HAKKO PRESTO No.984-01

先週の話になりますが、今までメインで使っていた半田ごてHAKKO PRESTOを他所に置きっぱなしにすることにしたので、新しく家用の半田ごてを購入することにしました。

折角なので、使ったことのない温調ゴテを試してみようかとも考えたのですが、それは今後に見送って、またHAKKO PRESTOに落ち着きました。
本エントリでは、半田ごて選択に際して考えたことについて書きます。

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○セラミックヒーターとニクロムヒーター
正直に言うと、私には何が違うのかよく分かっていません。
『漏れ電流』とか『絶縁抵抗』とかのキーワードをよく聞きます。

セラミックヒータの半田ごての方が高性能であることは共通認識となっているようで、高級品になりますが、実際に値段を比べてみるとそれほど大きな隔たりがあるというほどでもないので、セラミックヒーター型を選ぶ方が無難でしょう。

○コテ先の熱容量とワット数
半田ごて選択の基本となるのは、コテ先の熱容量とワット数の二つです。
コテ先の熱容量は、コテ先の大きさでほぼ決まると考えて良いとします。半田ごてはコテ先がついた状態で売られているのが普通で、付属しているコテ先の大きさは、半田ごてのワット数に対して適切なものが選んであります。

この観点から行くと、ハンダ付けしたい部品(母材)の大きさ(熱容量)に対して適切なコテ先の大きさ(熱容量)を持ったものを選べば、おおよそうまくいくと言うことになります。

ハンダ付けする部品の大きさが大体同じぐらいのものばかりならば、1本の半田ごてだけですべてカバーできることになります。
パッケージがDIPのICやリード部品の抵抗・コンデンサのハンダ付けがメインになるマイコン関連の電子工作では、20-30W程度の半田ごてを選べばおよそ問題がないと思います。

しかしながら、もう一歩進んだ趣味の電子工作では、チップ部品(熱容量小)、リード部品(熱容量中)、リレーやコネクタ(熱容量大)といったさまざまな熱量量の部品が混在した回路のハンダ付けを行うことになります。特殊な半田ごてを使わずにこれらの部品をハンダ付けする場合、何本かの半田ごてを使い分けるか、何とかだましだましハンダ付けをするかということになります。

○コテ先の温度とワット数・熱容量の関係
冷静に考えれば、ハンダの融ける温度は(ハンダの物性から)決まっているはずです。
温度が低すぎると半田が溶けないことは当然ですが、温度が高すぎてもいわゆる「つのハンダ」になってしまいよくありません。

温度調整機能つきの半田ごては、コテ先温度をハンダの融ける温度になるようにフィードバック制御する機能を持った半田ごてです。

実を言うと、温調でないコテを使った普段のハンダ付けでも、無意識のうちにコテ先のコントロールを(手動で)やっています。
半田ごてのワット数、コテ先の熱容量、コテ先と大気の間の熱抵抗(空気への熱の逃げにくさ)の間には、電流源、コンデンサ、抵抗で構成された回路と似たような関係が見られます。
参考:放熱器の使い方 - ELM

以下に示すのは、半田ごての電源を入れてから温度が平衡に至るまでのモデルを、電流源、コンデンサ、抵抗であらわしLTspiceでシミュレーションしたものです。
単位は適当ですが、電流原が半田ごてのワット数を、コンデンサがコテ先の熱容量を、抵抗がコテ先と空気の熱抵抗を表しています。電圧がコテ先の温度に相当します。GNDが大気温度です。


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fig.1 & 2: コテ先温度の立ち上がりモデル


発生した熱がコテ先の熱容量に蓄積されることにより、温度が次第に上昇しますが、大気との温度差が大きくなると、熱抵抗を通じて放熱される量も大きくなるため、一定の温度で平衡に至ります。この平衡温度がこの半田ごてに出せる温度の上限です。

次に示すのが、熱容量C2、熱抵抗R2をもつ物質に断続的にコテ先を当てたときのコテ先温度と簿材温度の変化を示したものです。


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fig.3 & 4: 断続的にハンダ付けを行うモデル


このC2//R2を水を含んだスポンジだと考えれば、コテ先の温度をハンダ付けに適した温度に下げるための温度調整を行っているところのモデルだと考えることができます。
また、C2//R2という熱容量//熱抵抗をもった部品をハンダ付けしているところだと考えることもできます。

以降のシミュレーションは省略しますが、パラメータをさまざまに変更してみると、コテ先の熱容量が大きい方がハンダ付けする際の温度変化が小さく、ワット数が大きいほど熱回復特性が良い一方で平衡温度が上がる、また、母材の熱抵抗が小さい場合はワット数が大きくないとハンダ付け可能温度に至らない、などということが分かるはずです。

