AkaiKKRで銅と銅亜鉛合金のフェルミ面

AkaiKKR(Machikaneyama)を用いると状態密度やバンド構造が簡単に描画できます。いくつかの第一原理計算パッケージには、これらに加えてフェルミ面の描画機能があります。しかしながら、AkaiKKRにはおそらくその機能はありません。そこで力任せにBlochスペクトル関数を計算してCuとCu70Zn30のフェルミ面の断面図を作成しました。

その結果は金属電子論〈上〉で紹介されている実験結果をよく再現しました。


金属のフェルミ面


金属の電子構造の個性を表現するために「状態密度(DOS)」や「エネルギー分散(バンド構造)」などがよく図としてプロットされます。「エネルギー分散」は電子の持っている波数とエネルギーの関係をプロットしたもので「状態密度」はエネルギーとそのエネルギーを持つ電子の個数をプロットしたものです。これらは共に、電子の状態をエネルギーの関数として表現しています。

しかしながら、実際の金属の物性は、その多くがフェルミエネルギーの電子の性質だけで決まります。そこで、フェルミ準位だけに限って波数ベクトルを表示した「フェルミ面」も金属の電子状態を表現するために利用されます。

純金属のフェルミ面は、非常によく研究されており、その一覧はウエブ上のデータベースでも見ることができます。(参考: Fermi Surface ExplorerThe Fermi Surface Database)

Cu.jpg
Fig.1: 銅のフェルミ面


Fig.1に示したのはThe Fermi Surface Databaseから引用した銅のフェルミ面です。銅のフェルミ面は、ほとんど自由電子的な球に近い形状をしています。しかしながらブルリアンゾーンのL点の周囲でフェルミ面がブリルアンゾーンに接触しています。

AkaiKKRでフェルミ面の描画


AkaiKKR(Machikaneyama)には標準ではフェルミ面を描画する機能は、ありません(多分)。そもそも不規則合金では、純金属と異なり、フェルミ面という概念自体が必ずしも妥当なものではなくなります。これは電子のエネルギー分散(バンド構造)を考えた際に不規則合金では、各バンドがにじんでしまったことと同じです。(参考: 密度汎関数法の発展 -マテリアルデザインへの応用)

バンド分散に関しては、Blochスペクトル関数を各k点に対して計算したものをプロットすることで表現できました。
同様にして、力まかせに片っ端からBlochスペクトル関数を計算し、フェルミエネルギー(近く)のものだけプロットするという方法でフェルミ面の断面の描画を行う事を考えます。

今回は純金属であるCuと、不規則合金でありながら比較的きれいにフェルミ面の残るCu70Zn30合金のフェルミ面の断面を描いてみることにします。これらの金属のフェルミ面の断面に関する実験的結果は金属電子論〈上〉に紹介されています。

シェルスクリプト


詳しい説明は、別のエントリにで行いたいと思いますが、おおよそ次のような事を行うシェルスクリプトを作成します。

  1. 波数空間上のベクトルPA, PBを2辺とする平行四辺形を考える
  2. 2つのベクトルをそれぞれn分割、m分割した空間メッシュを作成する
  3. spc計算用の入力ファイルのテンプレートから上記のk点を加えた入力ファイルを作成しspecxを起動
  4. 計算結果のspcファイル群からGNUPLOTに適したdatファイルの作成


結果


CuのXΓX断面とKΓX断面を計算したものがFig.2-3です。

XGXCu.png
Fig.2: Cuのフェルミ面のXΓX断面

XGKCu.png
Fig.3: Cuのフェルミ面のKΓX断面


XΓX断面におけるフェルミ面は、自由電子的な真円に近い形状をしています。黒のラインで示したのが第一ブリルアンゾーンの境界で、図中に書き込んではありませんが、斜めになっている角がW点、斜面の真ん中がL点です。

KΓX断面におけるフェルミ面は、前述したとおり円形からひずみ、第一ブルリアンゾーンの境界に触れています。触れている中心がL点で斜めの部分の上の角がU点です。

同様にCu70Zn30の断面図をプロットしたのがFig.4-5です。

XGXCuZn.png
Fig.4: Cu70Zn30のフェルミ面のXΓX断面

XGKCuZn.png
Fig.5: Cu70Zn30のフェルミ面のKΓX断面


金属電子論〈上〉で解説されている通り、Znの合金化によって1原子あたりの平均価電子数e/aが増加します。この結果として、フェルミ面が大きくなっていることがわかります。このことはXΓX断面では円の半径が大きくなっていること、KΓX断面では第一ブリルアンゾーンに触れている領域が広がっていることとして表れています。

関連エントリ






参考URL




参考文献/使用機器




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