LTspiceで秋月インダクタンス計

コイルは『自分で巻く』ことにより希望する特性を実現できるため、大量生産で無いアマチュア用途では自作を薦められることも少なくありません。
インダクタンス測定を安価に行うためには、インダクタンス計の自作が必要です。
インダクタンス計の定番としては、秋月のデジタルLメータキットが売られていたようです。もはや絶版となってしまった回路ですが、LTspiceでシミュレーションを行いました。

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絶版秋月インダクタンス計


安価なデジタルマルチメータでも、多機能なものは抵抗値やキャパシタンスを測定する機能を持っています。しかしながら、インダクタンスの測定機能を持つ安価なデジタルマルチメータは、ほとんどお目にかかりません。
そこで、インダクタンス計の自作は、趣味の電子工作としては昔からメジャーな存在でした。

秋月電子通商でも、以前はデジタルインダクタンスメータキットを発売していましたが、今では絶版となり秋月電子通商キット取扱説明書回路図集のなかで回路図が見られるだけとなっています。

現在入手可能なインダクタンス測定可能な組み立てキットとしては、ストロベリーリナックスポケットL/Cメーターキット Ver.2が有名なようです。

ストロベリーリナックスのキットは、被測定インダクタンスと共振回路を構成することにより発振周波数からインダクタンスの値を見積もるという測定原理を採用しています。
これに対して、秋月のキットは位相検波方式を採用しており、原理上は直列に存在する寄生抵抗の影響を受けないといった特徴があります。
位相検波方式の詳細に関しては、位相検波ってなんだ?デジタルインダクタンスメータキットが詳しい説明があります。

このデジタルインダクタンスメータキットは、その完成度にかなりの自信があるらしくデジタルインダクタンスメータキットには
このキットより精度のいいLメータ(手前みそかもしれないが)というとかなり高価なものですので、相当恵まれた人しか現実ではありませんね。

と、あります。

今回のエントリでは、そんな夢のある秋月インダクタンスメータキットの回路をLTspiceを用いてシミュレーションすると共に、インダクタンスに存在する直列抵抗がどのように測定結果に影響するのかを調べてみました。

モデル化


各構成要素の回路はインダクタンス計カテゴリでシミュレーションしたものの組み合わせを基本としています。

アナログスイッチ4053のモデルとしては、電圧制御スイッチにON抵抗のみを設定したものを使いました。
また、各OPアンプのモデルにはLTspiceの標準デバイスでまにあわせるの考え方を基にUniversal Opamp2をデフォルトの設定で使っています。
これらふたつの簡略化に関しては、もう少し良く考えた方がいいかもしれません。

シミュレーション結果


以下にシミュレーション結果を示します。


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fig.1: スケマティック(1024x768)

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fig.2: 波形


直列抵抗の影響


この回路に対して、被測定インダクタンスにたいして直列に抵抗を挿入した場合の測定誤差をシミュレーションしました。


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fig.3: スケマティック(1024x768)

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fig.4: 測定結果

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fig.5: 寄生抵抗の影響


寄生抵抗が100mΩを越えた辺りから誤差が大きくなるようです。

Appendix:独自に復刻する場合


このAppendixは、ほとんど自分用のメモです。

この秋月のインダクタンス計キットですが、回路図が公開されているので独自に復刻することは可能です。そして、実際に復刻している方もいらっしゃいます。(参考:デジタルLメータの復刻)

オリジナルの回路で復刻する場合に入手が難しいのは、チョッパアンプであるLTC1049だけですが、これはリニアテクノロジーへのサンプルリクエストから入手できました。
また、完全にもとの回路を再現することにこだわらなければ、必ずしも位相検波回路のOPアンプはLTC1049でなくてもよいのではないかと思います。(まじめに検討していませんが、直感的に言えばむしろこの回路にチョッパアンプは向いていないのでは?)

