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「詰め回路:TL431」を解く

トランジスタ技術2009年12月号に、「詰め回路①3端子基準電圧源TL431を発振させずに使う」と言う記事が載っています。これはトラ技の新しい連載で、今月号で出した問題の答えを来月号に載せるというもののようです。
今回のテーマは、タイトルのとおりTL431を発振させないようにするためには、出力と並列に入れるコンデンサの容量をいくつにすればよいかと言う問題です。


001_20091122054237.png
fig.1: 詰め回路の問題


ちょっと難しかったので、私なりに解いてみたものをエントリとしてまとめます。
(別にこのエントリに限った話ではありませんが、)間違っているかもしれません。まだ自分で考えたい、と思っている方はこれ以降を読まないでください。

さらに難しくしている原因


答えが分かった人は、トラ技のアンケートページから回答をすることができます。
正解者の中から抽選で一名に粗品が進呈されるそうです。

さて、アンケートページにアクセスしてみると分かるのですが、この詰め回路は、択一問題ではなく、複数回答可なのです。
そんなわけで、一番それらしい回答を選ぶだけでは駄目で、すべての選択肢に関して検討し、選ばない選択肢については、不適切である理由を考えなければなりません。

基本的な考え方


TL431は、出力端子に不適切な負荷を接続すると発振します。
この負荷と発振する(Astable)、発振しない(Stable)の関係を表した図がfig.2です。テキサスインスツルメンツのTL431のページからこの図が描かれたデータシートをダウンロードできます。トラ技の記事にも引用されています。


002_20091122054237.png
fig.2: 負荷容量,カソード電流と安定領域


横軸は、そのまま出力に入るコンデンサの値です。fig.3においては、この問題の答えとなるC1と負荷に含まれるコンデンサC2の合成容量となります。並列に入っている容量は単純に足し算で CL=C+Cp です。

縦軸はTL431のカソードからアノードへ流れる電流(カソード電流)です。V1とR1からカソード電流の上限を決めることができそうですが、負荷がR3とV2のような組み合わせである可能性もあるので、一概には言えません。ただ、グラフを見る限り高電流側の方が安定領域が広がっているので、気にする必要は無いかもしれません。


003_20091122054305.png
fig.3: 考えられる負荷の種類


今回は出力電圧が2.5V、すなわち、VKA=Vrefなので、fig.2のAのラインの内側が不安定領域、外側が安定領域です。

A. 0.68uF


C=0.68uFのときについて。
これは不安定領域の真ん中にあるので、すぐに間違いだと分かります。

さて、今回の問題では選択肢にありませんが、左側の安定領域に入る容量値、例えばC=0.001uFなども間違いです。
例えば、並列に入る負荷の容量Cpが0.68uFの場合、負荷の合成容量がC+Cp=0.001uF+0.68u=0.681uFとなって、不安定領域に入ってしまうからです。したがって、積極的に入れる負荷容量Cは、それだけで右側の安定領域に入る値とします。

B. 6.8uF


つぎに、C=6.8uFを考えます。
6.8uFは、ギリギリですが、右側の安定領域に入っているように見えます。
しかし、私が実際に設計するのなら6.8uFを選択することはありません。

通常6.8uF程度の容量のコンデンサを用意する場合は、安価なアルミ電解コンデンサを選択します。そして、アルミ電解コンデンサは、その容量の誤差が、小さい側に向けて-20%程度あるのが普通です。

-20%の誤差を仮定すると、6.8uF×0.8=5.44uFとなり不安定領域に入ります。
以上から、Bも誤りであると判断しました。

C. 6.8uF+10Ω


6.8uFと10Ωを直列にした場合はどうでしょうか。
私はこの答えをfig.2だけから読み取ることができませんでした。
そこで、LTspiceを用いて発振に対する安定性の評価を行うこととしました。

回路シミュレータを用いた負帰還安定性評価法はいくつかありますが、今回は、発振の有無が読み取りやすい、ナイキストの判定法を用いました。


004_20091122054305.png
fig.4: 安定性判別用のスケマティック

005_20091122054305.png
fig.5: ナイキスト線図


ナイキスト線図の読み方ですが、(-1,0)の点を巻き込んだ軌跡を描くなら不安定、巻き込まないならば安定です。また、巻き込まないまでも、(-1,0)に近い軌跡を描いている方が発振に対する余裕が少ないと判断されます。

fig.4-5は、6.8uFと10Ωを直列にしたものに対して、並列に入れるコンデンサCpの値をパラメータスイープしたものです。
Cpの値によっては、(-1,0)を巻き込むため、不安定になることが読み取れます。

結論


以上より、残ったD. 68uFだけが正解です。

68uFならば、間違いなく安定領域ですし、トラ技の「図3:安定状態の出力波形」の立ち上がり時間は、CRの時定数から考えて、無負荷のときの値とほぼ一致します。

ただし、複数回答が可能であることを考えると、厳密に6.8uFのコンデンサを接続したときは発振しないはずなので、DだけでなくBも正解と言う可能性も捨て切れません。

関連エントリ


この記事を書く前に、以下のような記事を書こうと思っていましたが、旬を逃してしまってももったいないので先にこちらを書きました。おそらく、以下のエントリもそのうち書くと思います。

  • LTspiceでTL431
  • LTspiceのBode線図で負帰還安定性判別
  • LTspiceでナイキストの負帰還安定性判別


参考URL




付録


このエントリで使用したLTspiceのシミュレーション用ファイルを添付します。ファイル名末尾の".txt"を削除して、"_"を"."に変更すれば使えるはずです。


参考文献




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tag: トランジスタ技術 詰め回路 TL431 LTspice パラメトリック解析 ナイキスト線図 負帰還安定性 

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