AkaiKKRでダイヤモンド型構造半導体

AkaiKKR(Machikaneyama)を利用してダイヤモンド型構造の半導体としてシリコンとダイヤモンド(炭素)の状態密度やバンド構造を計算しました。ダイヤモンド構造の計算は基本的にfcc構造として行いますが、原子のない位置に明示的に空孔を入れて計算しないと計算の精度が下がることがあるようです。

計算されたバンド構造から、シリコンやダイヤモンドは間接遷移型の半導体であることが読み取れます。計算されたバンドギャップの大きさは、実際に測定されているものよりもかなり小さい値を示しました。一般的に局所密度近似では、バンドギャップの大きさを正しく計算することはとても難しく、過小評価する傾向があるということです。

002_20130202154314.png 003_20130202154313.png 004_20130202154313.png 005_20130202154313.png


AkaiKKRで不規則NiFe合金の強磁性AkaiKKRで不規則NiMn合金の分散関係では、AkaiKKR(Machikaneyama)を利用して面心立方(face-centered cubic:fcc)構造の金属の状態密度やバンド分散を計算しました。

ねがてぃぶろぐは電子工作ブログということになっているので(?)、金属だけでなく半導体の状態密度やバンド分散を計算します。
色々な化合物が半導体として知られていますが、今回は単体元素で半導体となるダイヤモンド型構造のシリコンやダイヤモンドを扱います。

ダイヤモンド型結晶構造


以下に示すのはVESTAを利用して、ダイヤモンドの結晶構造を描画したものです。
結晶構造ファイルの作り方は情報科学演習 2011 4. 発展問題 ~氷の構造などに分かりやすい解説がなされていますが、今回は結晶構造ギャラリーに公開されている4-diamond.cifを利用させていただきました。

001_20130202051148.png
Fig.1: ダイヤモンドの結晶構造


ダイヤモンド型の結晶構造は、一見するとたくさんの原子を含む複雑なもののように見えますが、よくよく眺めてみると、2つのfcc構造の結晶をx,y,zの各方向に1/4ずつずらして重ねたものであることが見て取れます。

したがって、AkaiKKR(Machikaneyama)の入力ファイルは、基本的には以下のような物になります。(が、後述する通りもう一工夫必要です。)

 go  data/si
fcc 10.26 1.0 1.0, , , ,
0.001 1.5 sra vwnasa nmag init
update 4 100 0.02
1
Si 1 0 0.0 2 14 100
2
0.00000 0.00000 0.00000 Si
0.25000 0.25000 0.25000 Si


しかしながら、実際にこの入力で状態密度を描いてみると、おおざぱな状態密度の形自体は何となくあっているようにも見えるのですが、本来ならバンドギャップであるはずの領域にも有限の状態密度があるような図が出来てしまいます。

こういった問題に対する処方箋がMachikaneyama2000 の使用に関するメモを注意深く読むと見つかります。

以上がYMnAl の場合であるが,inmn6mn0as0as の場合もinput file の意味を探ることは容易である.ここでは原子番号としてZ=0 の指定があるが,これは原子空孔を意味する.
ダイヤモンド構造やzincblende 構造の結晶の場合オープン構造であり,計算の精度をあげるために原子の無い位置にも空孔を入れているが,必ずしも必要なわけではない.


古いversionであるcpa2002v008bのinフォルダの中のZnSの入力ファイルがあるので、それを参考に原子空孔を明示的に書き込んだシリコンの入力ファイルを作ります。

 go  data/si
fcc 10.26 1.0 1.0, , , ,
0.001 1.5 sra vwnasa nmag init
update 4 100 0.02
2
Si 1 0 0.0 2 14 100
Vc 1 0 0.0 2 0 100
4
0.00000 0.00000 0.00000 Si
0.25000 0.25000 0.25000 Si
0.75000 0.75000 0.75000 Vc
0.50000 0.50000 0.50000 Vc


ダイヤモンド型構造の逆格子


バンド分散関係を計算するためには、第一Brillouin Zone(第一B.Z.)の形を知らなければなりません。
先ほど、ダイヤモンド構造の結晶構造は2つのfcc構造を1/4ずつずらして重ね合わせたものだと書きました。同様に、ダイヤモンド型構造の第一B.Z.は、fcc構造のものと同じです。このことについては金持徹著 固体電子論に噛み砕いて書かれています。

したがって、AkaiKKRで不規則NiMn合金の分散関係でバンド構造を計算するときに指定したものと全く同じk点を使うことが出来ます。

最終的な入力ファイルは、Si_in.txtDiamond_in.txtとなりました。

specx.fの設定


今回の計算では、specx.fを下記の設定にしてmakeしました。
     & (natmmx=4, ncmpmx=4, msizmx=198, mxlmx=3, nk1x=2200, nk3x=2688,
& msex=201, ngmx=15, nrpmx=650, ngpmx=650, npmx=350, msr=400)


状態密度とバンド構造


以下に計算された状態密度とバンド構造を示します。

002_20130202154314.png

Fig.2: シリコンの状態密度

003_20130202154313.pngFig.3: シリコンのバンド構造


シリコンは状態密度(Fig.2)からバンドギャップを持ち、バンド構造(Fig.3)から価電子帯の上端と伝導体の底が異なる波数ベクトルのところに存在するため間接遷移が起こるタイプの半導体であることが分かります。

以下に示すダイヤモンド(炭素)でも同様に、間接遷移型の半導体であることが読み取れます。

004_20130202154313.png

Fig.4: ダイヤモンド(炭素)の状態密度

005_20130202154313.png
Fig.5: ダイヤモンド(炭素)のバンド構造


シリコンとダイヤモンドのバンドギャップの大きさを比べると、ダイヤモンドのほうがはるかに大きいことが読み取れます。Wikipediaのバンドギャップの一覧によると、実際に測定されたバンドギャップの大きさでもダイヤモンドのバンドギャップはシリコンの5倍程度大きいです。

元素実際のバンドギャップ(eV)計算されたバンドギャップ(eV)
シリコン1.11~0.4
ダイヤモンド5.5~4
table.1: 計算と実験によるバンドギャップの大きさ


しかし、その定量的な大きさは、どちらの計算結果も現実の値を過小評価しています。また、その過小評価の程度も、シリコンではかなり大きく、ダイヤモンドでは比較的小さいと、扱う物質しだいで変わってしまうようです。この問題は、第一原理計算の業界にとって共通する重要な課題であるようで、本当に色々なところで議論されています。(例えば第一原理計算 (解析編)Wikipdeiaの該当箇所)

AkaiKKR(Machikaneyama)の掲示板にも下記の通り該当する書き込みがあります。

Can KKR methoud give a better band gap for semiconductor compared with LDA?
Posted on : August 10, 2012 (Fri) 22:18:55
by tfl

Dear all,

I want to calculate the band structure of some semiconductor. Using traditional LDA method, it is found that the band gap are obviously underestimated. Would you please to tell me that KKR method can provide more accurate band gap values for semiconductor?


[Re:01] Can KKR methoud give a better band gap for semiconductor compared with LDA?
Posted on : December 09, 2012 (Sun) 10:13:46
by Koji Kobashi

Since Akai-KKR uses the LDA, the calculated bandgaps are lower than the actual values of semiconductors. The ASA improves it but only slightly.


と言うことなので、今回の計算ではASA(Atomic Sphere Approximation, 原子球近似)を利用しています。

関連エントリ




参考URL




付録


このエントリで使用したAkaiKKRの入力ファイルを添付します。



参考文献/使用機器




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