LTspiceでスイッチト・キャパシタの交流解析

LTspiceのAC解析は、スイッチングを含む回路の周波数特性をシミュレーションすることができません。そこで、スイッチング回路の評価に適した過渡解析を反復させることにより、PSoCのスイッチト・キャパシタフィルタのゲイン線図を描いてみました。

その結果、フィルタ設計ウイザードのゲイン線図とよく一致することが確認できました。このことからも、LTspiceでスイッチト・キャパシタのLTspiceモデルが現実の回路をよく再現していることを確認できました。

005_20091010201221.png 007_20091010201221.png 009_20091010201220.png


連続時間回路に対するAC解析の限界


LTspiceには、回路の交流特性のシミュレーションを行うための小信号交流解析(.acコマンド)があります。このコマンドを使えば、増幅回路やフィルタの周波数に対するゲインや位相の特性を調べることができます。(例:超音波距離計 第三回:受信回路の交流解析,LTspiceでオールパス・フィルタ)

しかしながら、このAC解析は連続時間的な回路の周波数特性を調べるためのものであるため、スイッチングを含む回路の周波数特性を調べることができません。
スイッチングを含む回路にも、周波数特性が重要になってくるものがたくさんあります。例えば、A/Dコンバータのサンプル&ホールド回路やスイッチト・キャパシタ・フィルタなどです。ADCの並列動作 その1では、スイッチングの効果を考慮せずにサンプリングスイッチのON抵抗とホールドコンデンサによって構成されるRCローパスフィルタの周波数特性のみをシミュレーションしました。

今回は、ゲインの周波数特性がフィルタ設計ウイザードに書かれているPSoCのBPF2に関して、シミュレーションと理論値との比較を行います。

過渡解析


フィルタ自体は、LTspiceでスイッチト・キャパシタで作ったモデルに対して、中心周波数が1kHzとなるように、サンプリング周波数を50kHzとしたものにしました。

解析の基本となる過渡解析のシミュレーション結果をfig.1-2に示します。


001_20091010201651.png
fig.1: スイッチト・キャパシタ・バンドパスフィルタのスケマティック

002_20091010201651.png
fig.2: 入力電圧(赤) 出力電圧(緑)


fig.2のグラフは、出力電圧が定常状態に入ったあとのものです。
入力電圧の周波数を100Hz,10kHzと変更してシミュレーションしたところ、最初の数msは出力が安定しないようです。


003_20091010201650.png
fig.3: 入力周波数100Hzの出力波形

004_20091010201650.png
fig.4: 入力周波数10kHzの出力波形


このため、交流特性は10ms以降の1周期分のデータに対して処理を適用することにより議論します。

スイッチング回路のAC解析


周波数-ゲイン特性図(ゲイン線図)を書くために、.measと.stepを組み合わせた過渡解析を行います。
ゲインは(出力電圧)/(入力電圧)なので、それぞれの1周期分の実効値を.measで計算します。


005_20091010201221.png
fig.5: スケマティック

006_20091010201650.png
fig.6: 横軸が時間,縦軸が入力電圧波形(赤)と出力電圧波形(緑)

007_20091010201221.png
fig.7: 横軸が周波数,縦軸がゲインで、単位はdB


fig.7がもとめるゲイン線図です。

フィルタ設計ウイザードとの比較


フィルタ設計ウイザードによって得られたゲイン線図をfig.8に示します。
青の破線で書かれたのが理想特性(Nominal)で、緑の実線で書かれたのが実際の回路で予測される特性(Expected)です。


008_20091010201650.png
fig.8: フィルタ設計ウイザードのゲイン線図


これに対して、LTspiceのシミュレーションから得られたfig.7のゲイン線図を画像として重ねたものをfig.9に示します。


009_20091010201220.png
fig.9: フィルタ設計ウイザードとLTspiceのゲイン線図の比較


赤のラインで示したLTspiceのシミュレーション結果は、フィルタ設計ウイザードのゲイン線図と非常によく一致しました。

ただし、よりよく一致したのは残念ながら、緑のExpectedではなく、青のNominalでした。
スイッチト・キャパシタのモデル化の際に、OPアンプやスイッチ、コンデンサ等すべてを理想的な部品としたため、ある意味当然と言えば当然の結果です。
この差を埋めるための要素としては、OPアンプの周波数特性、スイッチのON抵抗、コンデンサの漏れ電流など候補はいくつか考えられそうです。

