セメント抵抗の温度特性 その1

電流測定用の四端子抵抗は比較的高価です。そこで、安価な二端子抵抗を基板上で四端子接続することで四端子シャント抵抗を自作できないかと考えました。
本エントリでは、セメント抵抗での試作を行い、電流値を可変した際の電圧降下を測定しました。
その結果、抵抗での損失にともなう自己発熱に起因すると考えられる抵抗値の変化が起こることが分かりました。

001_20091117050949.jpg 002_20091117050949.png 003_20091117050949.png


四端子シャント抵抗の自作


電流測定が必要な場面は非常に多いと思います。電流測定の方法として、最もポピュラーなのはシャント抵抗を用いる方法です。(ミリオーム抵抗 前編)
電流測定用のシャント抵抗は、抵抗値がとても小さく、実装の方法だけで抵抗値が変わってしまいます。(ミリオーム抵抗 後編)
そこで、高精度な測定を行う場合は、専用の四端子シャント抵抗を用います。とは言うものの、四端子のシャント抵抗は、1個1000円以上するため、ちょっとした実験に使うには高価です。

そんな訳で、安価な二端子抵抗を基板上に実装した状態で、あらかじめ抵抗値を測定しておけば、自作四端子抵抗として使えるのではないかという考えの下、セメント抵抗を用いた試作を行いました。

製作と測定


0.1Ω(100mΩ)のセメント抵抗を基板上に四端子接続となるようにハンダ付けします。(fig.1)


001_20091117050949.jpg
fig.1: 四端子セメント抵抗基板の外見(手前がセメント抵抗)


この基板には、5mΩのミリオーム抵抗もハンダ付けしましたが、今回のエントリでは使っていません。

上記のセメント抵抗に、HP6632Aシステム電源を用いて、0.2-5Aの範囲で0.2Aステップずつ電流値を上げていき、このときの電流と電圧をR6452Aデジタルマルチメータで測定しました。(ただ、1.4Aのデータを取り忘れました。ごめんなさい。)


002_20091117050949.png
fig.2: 接続概念図


このときの端子間電圧と電流値から、オームの法則をもちいて抵抗値を算出します。

_eq001_20091117050911.png … (1)

_eq002.png … (2)

測定結果とデータ処理


fig.3に測定結果のグラフを示します。横軸に電流値、縦軸に抵抗値をとりました。赤のプロットが測定データです。
誤差棒は、測定結果がR6452Aの初期確度を満たしていると信じて、電流誤差の最大・最小値、電圧誤差の最大・最小値から付けました。低電流側で誤差棒が大きいのは、電圧が測定分解能に対して小さいためです。


003_20091117050949.png
fig.3: 電流-抵抗測定結果


測定データから、放物線のような特性が見られました。そこで、これらのデータにたいして二次関数へのフィッティングを行ってみます。
緑の線が測定データに対して、gnuplotを用いて最小二乗法フィッティングを行ったものです。フィッティング関数として式(3)を用いました。ここで、a,bがフィッティングパラメータです。

_eq003.png … (3)

フィッティングの結果、a=0.07932972,b=98.9808となり、式(4)が得られました。

_eq004.png … (4)

発熱と温度


測定結果fig.3は、電流に対する抵抗値の変化が、誤差範囲内におさまらないものもあります。このことから、電流値に対する二次関数的な抵抗変化は、測定誤差ではなく、実際に1%程度の抵抗値変化が起こっているものと考えられます。
抵抗値を含む物性で、電流に対する二次関数になるものと言えば発熱、すなわち電力ジュールの法則(5)があります。

_eq005.png … (5)

fig.4に測定した電流と電圧の積から求めた抵抗での損失のグラフを示します。


004_20091117051003.png
fig.4: 電流-損失


緑のラインは、これらのデータに対して、抵抗値をフィッティングパラメータとした最小二乗法フィッティング結果です。
フィッティング結果から得られた抵抗値は、0.100452Ωでした。

温度と抵抗値


使用したタクマンのセメント抵抗の温度係数は、データシートより±200ppm/℃となっています。この値から見積もった1%の抵抗変化は、50℃の温度変化に相当します。

