AkaiKKRでFeCrの磁気モーメント

AkaiKKRでFeCoの磁気モーメントと格子定数に引き続きAkaiKKR(Machikaneyama)を用いてスレーターポーリング曲線に乗る強磁性遷移金属合金のひとつである不規則FeCr系合金の磁気モーメントを計算しました。

FeCr.gif

Fig.1: bcc-FexCr100-x合金の状態密度のクロム濃度依存性。アニメーションは純鉄から順に10%刻みで純クロムまで。


得られた磁気モーメントは、スレーターポーリング曲線が示すとおり、平均価電子数に対して直線的に変化しました。この結果は、リジッドバンドモデルを用いて理解することが出来ます。ただし、コヒーレントポテンシャル近似を用いて得られた状態密度曲線は、不規則性の効果により、かなり鋭さを減じています。


スレーターポーリング曲線


AkaiKKRでFeCoの磁気モーメントと格子定数ではAkaiKKR(Machikaneyama)を用いてスレーターポーリング(Slater-Pauling)曲線の頂点に位置するFeCo系合金の計算を行いました。
今回は、スレーターポーリング曲線の左端で強磁性が消失する部分に相当するFeCr合金の磁気モーメントを計算します。

以下に示すのは、磁石・磁気の用語辞典にて紹介されているスレーターポーリング曲線です。

001_20140604225835b78.jpg

Fig.2: スレーターポーリング(Slater-Pauling)曲線


計算手法


AkaiKKRでFeCoの磁気モーメントと格子定数と同様に格子定数と化学組成を変化させ、それぞれの化学組成に対してMurnaghanの状態方程式をフィッティングし、平衡格子定数を求めた後、スプライン補間から平衡格子定数のときの磁気モーメントを求めました。

結晶構造は全て体心立方構造(bcc)とし、格子定数の範囲は a = 5.23 bohr から a = 5.35 bohr まで 0.01 bohr 刻みとしました。以下は、FeCr系入力ファイルの一例です。

 go    data/fecr_5.29
bcc 5.29 , , , , , ,
0.001 1.2 sra mjw mag 2nd
update 16 200 0.02
1
FeCr 2 0 0 2 26 30
24 70
1
0.00000 0.00000 0.00000 FeCr


結果と議論


得られた磁気モーメントは、スレーターポーリング曲線を再現し、純Crで強磁性が消失しました。

001_20140605072505cfc.png

Fig.3: 磁気モーメントの鉄濃度依存性


次に状態密度を見てみます。
まずはコヒーレントポテンシャル近似(CPA)が必要ない端成分である純鉄と純クロムの状態密度を以下に示します。

Fe100Cr0.png
Fig.4: 純鉄の状態密度

Fe0Cr100.png
Fig.5: 純クロムの状態密度


クロムは非磁性なので、多数スピンバンドと少数スピンバンドの状態密度が同じ形状をしています。
しかしながら、各スピンバンドごとの状態密度曲線の形状は、鉄とクロムで互いによく似ています。このことからリジッドバンドモデルが成り立つのではないかと言う予測が立ちます。

リジッドバンド的な考え方では、FeCr系の磁気モーメントの変化は、鉄から価電子数を減らしていったとき、多数スピンバンドの状態密度がフェルミ準位に対して、相対的に高エネルギー側へシフトし、少数スピンバンドではほとんど変わらないと解釈されます。

このことに関して、コヒーレントポテンシャル近似による合金化の効果も含めて状態密度を順に示します。

Fe100Cr0.png
Fig.6: Fe100Cr0の状態密度

Fe90Cr10.png
Fig.7: Fe90Cr10の状態密度

Fe80Cr20.png
Fig.8: Fe80Cr20の状態密度

Fe70Cr30.png
Fig.9: Fe70Cr30の状態密度

Fe60Cr40.png
Fig.10: Fe60Cr40の状態密度

Fe50Cr50.png
Fig.11: Fe50Cr50の状態密度

Fe40Cr60.png
Fig.12: Fe40Cr60の状態密度

Fe30Cr70.png
Fig.13: Fe30Cr70の状態密度

Fe20Cr80.png
Fig.14: Fe20Cr80の状態密度

Fe10Cr90.png
Fig.15: Fe10Cr90の状態密度

Fe0Cr100.png
Fig.16: Fe0Cr100の状態密度


CPA計算の結果から、多数スピンバンドの状態密度は、不規則性の効果によって形状の鋭さがかなり失われています。これに対して、少数スピンバンドはあまり変化しているように見えません。
FeCr系の状態密度は常に多数スピンバンドのフェルミ準位がdバンドの中にあり、強磁性となるときは弱い強磁性です。

関連エントリ




参考URL




参考文献/使用機器




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