AkaiKKRの計算精度と計算時間 その2

AkaiKKRの計算精度と計算時間 その1では、銅とシリコンの全エネルギーがbzqltyの値によってどの程度変化するかを調べました。
今回は、結晶構造が異なるニッケル(面心立方構造,fcc)、鉄(体心立方構造,bcc)、コバルト(六方最密重点構造,hcp)の全エネルギーとbzqltyの関係を調べるとともに、磁気モーメントの大きさもプロットしました。

その結果、全エネルギーの変化は、予想に反して結晶構造の違いに鈍感であることが分かりました。また、磁気モーメントは実験値を再現することが確認できました。


遷移金属の計算


AkaiKKRの計算精度と計算時間 その1では、fcc格子をもつ銅とシリコンに対して、AkaiKKR(Machikaneyama)の入力パラメータのひとつであるbzqltyを変化させたときに計算結果がどのように変化するかを調べました。

今回は、強磁性体であるニッケル(fcc)、鉄(bcc)、コバルト(hcp)に関して同様の計算を行い、全エネルギーと磁気モーメントがどのように変化するかを調べます。

計算手法


基本的には前回と同様に入力ファイルのbzqltyをシェルスクリプトで変化させながらセルフコンシステント計算を行っていきます。
下記は、ニッケルのbzqltyを変化させるシェルスクリプトです。

#!/bin/csh -f
set path=($path ~/kkr/cpa2002v009c )

set BZQLTY_LIST=( 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 )

foreach BZQLTY ( ${BZQLTY_LIST} )
sed 's/'nbzq'/'${BZQLTY}'/g' in/Ni0.in > in/Ni.in
specx < in/Ni.in >> out/Ni.out
tail -n 1 data/ni.info
end


各元素の入力ファイルのテンプレートはAkaiKKRでニッケル・鉄・コバルトをベースにしています。

 go    data/ni
fcc 6.67 , , , , , ,
0.001 1.2 nrl mjw mag init
update nbzq 100 0.02
1
Ni 1 0 0 2 28 100
1
0 0 0 Ni


(前回はシリコンの全エネルギーも出力の生の値を書いてしまいましたが)全エネルギーは、原子1個あたりの値に直してあります。単純にコバルトの全エネルギーのアウトプットを2で割っただけですが。
プロットしてあるのは、bzqltyを1小さくしたときの全エネルギーとの差の絶対値です。およそ1mRy≒100Kで、AkaiKKRの出力の最小桁は1×10-7Ryです。

磁気モーメントの値もコバルトは2で割ってあります。負の値が出るときは絶対値を取ってあります。

ニッケルの計算結果


最初にfcc構造のニッケルの結果を示します。
全エネルギーに関しては、前回計算した銅の値も比較のために同時にプロットしてあります。

NiE2.png
Fig.1: ニッケルの全エネルギーの変化


銅と比較した場合、ほとんど全く同じ挙動を示していることがわかります。

NiM.png
Fig.2: ニッケルの磁気モーメントの変化


磁気モーメントFig.2の様になりました。
磁性入門によるとニッケルの磁気モーメントは0.604μBと言うことなので、bzqltyを上げていったときに収束しそうな値は多少の過小評価ではありますが、変動の範囲内に入っています。

鉄の計算結果


次にbcc構造の鉄の計算結果を示します。

FeE.png
Fig.3: 鉄の全エネルギーの変化


FeM.png
Fig.4: 鉄の磁気モーメントの変化


磁気モーメントに関しては磁性入門の値が2.218μBなのでわずかな過大評価です。

コバルトの計算結果


以下にhcp構造のコバルトの計算結果を示します。
コバルトの計算結果は、原子1つあたりの値にするため2で割ってあります。

CoE.png
Fig.5: コバルトの1原子あたりの全エネルギーの変化


CoM_20140429235150589.png
Fig.6: コバルトの1原子あたりの磁気モーメントの変化


磁気モーメントに関しては磁性入門の値が1.715μBなのでわずかな過小評価です。

結論


ニッケル・鉄・コバルトの全エネルギーのグラフをひとつにまとめたものが以下に示すFig.5です。

NiFeCo.png
Fig.7: ニッケル・鉄・コバルトの1原子あたりの全エネルギーの変化


前回紹介したInstalling and Running AKAI KKR(PDF)の表を再掲します。

fccbcchcpscbctstbcorhbfct
ttest run331221232
llow quality562442454
mmedium91147858108
hhigh121559107101210
uultra high1620713159151715
table.1: bzqltyの値と対応する文字(Installing and Running AKAI KKR(PDF))


Installing and Running AKAI KKR(PDF)の表では、結晶構造によってクオリティを表す文字が変えてありますが、Fig.7をみると、むしろbzqltyの値と全エネルギーの変化に関しては結晶構造の違いによる差は見られないように思えます。

磁性入門によると絶対零度における飽和磁気モーメントとキュリー温度は以下の様に表されます。

原子磁気モーメントキュリー温度 (K)
Ni0.604μB631
Fe2.218μB1043
Co1.715μB1422
table.1:強磁性遷移金属の磁気モーメントとキュリー温度


今回の計算結果は、多少の誤差を持つものの、実験結果をよく再現できていると思います。
なおAkaiKKRで鉄のキュリー温度で見積もった鉄のキュリー温度は1260Kでした。

関連エントリ




参考URL




参考文献/使用機器






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