、マフィンティン半径の設定としてrmt=0を指定すると原子半径比が設定されると書きました。しかしながら「原子半径比」という言葉の定義は曖昧でした。そこで、総当り的にマフィンティン半径を計算してみた結果、source/qvolum.fに記述された体積の1/3乗の比と考えると納得のいく値になると分かりました。

001_201508231333461de.png

Fig.1: AkaiKKRで設定されるMT半径比(紫の丸)とsource/qvolum.fに記述された体積の1/3乗(緑の実線)。どちらも水素の値で規格化してある。AkaiKKRの「原子半径比」とは単体で結晶化させたときの原子ひとつあたりの体積の1/3乗の比を意味するらしい。



マフィンティン半径にゼロを設定


AkaiKKRのマフィンティン半径のメモでは、入力ファイルの全ての原子に対してrmt=0と指定しておくと、マフィンティン球が重ならない範囲で、それぞれのマフィンティン半径(MT半径)の比が原子半径比になるように設定されると書きました。

しかしながら「原子半径比」というのは、少し曖昧な言葉で、文脈によって色々な解釈がありえます。(参考:元素、原子半径と周期表)
そしてこの言葉の定義に関して、AkaiKKR(machikaneyama)のマニュアルには特に言及がないように見えます。

そこで今回は、多少力業ですが、色々な元素からなるAB二元合金の入力ファイルを総当り的に作成し、それぞれ実際に割り当てられたMT半径のひを調べることにします。

総当り計算の入力ファイル


以下に示すのがMT半径の設定を調べるための入力ファイルのテンプレートです。テンプレート中のA原子とB原子の原子番号をあらわすNAとNBをシェルスクリプトで順次置き換えることにより、実際の入力ファイルを作成します。

c------------------------------------------------------------
go data/AB
c------------------------------------------------------------
c brvtyp a c/a b/a alpha beta gamma
sc 5.0 , , , , , ,
c------------------------------------------------------------
c edelt ewidth reltyp sdftyp magtyp record
0.001 1.0 sra pbe nmag init
c------------------------------------------------------------
c outtyp bzqlty maxitr pmix
update 1 1 0.023
c------------------------------------------------------------
c ntyp
2
c------------------------------------------------------------
c type ncmp rmt field mxl anclr conc
A 1 0 0.0 2
NA 100
B 1 0 0.0 2
NB 100
c------------------------------------------------------------
c natm
2
c------------------------------------------------------------
c atmicx atmtyp
0 0 0 A
0.1 0 0 B
c------------------------------------------------------------


計算を収束させる必要はないのでbzqltyやmaxitrは1としています。異なる原子同士が確実に先に接するように原子位置を選ぶ必要があることに注意してください。

結果と解釈


AtomicRadii.shを実行して終了を確認した後にAtomicRadiiResult.shを実行するとRMTA.txtRMTB.txtがanalysisフォルダに作成されます(analysisフォルダやを置くtemplateフォルダはあらかじめ作成しておく必要があります。)。これらがMT半径の生データです。

データの数が多いので、水素との化合物を作ったときのMT半径の比だけを考えます。冒頭のFig.1に紫の丸で示してあるのが、水素化合物の計算をしたときの相手方の元素のMT半径で、水素のMT半径が1になるように規格化してあります。(すなわち水素とのMT半径比です。)

MT半径の設定は、セルフコンシステント計算のイテレーションが始まる前に行われます。したがって、AkaiKKRのソースコードのどこかに原子半径比(を計算するため)のパラメータが書かれているはずだと考えます。するとsource/qvolum.fの中に、単体で結晶化させた際の原子一個あたりの結晶の体積が数値データとして書かれているのが見つかります。

そこには2組のデータがあります。1組目は実験データからえら得られたもの、2組目は1組目のものに対してMoruzzi, Janak and Williamsによる第一原理計算によって求められた平衡格子体積から得られた値を一部置き換えたものです。

この後者のmjwの値を含むデータに対して、ある元素xの原子体積を$V_x$と置くと、Fig.1の緑の線は$V_x^{\frac{1}{3}}/V_H^{\frac{1}{3}}$として計算しました。Fig.1を見てのとおり、これらの値は完全に一致しているので、AkaiKKRの原子半径比というのはsource/qvolum.fに記述された、単体元素の原子体積の$\frac{1}{3}$乗の値の比であると考えることができそうです。

関連エントリ




参考URL




付録


このエントリで使用したAkaiKKRのシミュレーション用ファイルを添付します。ファイル名末尾の".txt"を削除して、"_"を"."に変更すれば使えるはずです。(参考:ねがてぃぶろぐの付録)


参考文献/使用機器




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tag: AkaiKKR machikaneyama マフィンティン半径 

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