復刻する際に、デジタルインダクタンスメータキットから直接的に読み取れない情報もあります。それは、各ICの電源の関係―――とりわけ、アナログスイッチ4053の電源です。
これもまじめに検討していませんが、4053の制御信号電圧は負電源を許容していないので、おそらくVEE端子とVSS端子は同じノードに接続されていて、そのノードは回路上で最も電圧が低い電源ノードとなるはずです。

さらに、PSoCで位相検波方式のインダクタンス計を自作されている方もいらっしゃいます。

位相検波方式のインダクタンス計を完全にワンチップに押さえられない理由は、PSoCで電圧電流変換回路を構成するのが難しいから(と、既にアナログブロックの余裕も無いから)だと思います。

(アナログブロックの数はおいておくとすると)PSoCでLED正弦波電流駆動にて、PSoCを用いた電圧電流変換回路自体は実現可能であることが分かっています。しかしながら、電圧電流変換回路は発振しやすい難しい回路でもあるようです。実際のインダクタンス計として利用するためには、さまざまな負荷条件で安定に動作することが必要となります。

関連エントリ




参考URL




付録


このエントリで使用したLTspiceのシミュレーション用ファイルを添付します。ファイル名末尾の".txt"を削除して、"_"を"."に変更すれば使えるはずです。(参考:ねがてぃぶろぐの付録)


参考文献/使用機器




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tag: LTspice PSoC OPアンプ 

comment

Secret

浪漫

ええ、位相検波方式のインダクタンス計は浪漫ですよね!

せっかくI-Q分離してるのに、意外と直列抵抗の影響が大きいんですね。
秋月の回路は電圧計で読むことを前提にしているので、いまどきならマイコンで読む前提で、色々な定数とかもいじった方がいいような気がします。
続きを楽しみにしてます。

Re: 浪漫

Simさん、こんにちは。

100μHを1kHzで駆動したときのインピーダンスは0.2π=約0.6Ωと考えると、1Ωの直列抵抗に対しても誤差が10%程度に収まっているので、まあまあといったところでは無いでしょうか。
PSoCの性能から考えて現実的かどうかはかなり疑問ですが、複数の周波数で測定できれば面白いかもしれません。

No title

はじめまして、こんにちは。
可変抵抗の所を読ませてもらいました。私の素朴な疑問にお答えしていただけたらと思い、コメントさせてもらいました。
可変抵抗のAカーブ(よくある250Kの端子か3つ出ているやつです)の接続で、1番と3番には入るプラスマイナスを逆に接続するとCカーブになるのでしょうか?

Re: No title

音好きさん、こんにちは。

LTspiceで擬似Cカーブ可変抵抗
http://gomisai.blog75.fc2.com/blog-entry-352.html

ですね?
コメントは関係のありそうな記事に付けていただくとありがたいです。

さて素朴な疑問の方ですが、Cカーブにはなりません。
抵抗の変化は上に凸な曲線を描くと思いますが、回転角が最小のときに抵抗値が最大、回転角が最大のときに抵抗値が最小になり、ちょうどfig.1のCカーブの曲線を左右反転したようなものになるかと思います。

普通のテスターがあれば確認できるので、ぜひ実際に測ってみてください。

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Re: No title

こんにちは。

すみません。
ご質問やご相談など、お返事を期待されるものは「公開」での書き込みをお願いします。

非公開の書き込み内容を勝手に公開するわけには行きませんし、書き込み内容に触れずにお返事をすることは難しいです。
ただし、今回は差し支えなさそうなので勝手に公開させていただきます。

> はじめまして。
>
> こちらのブログの [続きを読む] 部分を
> 是非とも参考にさせていただきたいと思い
> コメントいたしました。
>
> よろしければどの様に記述しているのか
> お教え願えませんでしょうか?
>
> よろしくお願いいたします。