室温を約25℃とすると、抵抗の温度は75℃以上となっていなければならないことになりますが、5A通電時のセメント抵抗に触れてみたところ、触れられないほど熱かったので、この温度の見積もりは、まずまず妥当なものだと思います。

関連エントリ




付録


このエントリで使用した測定データとBSch3V形式の回路図ファイルを添付します。ファイル名末尾の".txt"を削除して、"_"を"."に変更すれば使えるはずです。


フィードバック



にほんブログ村 その他趣味ブログ 電子工作へ

 ↑ 電子工作ブログランキング参加中です。1クリックお願いします。


コメント・トラックバックも歓迎です。 ↓      


 ↓ この記事が面白かった方は「拍手」をお願いします。


tag: 温度解析 熱設計 HP6632A R6452A 

comment

Secret

FC2カウンター
カテゴリ
ユーザータグ

LTspiceAkaiKKRScilabmachikaneyamaKKRPSoCOPアンプPICCPA強磁性モンテカルロ解析常微分方程式トランジスタode状態密度インターフェースDOSPDS5022ecaljスイッチング回路定電流半導体シェルスクリプトレベルシフト乱数HP6632A温度解析ブレッドボードI2CR6452A分散関係トランジスタ技術可変抵抗確率論数値積分反強磁性セミナー非線形方程式ソルバ絶縁バンドギャップ熱設計偏微分方程式バンド構造GW近似カオス三端子レギュレータLEDフォトカプラシュミットトリガISO-I2CA/DコンバータLM358USBカレントミラーTL431マフィンティン半径PC817C数値微分アナログスイッチ発振回路サーボ直流動作点解析74HC40532ちゃんねる標準ロジックチョッパアンプLDAアセンブラFFTbzqltyイジング模型ブラべ格子開発環境補間量子力学電子負荷BSchパラメトリック解析単振り子基本並進ベクトル熱伝導繰り返しGGAMaximaTLP621ewidthSMP相対論抵抗位相図ランダムウォークスピン軌道相互作用六方最密充填構造不規則合金FETコバルト失敗談QSGWcygwinスレーターポーリング曲線スイッチト・キャパシタラプラス方程式gfortranキュリー温度状態方程式条件分岐格子比熱TLP552LM555TLP521三角波NE555過渡解析FXA-7020ZRWriter509テスタ詰め回路MCUマントルダイヤモンドQNAPデータロガーガイガー管自動計測UPS井戸型ポテンシャルawk第一原理計算仮想結晶近似ブラウン運動差し込みグラフ平均場近似fsolve起電力熱力学OpenMPスーパーセル固有値問題最適化最小値VCAシュレディンガー方程式VESTAubuntu最大値面心立方構造PGAOPA2277L10構造非線型方程式ソルバ2SC1815fccフェルミ面等高線ジバニャン方程式ヒストグラム確率論マテリアルデザイン正規分布結晶磁気異方性interp1フィルタ初期値ウィグナーザイツ胞c/aルチル構造岩塩構造スワップ領域リジッドバンド模型edeltBaOウルツ鉱構造重積分SIC二相共存ZnOquantumESPRESSOCapSensegnuplotmultiplot全エネルギー固定スピンモーメントFSM合金ノコギリ波フォノンデバイ模型ハーフメタル半金属TeXifortTS-110不規則局所モーメントTS-112等価回路モデルパラメータ・モデルヒストグラムExcel円周率GimpトラックボールPC直流解析入出力文字列マンデルブロ集合キーボードフラクタル化学反応三次元Realforce縮退日本語最小二乗法関数フィッティング疎行列シンボル線種ナイキスト線図陰解法負帰還安定性熱拡散方程式EAGLECrank-Nicolson法連立一次方程式P-10クーロン散乱Ubuntu境界条件MBEHiLAPW軸ラベルトランスCK1026MAS830L凡例PIC16F785LMC662AACircuit両対数グラフ片対数グラフグラフの分割specx.f

最新コメント
リンク

にほんブログ村 その他趣味ブログ 電子工作へ