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AkaiKKRでコバルトのc/a その1

AkaiKKRでコバルトの格子定数ではhcp構造を持つコバルトのc/aを最適化する際に、マフィンティン半径(MT半径)を常に最大値として計算しましたが、AkaiKKR掲示板のOn lattice constant calculationスレッドの書き込みによるとその手法はよくないとのことです。
これを改善するには(1)格子体積を固定する(2)同じ格子体積の範囲内でMT半径が同じになるようにしてc/aを変化させる、という2つのステップを行う必要があります。
今回は前半部分として、格子体積Ωとc/a≡ηから格子定数aを計算するシェルスクリプトを作成します。


コバルトの格子定数の反省


AkaiKKRでコバルトの格子定数では、格子定数aとc/aを変化させながらhcp構造を持つコバルトの格子定数をエネルギーが最小になるという条件から探しました。
しかしながら、この時の手法には2点問題があります。

1つ目は、bzqltyが低いこと。すなわちk点の数が少ないであろうことです。強磁性金属の格子定数を最適化するためにはbzqltyを比較的大きく採らなければなりません(参考:AkaiKKRの計算精度と計算時間 その2AkaiKKRでFeCoの磁気モーメントと格子定数)。

2つ目は、c/aを決定する際にマフィンティン半径(MT半径)を常にタッチングで計算していた点です。AkaiKKR掲示板のOn lattice constant calculationスレッドの書き込み(とその件について後程赤い先生に伺った内容)によるとc/aを決定するに際しては、まず格子体積を固定して、次にc/aを変化させる。このときMT半径が一定になるようにする。という手順を取るのが良いとのこと。
一方で、体心立方構造(bcc)や面心立方構造(fcc)のような立方晶(cubic)の場合は、格子定数aを変化させたとしても、つねにタッチングで計算すればよいとのことです。
別の言い方をすれば、全エネルギーを比較して構造を最適化するときには、格子体積とマフィンティン球の体積の比が常に一定になるようにすればよいということです。

しかしながら、これをそのまま実行しようとすると2つの問題に出くわします。

1つ目は、AkaiKKRの入力は「格子体積とc/a」ではなく「格子定数aとc/a」である点です。したがって、あらかじめ格子体積とc/aの組に対応する格子定数aを計算しておかなくてはなりません。

もう1つの問題は、AkaiKKRのMT半径の入力が絶対値(Bohrを単位とした値)ではなく格子定数aを基準にした値であるということです。

これら二つの問題に対処するためのシェルスクリプトを今回と次回の2回に分けて作成します。
今回は、格子体積のリスト(OMEGA_LIST)とc/a≡ηのリストのリスト(ETA_LIST)を与えると、それに対応した格子定数aを使ったAkaiKKRの入力ファイルを作成し、第一原理計算を実行するスクリプトを書きます。

hcpの格子体積Ωと格子定数a


hcpの単位格子はFig.1のような形をしています。
ここからは格子体積Ωとc/a≡ηから格子定数aを求める計算をします。

hcpCo.png
Fig.1: hcp構造コバルトの結晶構造


底面積Sは各辺の長さが格子定数aの正三角形2個分なので

S=\frac{\sqrt{3}}{2} a^2

体積Ωはこれに高さである格子定数cを掛けて

\Omega = \frac{\sqrt{3}}{2} a^2 c

η≡c/a なので c=ηa となり結局

\Omega = \frac{\sqrt{3}}{2}\eta a^3

最終的に格子定数aは

a = \left(\frac{2\Omega}{\sqrt{3}\eta} \right)^{\frac{1}{3}}

となります。

シェルスクリプトの実装


シェルスクリプトで根号や累乗を含む複雑な計算を行うにはbcというコマンドを利用します。
例えば、以下のような感じです。(参考: 【 複雑な計算を行う「bc」 】 ※ただし、私の環境では、以下に示すように -l のコマンドオプションをつけないと使えない関数がありました。)

echo "1+1" | bc -l


使い方は上記のように計算式を echo で出力し、パイプで bc に渡します。

ここでもう一つ注意点があります。
bcの標準の累乗計算では、指数部分に整数しか指定することができません。今回は立方根、すなわち1/3乗を計算しなければならないので、指数と対数を用いた以下のテクニックを利用します。

xのy乗を計算する場合

z = x y

両辺の対数を取ると

log z = log xy = y log x

両辺の指数を取ると

z = exp( y log x )

となります。

bcを使った表記とするなら

e(y*l(x))


となります。

現状でのシェルスクリプトを以下に示します。
次回はこれをさらに拡張してMT半径を固定できるようにします。

#!/bin/csh -f

set OMEGA_LIST=( 140 142 144 146 148 150 152 154 156 158 160 )
set ETA_LIST=( 1.60 1.61 1.62 1.63 1.64 1.65 1.66 1.67 1.68 1.69 1.70 )

foreach OMEGA ( ${OMEGA_LIST} )
foreach ETA ( ${ETA_LIST} )
echo " OMEGA,ETA= "${OMEGA}" "${ETA}

set A=`echo "e((1/3)*l(2*${OMEGA}/(sqrt(3)*${ETA})))" | bc -l`
sed 's/'ABOHR'/'${A}'/g' in/Co0.in | sed 's/'ETA'/'${ETA}'/g' > in/Co_${A}_${ETA}.in
specx < in/Co_${A}_${ETA}.in > out/Co_${A}_${ETA}.out

tail -n 1 data/co_${A}_${ETA}.info
end
end


関連エントリ




参考URL




参考文献/使用機器




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