○結論
以上の考察から、コテ先の温度の低下時のみ高いワット数で加熱され、コテ先温度が高いときには自動的にワット数が下がる半田ごてが望ましい、また、コテ先の熱容量は大きい方が温度の変動が少なく望ましい、と言うことが分かります。

具体的な半田ごての理想像に焼きなおすとするならば、最大ワット数が大きい温度調整半田ごてで、コテ先の熱容量が大きな物というところでしょうか。

○コテ先形状
最初に書いたとおり、コテ先の熱容量はコテ先の物理的な大きさによってほぼ決まります。
熱容量を大きく確保しようとすると、必然的に大きなコテ先を選ばなければなりません。
しかしながら、小さい部品を半田付けする際には大きなコテ先は使いづらいです。

比較的大きな熱容量と、小さい部品のハンダ付けのやり易さを両立するコテ先として、円柱形を斜めに切断した形のコテ先が人気があります。私は使ったことがないのですが、機会があったら試そうと思っています。

○わたしがPRESTOを選んだわけ
HAKKO PRESTOは温度調整半田ごてではありませんが、状況に応じてワット数が切り替えられる半田ごてであり、切り替えの幅も大きく、なにより普通の半田ごてとお値段が大差ないところが特徴です。

○関連エントリ


○参考URL




○付録
このエントリで使用したLTspiceのシミュレーション用ファイルを添付します。ファイル名末尾の".txt"を削除して、"_"を"."に変更すれば使えるはずです。


○フィードバック

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tag: LTspice 熱設計 開発環境 

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同じ物をお使いでしたか

びっくり、私も同じはんだごてを愛用しています。

私としては、すぐに作業にとりかかれることと、アマチュア無線をやってる都合で同軸コネクタにはんだ付けをする際に熱量が確保できるので重宝しています。

ただ、静電気に弱い物だけはガス式はんだごて(エンジニアSKM-40)を使用しています。

Re: 同じ物をお使いでしたか

ちださん、おはようございます。
PRESTOは、幅広い用途に使えて便利ですよね。値段も即熱機能の無い普通のセラミックヒータコテと大差ありませんし。

ただ私は、同軸コネクタぐらい大きなものになると、HAKKOのRED No.503(60W)を使っています。10A以上の太い配線やNiMH二次電池に直接ハンダ付けするときなど意外と出番は多いです。

静電気は気にしたことが無いのですが、AC100Vが取れないところでハンダ付けすることもあるので、一応ガス式コテも持ってます。nakajimaのKoteLyzer HANDY PROですが・・・これってOEMでしょうか?SKM-40とそっくりです。
シンプルで使いやすいのですが、私の用途だと、出番が来るのは主に緊急事態のときなので、着火機構付のものにしておけばよかったと少し後悔しています。

手動温調はんだごて

私が使用しているのは、太陽電機産業(goot)の即熱はんだこて(TQ-95)です。ほぼ HAKKO PRESTO と同じ機能のものです。私の周囲に白光よりもgootが多かったのは、地方性もあるのかな?

考えようによっては、「手動温調はんだごて」ですね。最近の問題は、半田ごてよりも無鉛はんだなんじゃなかろうかと考えています。こて先がすぐに痛んでしまって、ケミカルペーストが必要になってしまいます。半田付けする時間よりもこて先を整備する時間の方が長いかもしれない。

会社では、白光のステーション型を使っていました。白光の方が使いやすいんですかね?

# いろいろと試してみたいけど、そうそう何本も買えないのでした。

Re: 手動温調はんだごて

のりたんさん、こんにちは。
私の周囲も一番多かったのは、gootのKSシリーズですね。理由はおそらく安いから。
私がTQ-95ではなくPRESTOを選んだのも、PRESTOの方が安いからだと思います。意識したわけではありませんが。
メーカーに特にこだわりは無いのですが、なぜかHOZANの半田ごてとだけは、相性がよくない私です。

無鉛ハンダは、秋月で扱いだしたころにちょっとだけ使いましたが、全然上手く半田がのってくれなかったのでそれ以来触っていません。アマチュアにとしては、無鉛ハンダとは無縁です(笑)

実を言いますと、先週の秋葉原にて一度はステーション型に手を伸ばしかけたのですが、ふと「半田ごてに1万円以上出すなら、計測器の1つでも増やした方が良いな」と言う考えが浮かんだのでやめました。
やはり、趣味レベルの電子工作でボトルネックとなりうるのは、ハンダ付けの効率ではないでしょうね。
# でも、本当のことを言うとステーション型には男のロマンを感じます。
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