ねがてぃぶろぐの「続きを読む」は
・RSSでは全文配信
・目次ページでは折りたたみ
・個別ページでは全文表示
となるように意図しています。

以前FC2ブログユーザーフォーラムで教えていただいた方法なのですが、ログは流れてしまったようです。

基本的には、春木屋さんの外部スクリプト:要素の汎用折りたたみ(http://blog-imgs-27.fc2.com/s/u/g/sug/fold.htm)を利用させていただいています。
fc2ブログのテンプレート内でエリアモード変数(http://fc2blogmanual.blog60.fc2.com/blog-entry-160.html#a5)の<!--not_permanent_area-->~ <!--/not_permanent_area-->でスクリプトの呼び出し部分を挟んで折り畳みが有効になるページとならないページを分けています。

それから、記事と関係なさそうな内容で、どの記事のつけたらいいか分からないコメントは、どうでもよさそうな記事につけてもらえるとありがたいです。
あ(http://gomisai.blog75.fc2.com/blog-entry-483.html)とか、試験投稿(http://gomisai.blog75.fc2.com/blog-entry-307.html)とか

No title

こんばんは、シミュレーションありがとうございました。
私も走らせてみました、気になった点がありましたので、報告させて頂きます。

定電流回路ですが、
正確にはR15=R19、R16=R17+R18である必要があります。
とはいえR16=101Kとしてもあまり差が出ませんでしたけど。

移相回路ですが、
A出力はsin入力に比べて90度位相がずれるはずですが、お使いになった定数では90度から少しずれています。
R10=150Kにすると90度になります。
別の方法でシミュレーションしてみるとインダクタの直列抵抗が大きくなるほど位相のずれによる影響も大きくなります。

オリジナルの回路をみていると90度にするために50KのVRで調整するようになっていますが、発振回路がクワドラチャ正弦波発振回路なのですからU2の出力はsin出力から90度ずれていますので、直接U4につないでやればいいはずです。これで部品が減らせます。

あと、アナログスイッチによる位相検波廻りももう少し検討した方がいいのではないかと思ってますが、これに関してはまだシミュレーションしておりません。

Re: No title

edyさん、こんにちは。
追試をしていただいて光栄です。シミュレーション用のファイルを公開している甲斐があるというものです。
今回の回路やその定数は、できる限りオリジナルのものを採用したのですが、私が考え無しにやった部分で統一感がなくなってしまっていますね。

○定電流回路
> 正確にはR15=R19、R16=R17+R18である必要があります。
> とはいえR16=101Kとしてもあまり差が出ませんでしたけど。
R18>>R17なら
R16=R18+R17≒R18
ということで、本当にR18>>R17かどうかは微妙なところですが、仮に金属皮膜抵抗を使ったとしても1%までの誤差は覚悟しないといけないので、まあ、気にしないという設計思想なのでしょう。

実際に作ってもおそらく
> とはいえR16=101Kとしてもあまり差が出ませんでしたけど。
という感じだと思いますし。

○移相回路
> A出力はsin入力に比べて90度位相がずれるはずですが、お使いになった定数では90度から少しずれています。

これはうかつでした。
クワドラチャ発振回路の周波数foscが
C=C1=C3とすると
fosc=1/(2π*R2*C)  (※1)
で、C=1000pとして1kHzをねらうと
R=159.15k
キリのいいところで150kΩとなっていただろう設計に対して

移相回路の中心周波数fcに私が1kHzを代入して
fc=1/(2π*R10*C4)  (※2)
R10=159.15k,C4=1000p
とやってしまったせいですね。

クワドラチャ発振回路なのに、あえて移相回路を挿入しているのは、発振回路から最終的に位相検波までたどり着くまでの位相の回転分まで含めて位相差が90度になるように調整できるようにするためかな、とも思うのですがあまり自信はありません。

○位相検波回路
もうちょっとやりようがあるような気がしているのは、私も同感なのですが、シミュレーションをするだけでもなかなか手間ですよね。

※1 岡村廸夫著 定本 OPアンプ回路の設計 より
※2 馬場清太郎著 OPアンプによる実用回路設計 より
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