回路シミュレータの使いどころ

回路シミュレータとは、そもそもどんな役に立つのか?
実際に実験を行う場合と比べて、どのようなアドバンテージがあるのか?

回路シミュレータは、回路の挙動を目で見える形で示してくれるため、動作の理解が深まります。回路シミュレータには、実際に実験してみる事と比較して以下のアドバンテージがあります。

  1. 時間やコストがかからない
  2. 高価な計測器無しで理想的な測定ができる


今回のエントリでは、弛張発振回路を用いたLED点滅回路を例にとって、これらのアドバンテージについて解説をします。

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実験とシミュレーション


アナログ回路は、一見単純に見えるものであっても、まじめに動作を考えると難しいものです。
回路がどのような動作をするのかを知るためには、実際に実験をしてみるのが一番よい方法です。
しかしながら、実際に実験をするのは手間がかかることであり、それが高い精度を要求されるものであるなら、なおさら難しいことになります。

今回のエントリでは、実際に実験をする場合と比較して、回路シミュレータがどのようなアドバンテージを持つのかを説明します。

2石弛張発振回路


手軽に電子回路の実験をするために、ブレッドボードがよく使われます。
ブレッドボードを使った実験を扱ったサイトとして有名なブレッドボードラジオさんのページに弛張発振回路の実験があります。

この回路を実際につくり動作させて見ました。


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fig.1: 弛張発振回路の回路図

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fig.2: ブレッドボード上に製作


video.1: 点滅動作


さて、ブレッドボードラジオさんのページの中には以下のように書かれています。

点滅の周期はコンデンサCおよび抵抗Rの大きさに比例します。各部の電圧や電流を調べようとしましたが、テスタをあてると正常に動作しなくなってしまうので測定できませんでした。

ところで、Cには積層セラミックコンデンサを用いましたが、これを電解コンデンサにする場合、その極性をどうするか悩みます。FCZの回路ではLEDにつながるほうがプラスになっていましたが、他のサイトでは逆向きになっているのもありました。この辺は動作原理をちゃんと理解していないことには答えが出ません。


このことから、回路の挙動を調べるための実験として、問題点が2点浮かんできます。

  • 製作・測定するまでCの極性を決められない
  • テスタが回路に与える影響から回路の挙動が変わるため測定できない


そこで、この回路をLTspiceを用いてシミュレーションしてみます。

回路シミュレーション


以下にシミュレーション結果を示します。


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fig.3: スケマティック

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fig.4: グラフ


fig.4のなかで赤のラインで示されたのがLEDに流れる電流のグラフです。0.75秒程度の周期で点滅していることが読み取れます。

次に緑のラインで表されたグラフに注目します。これは、Q1のベースの電圧からD1のアノードの電圧を引いたもので、C1の両端の電圧を表しています。点滅の1周期分の間のすべての時間で、電圧がマイナスになっています。
このことから、C1に極性のあるコンデンサを接続するときは、D1のアノード側をプラスにする必要があることが分かります。

有用なツール、だが過信は禁物


もちろんこういったことは、実験だけからでも調べることができます。
その場合は、無極性のコンデンサ、オシロスコープ、そしてD1の電流まで測定しようと考えるなら電流プローブが必要になります。
しかしながら、オシロスコープは高価であり、電流プローブは輪をかけて高価です。無極性コンデンサも有極性のアルミ電解コンデンサなどと比較すれば高価でしょう。

こういった観点から、回路シミュレータと言うものは、プロのエンジニアだけが使う特殊なソフトウエアではなく、アマチュア電子工作趣味人にとっても非常に有用なツールであることが分かると思います。

ただし、シミュレーション結果が本当に正しいものであるのかには、常に注意を払う必要があります。
このシミュレーションだけでは、この回路が実際に製作したときに本当に発振するものなのか?また、本当に発振するとしてLEDのピーク電流は本当に170mA程度なのか?LEDのON時間は?といった疑問に完全に答えることはできません。(参考:回路シミュレーションと実測の比較)

実験をするにせよ理論を学ぶにせよ、過信をしなければ、回路シミュレータは理解を助けるすばらしいツールです。

関連エントリ




参考URL




付録


このエントリで使用したLTspiceのシミュレーション用ファイルとBSch3V形式回路図ファイルを添付します。ファイル名末尾の".txt"を削除して、"_"を"."に変更すれば使えるはずです。


参考文献/使用機器




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tag: LTspice 

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弛張発振回路について

お久しぶりです。最後のNATS大会を終えたばかりの、エレキ主任の浜です。
私は、こういったアナログ回路が大好きで、以前から研究しております。
この回路は大変おもしろいですね。要するに、ポジティブフィードバック(入力が出力によってさらに助長される論理)を使って状態を一気に反転させているのですね。
さて、LEDが点灯している時間がどのように決まるのか、私の考えはこうです。コンデンサがポジティブフィードバックを誘起する電圧(0.6Vより低い、不感帯以上の電圧)になったことにより、ベース電流がわずかに流れ始め(増加が開始し)、一気にQ2が飽和に追い込まれます。次に、コンデンサが速いスピードで放電され、既にベース電流が減少に転じているわけですが、Q2が飽和している状態では、ポジティブフィードバックループが出来上がりませんので、減少のポジティブフィードバックは起きません。Q2が非飽和になってようやくoffになるポジティブフィードバックが起こるわけです。ここに(放電に)若干の時間がかかるから、点灯が目で確認できるわけですね。こうして、またベース電圧が負に転じ、offになることを繰り返すのですね。
実用上の問題として、タイミングが温度特性の影響をもろに受けそうですね(特にベース・エミッタ電圧やhfe)。また、瞬間的ではありますが、Q1のベースや、LEDに過大な電流が流れるので、寿命は短いのではないでしょうか?(製品ではアウトでは?)原理的に「回路の不安定さ」を使っているせいか、動画でもタイミングに変動があることが確認できますね。
原理としては、非安定マルチバイブレーターやシュミットトリガー回路に似ていますが、一気に放電させるところが違っていて面白いですね。

Re: 弛張発振回路について

浜維志さん、こんにちは。

先日はあまりお話ができずすみませんでした。私はまだしばらく忙しい日々が続きそうで、ブログの更新が滞ってしまっています。(そして、趣味の電子工作にさける時間はさらに少なくなっています。)

さてこの回路、といいますか、回路シミュレータの使いどころとその限界についての話ですが、ある定性的な挙動、――なぜ反転するのか、反転するときどのようなことが起こるのか――は、かなり調べられますが、もう少し定量的なこと、例えば、

> また、瞬間的ではありますが、Q1のベースや、LEDに過大な電流が流れるので、寿命は短いのではないでしょうか?(製品ではアウトでは?)

に関しては、それぞれのノードに流れる電流を数字として充分な確度で見積もることが簡単ではないなと思っています。
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