Scilabでマグヌス効果

今回も微分方程式による物理現象のモデル化(PDF)を元ネタとして、例題4のプログラムをScilabに移植します。

Scilabで2次元の放物運動では、物体が2次元空間の中で空気抵抗の影響を受けながら運動する様子をScilabを用いてシミュレーションしました。
今回は、これを更に拡張して、ボールの回転の効果をモデルに取り込みます。

001_20130711225638.jpg

Fig.1: 卓球の球は重力と空気抵抗による力だけでなく、回転によってもその軌道が変化する。写真は(c) *嘟嘟嘟*



マグヌス効果


野球のには、様々な変化球を投げるピッチャーがいます。この変化球というのは、ボールにかかった回転が重要な役割を果たしています。この現象をマグヌス効果とよび野球や卓球などで重要な理論となっています。マグヌス効果の説明は、微分方程式による物理現象のモデル化(PDF)では、以下の様になされています。

ボールに回転をかけながら投げると曲がります.これは回転によって空気の流れが変化し,速度ベクトルV と直角方向に力が生ずるためです.回転ベクトル(大きさを回転数,向きを回転の軸)ω とすると,生ずる力は,図17のように回転ベクトルと速度ベクトルの外積ω×V に比例することがA.Magnus(1853) の研究で示されました.したがって,この横向きの力の発生はマグヌス効果と呼ばれます.

002_20130711230302.png

図17 マグヌス効果:ボールの回転によって生ずる横向きの力


マグヌス効果の比例定数をS0とおくと

\vec{S} = S_0 \vec{\omega} \times \vec{v} = S_0 (-\omega v_y, \omega v_y, 0)

前回と同様に、普通の空気抵抗は速度の2乗に比例するとした運動方程式は

m\frac{\mathrm{d}v_x}{\mathrm{d}t} = - S_0 \omega v_y - b v_x \sqrt{v_x^2 + v_y^2}

m\frac{\mathrm{d}v_y}{\mathrm{d}t} = S_0 \omega v_x - b v_y \sqrt{v_x^2 + v_y^2} - mg

本来ならここで、マグヌス効果による比例定数S0の値を物理的考察から見積もる、ということをやらなければならないのですが、Wikipediaのマグヌス効果循環 (流体力学)を見る限りちょっとややこしそうなので、今回はパスということにします。

S0を求めないこととするのでωとあわせて

s_w \equiv S_0 \omega

と書いてしまいます。

そのほかのパラメータであるピンポン球の質量mや速度の2乗に比例する空気抵抗の係数bは、Scilabで大きな雨粒の落下運動と同じ方法で1次元運動の終端速度から求めることが出来るはずです。

これらをまとめてScilabで計算するために dx/dt = ...の形に変形すると解くべき連立方程式は以下のようになります。

\frac{\mathrm{d}x}{\mathrm{d}t} = v_x

\frac{\mathrm{d}v_x}{\mathrm{d}t} = - \frac{s_w}{m} v_y - \frac{b}{m} v_x \sqrt{v_x^2 + v_y^2}

\frac{\mathrm{d}y}{\mathrm{d}t} = v_y

\frac{\mathrm{d}v_y}{\mathrm{d}t} = \frac{s_w}{m} v_x - \frac{b}{m} v_y \sqrt{v_x^2 + v_y^2} - g

余談ですが元PDFには、この辺りにずいぶん誤植があります。順番に行くとP22の9.2.1のy方向の運動方程式は重力の項が-gとなっていますが、これは-mgの間違いだと思います。同様にP23の9.2.2マグヌス効果のy方向の運動方程式も同様の間違いがあります。この質量mの誤植はリスト12のスクリプト中にもバグとして存在しています。解くべき運動方程式parab(x,t)のdx(2)とdx(4)の左辺第一項は両方とも質量Mで割られてなければいけないはずです。バグが発覚しなかったのはM=1でしか計算がされていないからだと思います。更に本文中に戻ると、同じ運動方程式の左辺は分子に微分記号のdが抜けている誤植も見つかります。

数値シミュレーション



シミュレーション結果とソースコードを示します。

003_20130711225637.png

Fig.2: マグヌス効果のシミュレーション結果。横軸がx方向の位置、縦軸がy方向の位置。回転ベクトルの大きさω(または比例定数S0のどちらか、または両方)が大きい場合はボールが宙返りをするような魔球のような挙動になる。


clear;

// *** 入力パラメータ ***
m = 1; // 物体の質量 (g)
b = 0.15; // 速度の2乗に比例する空気抵抗の係数 (g/s)
g = 9.8; // 重力加速度 (m/s^2)
v0 = 10; // 初期速度 (m/s)
deg = 30; // 角度

// 解くべき方程式の定義
function dx = magnus(t,x)
// dx/dt = vx
dx(1) = x(2)
// dy/dt = vy
dx(3) = x(4)
// dvx/dt = - (sw/m) * vy - (b/m) * vx * √(vx^2 + vy^2)
dx(2) = - sw * x(4) / m - b / m * x(2) * sqrt(x(2) ^ 2 + x(4) ^ 2)
// dvy/dt = (sw/m) * vx - (b/m) * vy * √(vx^2 + vy^2) - g
dx(4) = sw * x(2) / m - b / m * x(4) * sqrt(x(2) ^ 2 + x(4) ^ 2) - g
endfunction

// 度からラジアンへの変換
function ret = torad(angle)
ret = %pi * angle / 180;
endfunction

// *** 常微分方程式の計算 ***
// 時間ベクトル
T = linspace(0,5,1000); // 2(s)後まで計算
th = torad(deg); // 度からラジアンへの変換
// 常微分方程式の数値解
for k = 1:3 do
sw = 1.5 * k; // 比例定数と回転ベクトルの積をパラメータとして変化させる
vx0 = v0 * cos(th); // 水平方向(x)の初速度
vy0 = v0 * sin(th); // 垂直方向(y)の初速度
X0 = [0; vx0; 0; vy0]; // 初期条件(位置と速度)ベクトル
X = ode(X0, 0, T, magnus); // 常微分方程式ソルバ
plot2d(X(1,:),X(3,:),k);
end

// グラフの体裁
zoom_rect([0, 0, 10, 5]); // 地面まで落下したあとは表示しない
xlabel("x position (m)");
ylabel("y position (m)");


関連エントリ




参考URL




付録


このエントリで使用したScilabソースコードファイルを添付します。ファイル名末尾の".txt"を削除して、"_"を"."に変更すれば使えるはずです。(参考:ねがてぃぶろぐの付録)


参考文献/使用機器




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