Scilabでイジング模型 その2

計算物理学 応用編ising.cをScilabへ移植しました。

001_20141201124503785.png

Fig.1: 一次元のイジングモデル。コールドスタートから磁区が発達していく様子が再現されている。(n=100, kt=1.5, J=1, tmax=1000)


その結果、交換エネルギーJの符号によって強磁性状態や反強磁性状態が安定になることが確認できました。


一次元のイジング模型


一次元のリング状に原子(磁気双極子)が等間隔で並んでいる一次元結晶を考えます。それぞれの原子がもつ磁気双極子は、三次元空間では、さまざまな方向を向く可能性がありますが、一次元空間の場合は、方向が正と負しかないので、上向きと下向きの2種類のスピンのみを考えます。するとi番目の粒子がもつスピンは+1と-1のどちらかを取るとして si = ±1 と書くことができます。

リンク状の一次元結晶にN個の原子があるとすると、一次元結晶全体のスピンの配置は

j> = |s1, s2, ..., sN>
= {±1, ±1, ... ±1} (j = 1, 2, 3, ... 2N)

という量子状態ベクトルで表すことができます。

具体的に N=3 の場合に書き下してみます。

1> = {-1, -1, -1}
2> = {-1, -1, +1}
3> = {-1, +1, -1}
4> = {-1, +1, +1}
5> = {+1, -1, -1}
6> = {+1, -1, +1}
7> = {+1, +1, -1}
8> = {+1, +1, +1}

以上のようにN=3のときには23=8種類の状態を取りうることがわかります。
イジング模型では、隣り合う原子だけが相互作用すると考えます。相互作用のパラメータをJとすると、外部磁場がない場合、ある状態αjにおけるエネルギーは

E( \alpha_j ) = - J \sum_{i=1}^{N-1}s_i s_j


この式をすべてのαjに関して計算すればよいことになります。とは言うものの、原子の数がN=3ならば状態の種類が8種類しか存在しないので、すべてを計算することも可能でしょうが、N=100などになってしまうと2100≒1.26*1030となり、とてもすべてを計算するのは現実的ではありません。このため、数値シミュレーションでは乱数を使って計算を行います。

メトロポリスのアルゴリズム


詳しいアルゴリズムの説明は計算物理学 応用編の通りですが、その中のising.cまたはising.fをScilabに移植します。

clear;

// *** 定数の設定 ***
n = 100; // 粒子の数
kt = 1.5; // 温度
J = 1; // 交換エネルギー (1: 強磁性, -1:反強磁性)
rand("uniform"); // 乱数は一様乱数とする
tmax = 1000; // 時間の最大ステップ

// *** 初期化 ***
// 各粒子におけるスピン
spin = ones(1,n); // コールドスタート
//spin = 1 - 2 * round(rand(1,n)); // 乱数スタート

// *** エネルギーの計算関数 ***
function e = energy(spin)
e = - J * sum(spin .* [spin(2:n), spin(1)]);
endfunction

SPIN = [];

// *** 時間発展 ***
for t = 1:tmax do
oldenergy = energy(spin);
element = ceil(n * rand()); // 粒子を一つ選ぶ
spin(element) = -1 * spin(element); // スピンを反転
newenergy = energy(spin);
spin(element) = (- 2 * ((newenergy > oldenergy) & (exp((- newenergy + oldenergy) / kt) <= rand())) + 1) * spin(element);
// 時刻tにおけるスピンを保存
SPIN = [SPIN;spin];
end

// *** スピンの時間変化をプロット ***
Matplot((SPIN' + 1) .* 10);
zoom_rect([0,0,tmax,n]);
xlabel("Time");
ylabel("Position");


反強磁性状態の計算


交換エネルギーを負にとると、反強磁性状態になります。

002_2014120112573532a.png
Fig.2: 反強磁性状態


関連エントリ




参考URL




付録


このエントリで使用したScilabのシミュレーション用ファイルを添付します。ファイル名末尾の".txt"を削除して、"_"を"."に変更すれば使えるはずです。(参考:ねがてぃぶろぐの付録)


参考文献/使用機器




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