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擬似Cカーブ可変抵抗の定数設計

LTspiceで擬似Cカーブ可変抵抗コメント欄にて、擬似Cカーブ可変抵抗の定数設計の実際について質問をいただきました。

擬似Cカーブ可変抵抗(Rc)は、Bカーブ可変抵抗(Rb)と並列に入れる固定抵抗(Rp)から構成されるためパラメータが二つ存在します。この二つのパラメータを上手に選ぶことによって擬似Cカーブ可変抵抗の抵抗値(Rc)とその曲率の二つを変化させることが出来ます。

001_20130515013645.png 002_20130515013644.png


擬似Cカーブ可変抵抗


電子回路の「ボリューム・つまみ」として可変抵抗は頻繁に使用されますが、そのつまみの回転角と抵抗値の間の関係は『直線的なBカーブ』『指数関数的なAカーブ』に加えて『対数関数的なCカーブ』の3種類が存在します。

001_20090216001312.png


しかしながら、前者2つと比べてCカーブの可変抵抗はほとんど使われることが無いため、電子工作部品としても入手がやや困難です。

このためLTspiceで擬似Cカーブ可変抵抗では、Bカーブの可変抵抗と並列に普通の固定抵抗を接続することで、抵抗値の変化を上に凸なCカーブ的なものに出来る事をシミュレーションから確認しました。

この記事に対して、コメント欄にて、通りすがりさんに設計に関する質問をいただきました。

はじめまして。
50kCカーブ2連ポットを探していてたどり着きました。
記事を拝見しましたが難しくて(^^;
50kCカーブを作ろうとしたら100kBカーブにどのくらいの抵抗を抱かせればいいのでしょうか?
ご教授いただければ幸いです。


そこで、今回のエントリでは、具体的に擬似Cカーブの可変抵抗を作るに当たっての定数設計に関して書きます。

並列抵抗Rpの計算式


設計する擬似Cカーブ可変抵抗の値をRc、使用するBカーブ可変抵抗の値をRb、並列に入れる固定抵抗の値をRpとします。

擬似Cカーブ可変抵抗Rcは、RbとRpの並列接続なのでその値は
\frac{1}{R_c}=\frac{1}{R_b}+\frac{1}{R_p} ・・・(1)
から
R_c = \frac{R_b R_p}{R_b + R_p} ・・・(2)
であると分かります。

これをRpについて解くと
R_p = \frac{R_b R_c}{R_b - R_c} ・・・(3)
となります。

Bカーブ可変抵抗Rbと並列抵抗Rpの決定


今回の計算例として通りすがりさんの値Rc=50kΩを使います。

(2)式からRcを決めるための未知数はRbとRpの2つあります。しかしながら、Rbは市販のBカーブ可変抵抗なので、おのずと選ぶことの出来る値が限られてきます。
入手性が良さそうで、並列にして50kΩが作れそうな抵抗値として、差し当たりRb = 100kΩ、150kΩ、200kΩ、500kΩあたりを検討することにします。

ここまででRc = 50kΩとRbの候補が4種類決まるので(3)式から、それぞれのRbに対応したRpが計算できます。

Bカーブ抵抗(Rb)並列抵抗(Rp)
100kΩ100kΩ
150kΩ75kΩ
200kΩ66.7kΩ
500kΩ55.6kΩ
table.1: Rc = 50kΩのときのRbとRpの組み合わせ


擬似Cカーブ可変抵抗の曲率


table.1に50kΩの擬似Cカーブ可変抵抗を構成することが出来るBカーブ可変抵抗と並列抵抗の組み合わせの例を挙げました。

では、これらは全て同じ特性となるのでしょうか?
―――答えはNOです。

このことを確認するためにLTspiceで擬似Cカーブ可変抵抗とほぼ同じ方法でLTspiceを用いて擬似Cカーブ可変抵抗の曲率を計算してみました。

ただし、グラフの横軸をBカーブ可変抵抗器の抵抗値にしてしまうとRbの値によって横軸がそろわなくなるので、多少トリッキーではありますがLTspiceで電圧制御抵抗(VCR)の方法を使いました。
fig.2の横軸の単位が電圧となっていますが、これは電圧ではなくBカーブ可変抵抗の回転角であると考えてください。0から1で端から端まで回しきるイメージです。