関連エントリ




付録


このエントリで使用したLTspiceのシミュレーション用ファイルを添付します。ファイル名末尾の".txt"を削除して、"_"を"."に変更すれば使えるはずです。


参考文献




フィードバック



にほんブログ村 その他趣味ブログ 電子工作へ

 ↑ 電子工作ブログランキング参加中です。1クリックお願いします。


コメント・トラックバックも歓迎です。 ↓      


 ↓ この記事が面白かった方は「拍手」をお願いします。


tag: LTspice PSoC スイッチト・キャパシタ スイッチング回路 

comment

Secret

FC2カウンター
カテゴリ
ユーザータグ

LTspiceAkaiKKRmachikaneyamaScilabKKRPSoCOPアンプCPA強磁性PICモンテカルロ解析常微分方程式odeトランジスタecalj状態密度DOSインターフェース定電流スイッチング回路PDS5022半導体シェルスクリプト乱数レベルシフトHP6632A温度解析分散関係I2Cトランジスタ技術R6452A可変抵抗ブレッドボードセミナーバンドギャップ数値積分確率論反強磁性偏微分方程式バンド構造絶縁熱設計非線形方程式ソルバフォトカプラシュミットトリガLEDLM358カオスISO-I2C三端子レギュレータGW近似A/Dコンバータカレントミラーアナログスイッチ数値微分マフィンティン半径TL431発振回路サーボPC817CUSB直流動作点解析74HC4053補間FFTBSch開発環境パラメトリック解析2ちゃんねるチョッパアンプ量子力学bzqlty電子負荷イジング模型LDA標準ロジックアセンブラ基本並進ベクトルブラべ格子単振り子熱伝導位相図TLP621キュリー温度繰り返し状態方程式MaximaVESTAスイッチト・キャパシタ相対論FETランダムウォークスピン軌道相互作用SMP六方最密充填構造抵抗不規則合金ewidthスレーターポーリング曲線GGAラプラス方程式cygwingfortranQSGW失敗談コバルト条件分岐TLP521テスタLM555Writer509TLP552格子比熱マントルデータロガー自動計測詰め回路ガイガー管ダイヤモンドQNAPMCUFXA-7020ZR過渡解析三角波UPSNE555固有値問題熱力学ブラウン運動フェルミ面awk起電力第一原理計算OpenMPfsolveubuntu最大値xcrysden最小値最適化仮想結晶近似VCA差し込みグラフスーパーセル井戸型ポテンシャル平均場近似シュレディンガー方程式FSMフラクタルOPA2277固定スピンモーメント2SC1815全エネルギー合金multiplotgnuplotc/aTeX結晶磁気異方性interp1ウィグナーザイツ胞初期値マンデルブロ集合疎行列面心立方構造fcc不純物問題非線型方程式ソルバフィルタL10構造PGA半金属二相共存SICZnOウルツ鉱構造BaO重積分クーロン散乱磁気モーメント電荷密度三次元CIF岩塩構造CapSenseノコギリ波デバイ模型ハーフメタル正規分布フォノンquantumESPRESSOルチル構造スワップ領域リジッドバンド模型edelt縮退キーボード軸ラベルグラフの分割凡例トラックボールPC不規則局所モーメント片対数グラフトランス両対数グラフCK1026MAS830L直流解析Excel円周率パラメータ・モデルヒストグラム日本語最小二乗法等価回路モデルGimp線種シンボルTS-110TS-112PIC16F785LMC662化学反応文字列specx.f入出力ifortマテリアルデザインヒストグラム確率論Realforce等高線ジバニャン方程式P-10Ubuntuナイキスト線図Crank-Nicolson法陰解法熱拡散方程式HiLAPWAACircuit連立一次方程式負帰還安定性境界条件EAGLEMBE関数フィッティング

最新コメント
リンク

にほんブログ村 その他趣味ブログ 電子工作へ