Scilabで大きな雨粒の落下運動

Scilabで霧雨粒の落下運動では、雨滴の落下速度を参考に微分方程式による物理現象のモデル化(PDF)の例題2の再現をScilabで行いました。

今回は、同じPDFの問題16にあたる速度の2乗に比例する空気抵抗のある場合の計算を行います。

001_20130704123801.jpg

Fig.1: 落下する雨粒の受ける空気抵抗は、雨粒の大きさによって式の形が変わる。粒径の大きな雨粒は、速度の2乗に比例した空気抵抗を受けて落下する。写真は (c) 写真素材 素材三昧



速度の2乗に比例する抵抗


Scilabで霧雨粒の落下運動では、粒径の小さい0.01mmの霧雨粒の落下運動のシミュレーションをScilabを用いて行いました。
粒径の小さい霧雨粒は、落下速度に比例する空気抵抗が働くと考えましたが、粒径が大きくなると速度の2乗に比例する空気抵抗が働くことになります。

前回と同様にして、速度の2乗に比例する運動方程式を立てると

m \frac{\mathrm{d}v}{\mathrm{d}t} = mg - k v^2

(m: 雨粒の質量, v: 雨粒の落下速度, t: 時間, g: 重力加速度, k: 比例定数)

となります。Scilabのode関数を利用するためには dv/dt=... の形にする必要があるので両辺を質量mで割って

\frac{\mathrm{d}v}{\mathrm{d}t} = g - \frac{k}{m}v^2

とします。

この式の解析解も既に知られていて

v(t) = \sqrt{\frac{mg}{k}} \tanh \left(t \sqrt{\frac{kg}{m}}\right)

です。

比例定数kの見積もり


解析解から得られる終端速度は

v_{\infty} = \lim_{t \to \infty} v(t) = \sqrt{\frac{mg}{k}}

です。

前回はストークスの式から終端速度を求めましたが、(後述する)レイノルズ数Reの値によってこの式は形を変えます。(参考:終端速度)

(i) Re < 2のとき

v_{\infty} = \frac{2 r^2 (\rho_{\mathrm{H_2 O}- \rho_{\mathrm{air}}}) g}{9 \mu}


(ii) 2 < Re < 500のとき

v_{\infty} = 2 r \left\{\frac{4}{255} \frac{(\rho_{\mathrm{H_2 O}} - \rho_{\mathrm{air}})^2 g^2}{\rho_{\mathrm{air}}\mu} \right\}^{\frac{1}{3}}

(iii) 500 < Re < 105のとき

v_{\infty} = \left\{\frac{8r}{3 \times 0.44}\frac{(\rho_{\mathrm{H_2 O}} - \rho_{\mathrm{air}})g}{\rho_{\mathrm{air}}} \right\}^{\frac{1}{2}}

(i)のときがストークスの式です。今回は雨粒の半径が1mm程度の計算を行うために一番下の(iii)の式を利用します。雨粒の大きさとレイノルズ数の関係はAppendixを見てください。

これらの終端速度が一致するはずなので

\sqrt{\frac{mg}{k}} = \left\{\frac{8r}{3 \times 0.44}\frac{(\rho_{\mathrm{H_2 O}} - \rho_{\mathrm{air}})g}{\rho_{\mathrm{air}}} \right\}^{\frac{1}{2}}

更に

\rho_{\mathrm{H_2 O}} - \rho_{\mathrm{air}} \simeq \rho_{\mathrm{H_2 O}}
m = \rho_{\mathrm{H_2 O}} \times \frac{4}{3} \pi r^3

を用いて整理すると

k = 0.22 \pi \rho_{\mathrm{air}} r^2

となります。雨滴の落下速度では

k = 0.235 \pi \frac{\mu}{\nu} r^2

とかかれており、これはν= μ/ρを用いて(レイノルズ数)

k = 0.235 \pi \rho_{\mathrm{air}} r^2

となり(先頭の係数がちょっとちがいますが)同じ形になります。

数値シミュレーション


説明記号
水の密度ρH2O1.0 × 106 (g/m3)
空気の密度ρair1.3 × 103(g/m3)
空気の分子粘性係数μ1.8 × 10-2 (g s/m)
重力加速度g9.8 (m/s2)
table.1: 物理定数


これを踏まえたScilabソースコードを以下に示します。

clear;

// *** 入力パラメータ ***
r = 1E-3; // 雨粒の半径 (m)

// 物理定数
rho_h2o = 1.0E6; // 水の密度 (g/m^3)
rho_air = 1.3E3; // 空気の密度 (g/m^3)
mu = 1.8E-2; // 空気の分子粘性係数 (g s/m)
//nu = mu / rho_air; // 空気の動粘性係数
g = 9.8; // 重力加速度 (m/s^2)

