AkaiKKRのマフィンティン半径のメモ

AkaiKKR(machikaneyama)ではマフィンティンポテンシャル近似を用いています。そのため、入力ファイルの中でマフィンティン半径を指定しなければなりません。

MTradius.png
Fig.1: マフィンティンポテンシャルの概念図
(KKR-Green関数法によるバンド計算より)


今回は、このマフィンティン半径に関して、幾つかの注意点をまとめます。
なお、実際にマフィンティン半径をいくつにすればよいのかは、私には難しい問題なので、今回は触れません。


マフィンティン半径に関する基本事項


Wikipediaのマフィンティンポテンシャルの項目には、マフィンティン半径に関して以下の様にあります。(強調は筆者による)

マフィンティンポテンシャルにおいて、原子核部分を記述する、球対称なポテンシャル部分のことをマフィンティン球(マフィンティンきゅう、Muffin-tin sphere)といい、この部分の半径をマフィンティン半径(マフィンティンはんけい、Muffin-tin radius)という。通常、周りの他のマフィンティン球部分と重ならない範囲で、なるべく大きな値をとるようにする(接するのが最大)。マフィンティン球同士が重なることはない。

AkaiKKRにおけるマフィンティン半径の理想値は、私には断言できないので、深入りはしませんが、上記の通り出来るだけ大きくとる場合が多いようです。

一応、AkaiKKR BBSのなかで関連しそうな書き込みを引用します。

On lattice constant calculationより

Machikaneyamaを用いて格子定数を計算したいのですが、
教科書やMachikaneyamaのマニュアルには、格子定数以外の条件をそろえることと、MT半径を十分に小さくとることに注意するように記載されています。

MT半径は格子定数を単位として入力するようになっていると思いますので、MT半径の実際の値が一定になるように、入力値を変化させるべきということでしょうか?
それとも、十分小さければ特に一定値にこだわる必要はないということでしょうか?

通常の場合あまり気にする必要はなく,例えば,0 を指定しておけば
タッチング半径で計算をいたします.
一方,c/a比を変えて最適化したい場合などは同じ体積になるようにしても,マフィンテイン半径の大きさがc/a比によって変わってしまいます.
このような場合はc/a比によらず,マフィンテイン半径が一定になるようにいたします.マフィンテイン半径は格子定数aを単位にいたしますので,c/a比を変えるときには間違えないように換算して下さい.


また、Why electrons are in vacancy? (in Japanese)より

ホントのところは,MT半径に計算結果が,あまり依存しないのが望ましいわけです.
もちろん,できるだけ最適なものを選ぶべきです.で,一般的には,「MT半径内の電子数ができるだけ電荷的に中性になるように」選ぶのがよいとされています.要はMT potentialモデル(interstitial regionでフラット)ができるだけ上手く成り立つような半径比の取り方が理想的なわけです.
まあ,実際これで結構うまくいくそうです.
が,いまのところAkaiKKRの現バージョンの自動設定では必ずしもそのようにはなっていないです.
そのうち,組み込むことになると思います.まあ,いまの自動設定値でもそれほど悪くないんだと思います.

他の例では,たとえば,MnOを計算するのにOのsphereの大きさはMnよりかなり小さく取ったりします.

AkaiKKRでは,Muffin-tin potentialを仮定しています.
(あるいは,asaのオプション(interstitialがない)も選べますけど).
Interstitialではフラットなポテンシャルです.
で,empty sphereは,
(1)そういう欠損のある問題をCPAで解く場合,
あるいは,
(2)異方性が大きくてMTポテンシャルをなんとか(まあ完全でないまでも)補正して
やりたいとき格子間隙にempty sphereを入れる.そうするとその内部のポテンシャルは
 Interstitialの値からずれることができる---ポテンシャルの記述の自由度が高くなるので
 よりよい解が期待できる.
で,使われます.


最後の異方性が大きくてempty shereを入れる話はAkaiKKRでダイヤモンド型構造半導体などです。

マフィンティン半径指定の実際


KKR-Green関数法によるバンド計算には以下の様にあります。

rmt 与えたマフィンティン半径では球どうしが重なってしまう場合、マフィンティン半径は与えた半径比で球が接するように設定し直される。0 を与えた時または省略した時は半径比として原子半径比がとられる。


AkaiKKRのマフィンティン半径の指定は、格子定数aを単位として行います。
また、マフィンティン球が互いに重なってしまうような、大きなマフィンティン半径をしていすると、自動的にマフィンティン球が重ならないような最大のマフィンティン半径に設定しなおされます。この際、各原子における原子番号は考慮されず、全ての原子で同じ値が設定されるようです。

したがって、例えば rmt=1 つまりマフィンティン半径に格子定数aと同じ値の様に、明らかにマフィンティン球が重なってしまうような大きな値を指定しておくということが良く行われます。

マフィンティン半径として明らかに大きな値、かつ、原子によって別々の値を設定すると、それぞれの比率を守りながらマフィンティン球が接するように設定されると思います。

またrmt=0 と設定してもやはりマフィンティン球が接する様なマフィンティン半径が自動設定されますが、それぞれのマフィンティン半径の比は、原子半径比が採られます。
したがって rmt=0 を選ぶ場合は、全ての原子おいて rmt=0 を設定しないとおかしなことになります。(確かエラーが出たはず。)
更に、ある原子が複数の組成を持っている場合(CPAをしている場合)は濃度比によって原子半径比にも重みがつけられているようです。

まとめると、マフィンティン半径の設定には以下の様な幾つかのパターンが考えられます。

  1. 全ての原子で rmt=1 を選び、全ての原子で同じで、かつ、互いに接するようにするマフィンティン半径とする
  2. 全ての原子で rmt=0 を選び、それぞれの原子の組成ごとに原子半径比になり、かつ、互いに接するようにするマフィンティン半径とする
  3. 全ての原子で rmt>1 を選び、それぞれの原子ごとのマフィンティン半径比を指定し、かつ、互いに接するようなマフィンティン半径とする
  4. 全て自分で設定する: 全ての原子でマフィンティン半径が接するか、それよりも小さい値を選ぶ


特に、格子定数変化させつつ、マフィンティン半径を固定したいなどは、全て自分で設定する必要があります。

関連エントリ




参考URL




参考文献/使用機器





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