セメント抵抗の温度特性 その1
本エントリでは、セメント抵抗での試作を行い、電流値を可変した際の電圧降下を測定しました。
その結果、抵抗での損失にともなう自己発熱に起因すると考えられる抵抗値の変化が起こることが分かりました。



四端子シャント抵抗の自作
電流測定が必要な場面は非常に多いと思います。電流測定の方法として、最もポピュラーなのはシャント抵抗を用いる方法です。(ミリオーム抵抗 前編)
電流測定用のシャント抵抗は、抵抗値がとても小さく、実装の方法だけで抵抗値が変わってしまいます。(ミリオーム抵抗 後編)
そこで、高精度な測定を行う場合は、専用の四端子シャント抵抗を用います。とは言うものの、四端子のシャント抵抗は、1個1000円以上するため、ちょっとした実験に使うには高価です。
そんな訳で、安価な二端子抵抗を基板上に実装した状態で、あらかじめ抵抗値を測定しておけば、自作四端子抵抗として使えるのではないかという考えの下、セメント抵抗を用いた試作を行いました。
製作と測定
0.1Ω(100mΩ)のセメント抵抗を基板上に四端子接続となるようにハンダ付けします。(fig.1)
この基板には、5mΩのミリオーム抵抗もハンダ付けしましたが、今回のエントリでは使っていません。
上記のセメント抵抗に、HP6632Aシステム電源を用いて、0.2-5Aの範囲で0.2Aステップずつ電流値を上げていき、このときの電流と電圧をR6452Aデジタルマルチメータで測定しました。(ただ、1.4Aのデータを取り忘れました。ごめんなさい。)
このときの端子間電圧と電流値から、オームの法則をもちいて抵抗値を算出します。


測定結果とデータ処理
fig.3に測定結果のグラフを示します。横軸に電流値、縦軸に抵抗値をとりました。赤のプロットが測定データです。
誤差棒は、測定結果がR6452Aの初期確度を満たしていると信じて、電流誤差の最大・最小値、電圧誤差の最大・最小値から付けました。低電流側で誤差棒が大きいのは、電圧が測定分解能に対して小さいためです。
測定データから、放物線のような特性が見られました。そこで、これらのデータにたいして二次関数へのフィッティングを行ってみます。
緑の線が測定データに対して、gnuplotを用いて最小二乗法フィッティングを行ったものです。フィッティング関数として式(3)を用いました。ここで、a,bがフィッティングパラメータです。

フィッティングの結果、a=0.07932972,b=98.9808となり、式(4)が得られました。

発熱と温度
測定結果fig.3は、電流に対する抵抗値の変化が、誤差範囲内におさまらないものもあります。このことから、電流値に対する二次関数的な抵抗変化は、測定誤差ではなく、実際に1%程度の抵抗値変化が起こっているものと考えられます。
抵抗値を含む物性で、電流に対する二次関数になるものと言えば発熱、すなわち電力ジュールの法則(5)があります。

fig.4に測定した電流と電圧の積から求めた抵抗での損失のグラフを示します。
緑のラインは、これらのデータに対して、抵抗値をフィッティングパラメータとした最小二乗法フィッティング結果です。
フィッティング結果から得られた抵抗値は、0.100452Ωでした。
温度と抵抗値
使用したタクマンのセメント抵抗の温度係数は、データシートより±200ppm/℃となっています。この値から見積もった1%の抵抗変化は、50℃の温度変化に相当します。
室温を約25℃とすると、抵抗の温度は75℃以上となっていなければならないことになりますが、5A通電時のセメント抵抗に触れてみたところ、触れられないほど熱かったので、この温度の見積もりは、まずまず妥当なものだと思います。
関連エントリ
付録
このエントリで使用した測定データとBSch3V形式の回路図ファイルを添付します。ファイル名末尾の".txt"を削除して、"_"を"."に変更すれば使えるはずです。
フィードバック

↑ 電子工作ブログランキング参加中です。1クリックお願いします。
コメント・トラックバックも歓迎です。 ↓
↓ この記事が面白かった方は「拍手」をお願いします。