AkaiKKRでBain機構 その1

体心立方構造(bcc)と面心立方構造(fcc)は、一見すると全く別の構造のように見えますが、体心正方構造(bct)のc/aを変化させたものであると考えると、実は非常によく似た構造であることがわかります。

001_201506220522417ce.jpg

Fig.1: bcc/fcc構造のBainの対応関係(Xie et al. (2008)より)


今回は、AkaiKKRを用いてbct鉄の全エネルギーを格子体積とc/aを変化させながら計算することを前提に、入力ファイルのためのマフィンティン半径の設定について考えます。
AkaiKKRでコバルトのc/a その2のときと同様に「格子体積に対するマフィンティン球体積の比が一定になる範囲で、マフィンティン半径を最大にとる」ならばbcc構造においてマフィンティン球同士がタッチングする半径ですべての計算を行えばいいことがわかります。


Bainの機構


体心立方構造(body-centered cubic; bcc)と面心立方構造(face-centered cubic; fcc)は、どちらも体心正方構造(body-centered tetragonal; bct)のc/aが特別な値の場合と考えることができます。すなわちc/a=1のときbcc構造となり、c/a=√2≒1.414のときにfcc構造となります。

見方・考え方 合金状態図によると、これはBainが鋼のマルテンサイト変態を説明しようとしたことに端を発するとのことです。ただし、実際のマルテンサイト変態はBainの考えとは異なるメカニズムで起こっているとのことですが。

今回は、AkaiKKR(machikaneyama)このBainの対応関係をみるために、体心正方構造(bct)を計算セルとして格子体積とc/aを変化させながら全エネルギーの変化を確認します。その1である今回は、マフィンティン半径をどのようにするかについて確認します。

マフィンティン半径


AkaiKKRはマフィンティン近似を用いています。マフィンティン近似では、マフィンティン球の半径を計算パラメータとして与えなければなりません。そして、同じ結晶を計算している場合であっても、得られる全エネルギーはマフィンティン半径によって変化してしまいます。したがって体積やc/aを最適化するために全エネルギーを比較するときは、マフィンティン半径の設定が食い違わないようにする必要があります。

どういう設定にするのがベストなのかは、難しい問題らしいのですが、今回は差し当たりAkaiKKRでコバルトのc/a その1その2のときと同じ条件を考えます。
すなわち「格子体積に対するマフィンティン球体積の比が一定になる範囲で、マフィンティン半径を最大にとる」とします。

AkaiKKRでコバルトのc/a その2のときと同様にScilabを用いて、体積を固定しながらc/aを変化させたときに、マフィンティン球同士が接触する半径を計算しました。

clear;

// 体心正方(bct)の格子体積を固定
v = 100;
// bctのc/aを変化
// c/a = 1: bcc
// c/a = √2: fcc
//eta = linspace(1, sqrt(2));
eta = linspace(1, 1.5);

// 格子定数aの計算
a = (v ./ eta) .^ (1/3);

// ab面内で頂点同士が触れる時
rmt_ab = a ./ 2;
// // ac面内で頂点同士が触れる時
// rmt_ac = eta .* a ./ 2;
// 頂点と体心で触れる時
rmt_diag = sqrt(2 .* (a .^ 2) + (eta .^ 2) .* (a .^ 2)) ./ 4;

// *** グラフの描画 ***
// ab面内
plot(eta, rmt_ab, '-b');
// // ac面内
// plot(eta, rmt_ac, '-g');
// 頂点と体心
plot(eta, rmt_diag, '-r');
// グラフの装飾
xlabel("c/a");
ylabel("muffin-tin radius");


002_20150622052240f6f.png

Fig.: bct構造の格子体積をΩ=100 Bohr3とした場合のタッチング時のMT半径のc/a依存性。赤線は頂点位置にある原子と体心位置にある原子が先に接すると仮定した場合、青線はa-b軸方向の原子が先に触れると仮定した場合。これら二つの値はc/a=√2(fcc構造のとき)で一致する、c/a=1(bcc構造)のときとることのできるMT半径が最小になる。


体心立方構造(bcc)の充填率は0.68で面心立方構造(fcc)の充填率は0.74なので、fcc構造の方が密な構造であると言えます(参考: Wikipedia: 空間充填率)。マフィンティン半径もこのことを反映して、c/a=1(bcc構造に相当)のときに最小値を取ることがわかります。

関連エントリ




参考URL




付録


このエントリで使用したSciabのスクリプトを添付します。ファイル名末尾の".txt"を削除して、"_"を"."に変更すれば使えるはずです。(参考:ねがてぃぶろぐの付録)


参考文献/使用機器




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