AkaiKKRで銅の格子定数

第一原理計算パッケージAkaiKKR(Machikaneyama)で銅の格子定数を計算しました。計算精度は入力パラメータbzqltyに依存しますが、bzqlty=3程度でも文献値に充分近い格子定数を得ることが出来ました。

この値はAkaiKKRの計算精度と計算時間 その1で求めた全エネルギーの変化が落ち着くのに必要な値であるbzqlty=8よりもずいぶんと低い値です。

一方でbzqlty=1での計算は、平衡となる格子定数が得られませんでした。このためbzqlty=1はチェック計算のみに使うのがよさそうです。


非磁性金属のbzqlty


AkaiKKRの計算精度と計算時間 その1では、AkaiKKR(Machikaneyama)で銅の第一原理計算をする際の全エネルギーとbzqltyの関係を調べました。その結果、全エネルギーの変化が落ち着くためにはbzqlty=8程度が必要であることがわかりました。

001_20140428034407bbe.png
Fig.1: 銅の全エネルギーのbzqlty依存性


それでは、第一原理計算から現実的な物性値を推定するためには、どの程度のbzqltyが必要なのでしょうか?

今回はbzqlty=1,3,9,16に対して銅のセルフコンシステント計算を行い、結果をMurnaghanの状態方程式にフィッティングすることによって銅の平衡格子定数や体積弾性率を計算しました。

セルフコンシステント計算


AkaiKKRでコバルトの格子定数では、格子定数aとc/aの2つのパラメータを可変するシェルスクリプトを使いました。今回は似たように格子定数aとbzqltyの2つのパラメータを可変シェルスクリプトを作成しました。

入力ファイルのテンプレートとシェルスクリプトは、下記の通りです。

 go  data/cu_nbzq
fcc abohr 1.0 1.0, , , ,
0.001 1.0 sra gga91 nmag 2nd
update nbzq 200 0.02
1
Cu 1 0 0 2 29 100
1
0.00000 0.00000 0.00000 Cu


#!/bin/csh -f

set BZQLTY_LIST=( 1 3 9 16 )
set ABOHR_LIST=( 6.3 6.4 6.5 6.6 6.7 6.8 6.9 7.0 7.1 7.2 )

foreach BZQLTY ( ${BZQLTY_LIST} )
echo " bzqlty = "${BZQLTY}
foreach ABOHR ( ${ABOHR_LIST} )
sed 's/'abohr'/'${ABOHR}'/g' in/cu00.in | sed 's/'nbzq'/'${BZQLTY}'/g' > in/cu.in
specx < in/cu.in >> out/cu_${BZQLTY}.out
tail -n 1 data/cu_${BZQLTY}.info
end
end


状態方程式


セルフコンシステント計算から平衡格子定数を求めるために、Murnaghanの状態方程式に全エネルギーをフィッティングします。

E_{tot}(V) = \frac{BV}{B^{'}(B^{'}-1)}\left[B^{'}\left(1-\frac{V_0}{V}\right)+\left(\frac{V_0}{V}\right)^{B^{'}}-1\right]+E_0

セルフコンシステント計算の結果をまとめたものがCuVolume.txtです。これをScilabのスクリプトであるfitMurnaghanEoS_sce.txtでフィッティングします。

結果


bzqlty=3,9,16のときの全エネルギーと状態方程式へのフィッティング結果をFig.2に示します。bzqlty=1のときの結果は全くフィッティングできなかったのでプロットしていません。

000_20140505000502358.png
Fig.2: 全エネルギーの状態方程式へのフィッティング


Fig.1から予測できたことですが、bzqlty=3の場合とbzqlty=9,16の場合の間には、全エネルギーの絶対値に0.01Ryのオーダーの差があります。しかしながら、同じbzqltyで計算する限り、全エネルギーの格子定数を変化させたときの相対的な変化は同程度です。格子定数aを計算してみると、bzqlty=3でも充分文献値に近い値が得られることが分かります。

bzqlty a (Å)B (GPa)B'
33.681274.75
93.671304.84
163.671344.73
文献値3.61138
table.1: AkaiKKRによる計算結果と文献値の比較。文献値の出典は格子定数がCrystal Base、体積弾性率がFintechのデータベース。


結論


AkaiKKRの計算精度と計算時間 その1では全エネルギーの変化が安定するまで計算することを考えると、bzqltyの大きさは8程度まで大きくしなければならないように思われました。しかしながら実際に平衡格子定数を求めてみると、非磁性金属であるfcc構造の銅に関してはbzqlty=3程度でもbzqlty=9や16のときの結果と大差ない値が得られる事がわかりました。

一方で、bzqlty=1のときは全くフィッティング出来ないような結果が出てきました。このことから、bzqlty=1の計算は入力ファイルやspecx.fの設定が間違っていないかのチェックを行う程度の利用にとどめておいたほうがよさそうです。

Appendix: 単位の換算


原子単位系において、長さはボーア半径で表されます。

1 bohr = 0.5291772 × 10-10 m

また、エネルギーは、リュードベリで表されます。

1 Ry = 2.179872 × 10-18 J

圧力(と同じ次元を持つ体積弾性率)を長さとエネルギーで表すことを考えます。

Pa = N / m2 = J / m3

したがって、リュードベリ原子単位系での圧力は

1 au = 2.179872 × 10-18 / (0.5291772 × 10-10)3
= 1.471 × 1013 Pa
= 1.471 × 104 GPa

体積弾性率は100GPaのオーダーなので、Bの初期値は0.01 au程度でよさそうです。なお、B'の初期値は4程度です。

関連エントリ




参考URL




付録


このエントリで使用したファイルを添付します。ファイル名末尾の".txt"を削除して、"_"を"."に変更すれば使えるはずです。(参考:ねがてぃぶろぐの付録)


参考文献/使用機器




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