001_20130515013645.png
fig.1: 擬似Cカーブ可変抵抗のスケマティック

002_20130515013644.png

fig.2: 抵抗の組み合わせによる曲率の違い。横軸は電圧ではなく、可変抵抗の回転角と読み替えてください。(0で抵抗値が最小、1で最大。)


シミュレーション結果から、どの組み合わせであっても、つまみを最小から最大に回しきった時に設計どおり抵抗値が0Ωから50kΩまで変化することがわかります。
しかしながら、その曲率は抵抗の組み合わせによって異なっており、Bカーブ可変抵抗に大きい抵抗値を選ぶほど曲率が大きくなっています。

本物のCカーブ可変抵抗がこの中でどの曲率に一番近いのかは、残念ながら私は知りません。

対数的な変化をするCカーブ可変抵抗とは逆に、指数関数的な変化をするAカーブ可変抵抗は、オーディオの音量変化に頻繁に利用されます。これは、人間の五感が対数的な挙動を示すことが理由です。つまりオーディオのボリュームつまみに指数関数的なAカーブ可変抵抗を利用すると実際の音量も指数関数的に増えているにもかかわらず、人間の聴感からは直線的に音量が増えたように感じるということです。

Cカーブ可変抵抗もまた同様に、人間がつまみを回したときに『直線的に変化したな』と感じるような曲率になっているのが望ましいはずです。
実際のところ、私は擬似Cカーブ抵抗の使い道を自分でも良くわかっていないのですが、どういった曲率が人間にとって一番『しっくりくる』のかはカットアンドエラーで決めても良いのではないかと思います。

関連エントリ




付録


このエントリで使用したLTspiceのシミュレーション用ファイルを添付します。ファイル名末尾の".txt"を削除して、"_"を"."に変更すれば使えるはずです。(参考:ねがてぃぶろぐの付録)


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tag: LTspice 可変抵抗 

comment

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No title

かさねがさねありがとうございます!
150kと200kで試してみます。
このたびはありがとうございましたm(_ _)m

No title

タイムリーな記事でとても参考になりました。
おせっかいかも知れませんが、オーディオ的に理想的なCカーブということは、Aカーブを実測して、その特性に近いラインを目指せばよいのかな?と考えました。・・・・自分でやってみます(笑)

Re: No title

南国通信さん、こんにちは。

オーディオにせよ何にせよ、ユーザーインターフェースなど人間の官能が関わる部分は、理屈だけで決めるのは難しいだろうと思います。

オーディオ用Aカーブ可変抵抗の曲率が、例えば官能試験などから決められているのだとしたら、それをまねるのはいいアイデアですね。
逆にそうでないのだとしたら、出来合いの曲率を使うしかないAカーブよりも、ある程度自分で曲率を設計できる擬似Cカーブにはアドバンテージがある!・・・かもしれません。

No title

今更ですが・・・
A~Dカーブは回転各50%で以下の値になります
 ・A型 : -16dB (1/6)
 ・B型 : -6dB (1/2)
 ・C型 : -1.6dB (5/6)
 ・D型 : -20dB (1/10)

なので青線がC型に一番近いのかな、と思います

Re: No title

名無しの権兵衛さん、ご指摘ありがとうございます。

C形が回転角50%で、抵抗値が5/6になるという制約条件を加えて設計しなおしてみました。

1/Rc = 1/Rb + 1/Rp
1/((5/6)*Rc) = 1/((1/2)*Rb) + 1/Rp

上記の連立方程式に Rc=50kΩ を代入して計算すると Rb=250kΩ, Rp=62.5 kΩ になりますね。
Rbも探せばありそうな値なので、この設計のほうがよいかもしれません。
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