// *** 運動方程式 ***
m = rho_h2o * 4 * %pi * r ^ 3 / 3; // 雨粒の重さ (g)
//k = 0.235 * mu * %pi * r * r / nu; // 空気抵抗の係数 (g/s)
k = 0.22 * %pi * rho_air * r ^ 2; // 空気抵抗の係数 (g/s)
v0 = 0; // 初期速度 (m/s)
// 解くべき方程式の定義
deff("vdot = df(t,v)", "vdot = g - (k / m) * v ^ 2");

// *** 常微分方程式の計算 ***
// 時間ベクトル(s)
T = linspace(0, 5, 101);
// 常微分方程式の数値解
V = ode(v0, 0, T, df);

// *** 速度の描画 ***
// 数値計算(赤丸)
plot(T, V, 'or');
// 解析解(緑破線)
plot(T, sqrt(m * g / k) * tanh(sqrt(k * g / m) .* T), '--g');

// *** グラフの体裁 ***
// 軸ラベル
xlabel("Time (s)");
ylabel("Velocity (m/s)")
// 凡例
legend(["Numerical";"Analytical"],4)


計算結果


以下にScilabによる計算結果を示します。

002_20130704124843.png

Fig.2: 大きな雨粒の落下運動。横軸が時間、縦軸が速度。赤丸で示したのが数値計算の結果で、緑破線が解析解の結果。半径1mm程度の雨粒は落下を開始してから数秒ほどで終端速度へ達し、その速度は毎秒7メートル程度である。


Appendix: レイノルズ数


終端速度の場合わけは無次元パラメータであるレイノルズ数Reによって決まります。

Re = \frac{\rho_{\mathrm{air}}vL}{\mu}

air: 空気の密度, v: 平均速度, μ: 空気の粘性係数, L: 特性長さ)

特性長さというのがどのように決めるべき値なのか難しいのですが、レイノルズ数によると流れの中の球に関し、特性長さは球の直径であり、特性速度は、球からすこし離れた場所の球の運動が流体の検査体を乱さないような場所にある流体と球との相対速度である。との事なので雨粒の直径を用い、平均速度は終端速度としました。

これをまとめると

Re = \frac{2r \rho_{\mathrm{air}}v_{\infty}}{\mu}

となります。

Scilabを用いて雨粒の半径と(i)-(iii)それぞれの式から計算した終端速度、及びレイノルズ数を計算しました。

003_20130704124843.png

Fig.3: 雨粒の半径と終端速度(上)、雨粒の半径とレイノルズ数(下)。場合わけの式により(i)が赤、(ii)が緑、(iii)が青でプロットしてある。レイノルズ数のグラフにはどの式を使うかのしきい値となるRe = 2, 500, 105が比較用として破線でプロットしてある。


clear;

// *** 物理定数 ***
rho_h2o = 1.0E6; // 水の密度 (g/m^3)
rho_air = 1.3E3; // 空気の密度 (g/m^3)
mu = 1.8E-2; // 空気の分子粘性係数 (g s/m)
g = 9.8; // 重力加速度 (m/s^2)

// *** 終端速度の関数 ***
// Re < 1
function v = v1(r)
v = 2 .* r .^ 2 * (rho_h2o - rho_air) .* g ./ 9 ./ mu
endfunction
// 2 < Re < 500
function v = v2(r)
v = 2 * r * (4 * (rho_h2o - rho_air) ^ 2 * g ^ 2 / 255 / rho_air / mu) ^ (1 / 3)
endfunction
// 500 < Re < 10E5
function v = v3(r)
v = sqrt(8 * r * (rho_h2o - rho_air) * g / (3 * 0.44 * rho_air))
endfunction

// *** 雨粒の半径 ***
R1 = logspace(-7,-3);
R2 = logspace(-6,-2);
R3 = logspace(-5,-1);
R = logspace(-7,-1);

// *** 終端速度のプロット ***
xsetech([0,0,1,0.45],[1E-7,1E-6,1E-1,1E3],"ll")
plot(R1,v1(R1),"-r");
plot(R2,v2(R2),"-g");
plot(R3,v3(R3),"-b");
xlabel("Radius (m)")
ylabel("Terminate velocity (m/s)")

// *** レイノルズ数のプロット ***
xsetech([0,0.5,1,0.45],[1E-7,1,1E-1,1E7],"ll")
plot(R,2,"--k");
plot(R,500,"--k");
plot(R,1E5,"--k");
plot(R1,2 .* R1 .* rho_air .* v1(R1) ./ mu,"-r");
plot(R2,2 .* R2 .* rho_air .* v2(R2) ./ mu,"-g");
plot(R3,2 .* R3 .* rho_air .* v3(R3) ./ mu,"-b");
xlabel("Radius (m)")
ylabel("Reynolds number"


関連エントリ




参考URL




付録


このエントリで使用したScilab用ソースコードを添付します。ファイル名末尾の".txt"を削除して、"_"を"."に変更すれば使えるはずです。(参考:ねがてぃぶろぐの付録)


参考文献/使用機器




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