Scilabで数値積分: 固体の比熱

固体の比熱の温度依存性は、物質の種類に関わらず大体似たような形のグラフになることが知られています。この関数は、計算が簡単なアインシュタインモデルと正確だが積分の計算をする必要のあるデバイモデルの2種類が知られています。Scilabを利用すると簡単に数値積分をすることが出来ます。

今回のエントリでは、銅を対象にアインシュタインモデル、デバイモデルの両方から比熱を計算します。

001_20130522024102.png
Fig.1: 銅の比熱の温度依存性。青破線がアインシュタインモデル、赤実線がデバイモデルによる計算。



固体の比熱


デュロン=プティの法則によると充分高温の固体の単位モルあたりの比熱は、物質の種類によらずほとんど一定で3R(R = 8.314 J/K/mol :気体定数)です。また絶対零度での比熱はゼロになることも知られています。更に、中間的な温度での温度依存性も適切な温度で規格化をすれば同じ関数の形で表すことが出来ることが知られています。

この関数には、アインシュタインモデルとデバイモデルの2種類が知られています。これら二つのモデルは、どちらも高温でデュロン=プティの法則を再現し、絶対零度でゼロになりますが、中間温度での計算結果が微妙に異なります。デバイモデルのほうがより実験値に近い結果を示すことが知られていますが、数式中に積分を含むため計算が多少困難です。

今回はScilabで数値積分をするサンプルとして、デバイモデルから銅の比熱の温度依存性を計算します。

物質の個性を表す「適切な規格化温度」は、デバイモデルではデバイ温度(ΘD)、アインシュタインモデルではアインシュタイン温度(ΘE)と呼ばれます。銅のデバイ温度は343.5Kで、デバイ温度とアインシュタイン温度は、以下の式で換算できます。(参考:デバイ模型)

\Theta_E = \Theta_D \sqrt[3]{\frac{\pi}{6}}

この関係を使うとアインシュタインモデルとデバイモデルを用いてそれぞれ計算した比熱の温度依存性を比較することが出来ます。

アインシュタインモデルの計算


まずは、積分の必要の無いアインシュタインモデルの計算プログラムを書きます。以下の式に従って、500Kまでの銅の比熱の温度依存性を計算しました。

C_E (T) = 3 R \left(\frac{\Theta_E}{T}\right)^2 \frac{e^{\Theta_E / T}}{(e^{\Theta_E / T}-1)^2}

//Debye temperature (K)
dt = 343.5;
// Einstein temperature (K)
et = dt * (%pi / 6) ^ (1 / 3);
// gas constant (J/K/mol)
r = 8.314

// Temperature
T = [1:1:500];

// Einstein model
Ce = 3 * r * ((et ./ T) .^ 2) .* exp(et ./ T) ./ ((exp(et ./ T) - 1) .^ 2);

plot(T,Ce,'--b');
xlabel("Temperature (K)");
ylabel("Specific heat (J/K/mol)");


デバイモデルの計算


次に、数値積分を用いたデバイモデルの計算プログラムです。アインシュタインモデルのときと同様に500Kまでの比熱の計算をしました。

C_D (T) = 9 R \left(\frac{T}{\Theta_D}\right)^3 \int_0^{\Theta_D / T}\frac{x^4 e^x}{(e^x -1)^2}{\rm d}x

Scilabでの数値積分にはintegrateを利用します。(参考:求積法による積分)

//Debye temperature (K)
dt = 343.5;
// Einstein temperature (K)
et = dt * (%pi / 6) ^ (1 / 3);
// gas constant (J/K/mol)
r = 8.314

// Temperature
T = [1:1:500];

// Debye model
Cd = 9 * r * ((T ./ dt) .^ 3) .* integrate('(x .^ 4) .* exp(x) ./ ((exp(x) - 1) .^ 2)','x',0,dt ./ T);
plot(T,Cd,'-r');
xlabel("Temperature (K)");
ylabel("Specific heat (J/K/mol)");


まとめ


最後に以上の計算をまとめてひとつのグラフ上にプロットします。ついでにグラフの凡例も付けました。(参考:グラフの凡例を描画する)

// Debye temperature (K)
dt = 343.5;
// Einstein temperature (K)
et = dt * (%pi / 6) ^ (1 / 3);
// gas constant (J/K/mol)
r = 8.314

// Temperature
T = [1:1:500];

// Einstein model
Ce = 3 * r * ((et ./ T) .^ 2) .* exp(et ./ T) ./ ((exp(et ./ T) - 1) .^ 2);
// Debye model
Cd = 9 * r * ((T ./ dt) .^ 3) .* integrate('(x .^ 4) .* exp(x) ./ ((exp(x) - 1) .^ 2)','x',0,dt ./ T);

plot(T,Ce,'--b');
plot(T,Cd,'-r');
legend(['Einstein model';'Debye model'],2);
xlabel("Temperature (K)");
ylabel("Specific heat (J/K/mol)");


デバイモデルとアインシュタインモデルを比較すると、高温でデュロン=プティの値になり、絶対零度でゼロになる点が一致します。しかし、中間的な温度ではデバイモデルのほうが高い比熱を示す事がグラフから読み取れます。

参考URL




付録


このエントリで使用したScilabのシミュレーション用ファイルを添付します。ファイル名末尾の".txt"を削除して、"_"を"."に変更すれば使えるはずです。(参考:ねがてぃぶろぐの付録)


参考文献/使用機器




フィードバック



にほんブログ村 その他趣味ブログ 電子工作へ

 ↑ 電子工作ブログランキング参加中です。1クリックお願いします。


コメント・トラックバックも歓迎です。 ↓      


 ↓ この記事が面白かった方は「拍手」をお願いします。


tag: Scilab 数値積分 格子比熱 

comment

Secret

FC2カウンター
カテゴリ
ユーザータグ

LTspiceAkaiKKRmachikaneyamaScilabKKRPSoC強磁性OPアンプPICCPAecaljモンテカルロ解析常微分方程式odeトランジスタ状態密度DOSインターフェース定電流PDS5022スイッチング回路半導体シェルスクリプト乱数レベルシフト分散関係HP6632AI2C可変抵抗トランジスタ技術ブレッドボード温度解析R6452A反強磁性確率論バンドギャップセミナー数値積分熱設計非線形方程式ソルババンド構造絶縁偏微分方程式ISO-I2CLM358マフィンティン半径フォトカプラシュミットトリガカオスLED三端子レギュレータGW近似A/Dコンバータ発振回路PC817C直流動作点解析USBTL431数値微分アナログスイッチカレントミラー74HC4053サーボ量子力学単振り子チョッパアンプ補間2ちゃんねる開発環境bzqltyFFT電子負荷LDAイジング模型BSch基本並進ベクトルブラべ格子パラメトリック解析標準ロジックアセンブラ繰り返し六方最密充填構造SMPコバルトewidthFET仮想結晶近似QSGW不規則合金VCAMaximaGGA熱伝導cygwinスレーターポーリング曲線キュリー温度スイッチト・キャパシタ失敗談ランダムウォークgfortran抵抗相対論位相図スピン軌道相互作用VESTA状態方程式TLP621ラプラス方程式TLP552条件分岐NE555LM555TLP521マントル詰め回路MCUテスタFXA-7020ZR三角波過渡解析ガイガー管自動計測QNAPUPSWriter509ダイヤモンドデータロガー格子比熱熱力学起電力awkブラウン運動スーパーセルUbuntu差し込みグラフ第一原理計算フェルミ面fsolveCIFxcrysden最大値最小値ubuntu最適化平均場近似OpenMP井戸型ポテンシャル固有値問題シュレディンガー方程式TeX2SC1815結晶磁気異方性OPA2277フラクタルFSM固定スピンモーメントc/a非線型方程式ソルバgnuplot全エネルギーfcc初期値マンデルブロ集合縮退正規分布interp1ウィグナーザイツ胞L10構造multiplotフィルタ面心立方構造PGAハーフメタル二相共存ZnOウルツ鉱構造BaOSIC重積分磁気モーメント電荷密度化学反応クーロン散乱岩塩構造CapSenseノコギリ波デバイ模型キーボード半金属フォノンquantumESPRESSOルチル構造スワップ領域リジッドバンド模型edelt合金Realforce軸ラベルグラフの分割凡例線種シンボルMAS830LCK1026LMC662PIC16F785トランス関数フィッティングトラックボールPC等価回路モデルヒストグラムパラメータ・モデル不規則局所モーメント最小二乗法TS-112TS-110直流解析ExcelGimp円周率片対数グラフ両対数グラフspecx.f疎行列三次元ifort文字列不純物問題P-10等高線ジバニャン方程式ヒストグラム確率論マテリアルデザイン入出力境界条件陰解法AACircuit熱拡散方程式HiLAPWMBEEAGLE連立一次方程式ナイキスト線図負帰還安定性Crank-Nicolson法日本語

最新コメント
リンク

にほんブログ村 その他趣味ブログ 電子工作へ