ADCの並列動作 その1

トランジスタ技術2009年1月号に「汎用マイコンで500kHzサンプリングとストレージ動作を実現 8パラAVRでA-D変換するUSBオシロスコープ」という記事があります。このトラ技の記事では、A/Dコンバータを並列動作させることによって、見かけ上サンプリングレートが高速のA/Dコンバータとするというテクニックを使っています。
しかし、ADCの入力回路にはローパスフィルタとしての特性があるため、無制限にサンプリングレートが上げられるわけではありません。

今回は、AVRのA/Dコンバータの入力回路のモデルを作成し、交流解析を行いました。

002_20090111215258.png 003_20090111215326.png


トラ技2009年1月号の8パラAVRオシロスコープ


トランジスタ技術2009年1月号に「汎用マイコンで500kHzサンプリングとストレージ動作を実現 8パラAVRでA-D変換するUSBオシロスコープ」という記事があります。
PICやAVRといったマイコンには、A/Dコンバータモジュールを内蔵したモデルが存在します。しかしながら、これらのA/Dコンバータは変換時間として10us~100us程度を要求するため、高速なサンプリングを行うことができません。

トラ技の「8パラAVRでA-D変換するUSBオシロスコープ」の記事では、A/Dコンバータを持つAVRを8個並列に接続し、位相をずらしてサンプリングすることによりサンプリングレートを高めたUSBオシロスコープの製作を行っています。

この記事に対して私は、次のような疑問を持ちました。
  • ADC並列化による高速化に限度はないのか
  • あるとすれば、いかなる原因であろうか


これらの疑問に答える鍵となるのは、A/Dコンバータの入力部分であるサンプル&ホールド(S/H)回路です。

逐次比較型(SAR)A/Dコンバータ


逐次比較型のA/Dコンバータは、その構造上、変換中にアナログ入力電圧が変動すると正しく変換を行うことができません。そこで、変換の前段に入力電圧を保持するためのS/H回路を持っています。
以下に示すのが、ATmega644Pのデータシートから引用したA/Dコンバータの入力回路です。


001_20090111215235.png
fig.1: AVRのS/H回路


この図から読み取れるとおり、A/Dコンバータの入力回路は(アナログマルチプレクサやサンプリングスイッチの)抵抗とサンプリングコンデンサによって、ローパスフィルタが構成されています。したがって、S/H回路自体が周波数特性を持っていることになります。

また、だいぶ昔のエントリになりますが、PICのA/Dコンバータの入力回路に関しては、A/Dコンバータ その1その2で書きました。参考にしてください。

サンプリングレートと帯域


デジタルオシロスコープの動作速度を表すパラメータとして、サンプリングレートがよく用いられます。一方で、アナログオシロスコープにはサンプリングレートという概念はなく、速度は帯域で表されます。
ところが、デジタルオシロスコープといえど入力段はアナログ回路です。したがって、この入力段の回路にも周波数特性があるはずです。

S/H回路の周波数特性


fig.1で挙げたAVRのデータシート上の入力回路をLTspiceを用いたシミュレーションにかけてみました。


002_20090111215258.png
fig.2: AVRのADC入力段スケマティック


入力端子のバイアス電流源は、信号源の出力インピーダンスが低いとして無視し、サンプリングスイッチは閉じたままという条件で交流解析を行いました。
(シミュレータ上で並列化することを想定して、ボルテージフォロワとアナログマルチプレクサを追加してありますが、今回は特に利用していません。)


003_20090111215326.png
fig.3: 出力電圧(実線)と位相(破線)


上のグラフがサンプリングコンデンサの電圧です。
当然ですが、普通のローパスフィルタです。


004_20090111215334.png
fig.4: サンプリングコンデンサの電圧と入力信号の間の誤差


fig.4は、入力信号と読み取った信号の誤差をあらわしたものです。縦軸はログスケールで単位はVです。

ADCの交流特性


このように、A/Dコンバータの入力回路にも通過可能な帯域が存在します。しかしながら、同時に通常のサンプリングレートによる制約も存在します。
最終的なADCの交流特性は、これら二つの要因のうちより低周波側から主要になる方に制約されるであろうと考えられます。

このため、A/Dコンバータを並列接続することはサンプリングレートの向上には貢献しますが、一方で入力回路自体が変わっていないので、並列数を増やしていくといずれローパスフィルタの帯域の壁にぶつかるだろう事が予想されます。

関連エントリ




付録


このエントリで使用したLTspiceのシミュレーション用ファイルを添付します。ファイル名末尾の".txt"を削除して、"_"を"."に変更すれば使えるはずです。


参考文献




フィードバック



にほんブログ村 その他趣味ブログ 電子工作へ

 ↑ 電子工作ブログランキング参加中です。1クリックお願いします。


コメント・トラックバックも歓迎です。 ↓      


 ↓ この記事が面白かった方は「拍手」をお願いします。


tag: LTspice A/Dコンバータ 

comment

Secret

FC2カウンター
カテゴリ
ユーザータグ

LTspiceAkaiKKRScilabmachikaneyamaKKRPSoCCPAOPアンプPIC強磁性モンテカルロ解析常微分方程式トランジスタodeインターフェース状態密度DOSecalj定電流PDS5022スイッチング回路半導体シェルスクリプト乱数レベルシフトHP6632A温度解析ブレッドボードI2CR6452A分散関係トランジスタ技術可変抵抗確率論数値積分反強磁性セミナー非線形方程式ソルバ絶縁バンドギャップ熱設計偏微分方程式バンド構造GW近似カオス三端子レギュレータLEDフォトカプラシュミットトリガISO-I2CA/DコンバータLM358USBカレントミラーTL431マフィンティン半径PC817C数値微分アナログスイッチ発振回路サーボ直流動作点解析74HC40532ちゃんねる標準ロジックチョッパアンプLDAアセンブラFFTbzqltyイジング模型ブラべ格子開発環境補間量子力学電子負荷BSchパラメトリック解析単振り子基本並進ベクトル熱伝導繰り返しGGAMaximaTLP621ewidthSMP相対論抵抗位相図ランダムウォークスピン軌道相互作用六方最密充填構造不規則合金FETコバルト失敗談QSGWcygwinスレーターポーリング曲線スイッチト・キャパシタラプラス方程式gfortranキュリー温度状態方程式条件分岐格子比熱TLP552LM555TLP521三角波NE555過渡解析FXA-7020ZRWriter509テスタ詰め回路MCUマントルダイヤモンドQNAPデータロガーガイガー管自動計測UPS井戸型ポテンシャルawk第一原理計算仮想結晶近似ブラウン運動差し込みグラフ平均場近似fsolve起電力熱力学OpenMPスーパーセル固有値問題最適化最小値VCAシュレディンガー方程式VESTAubuntu最大値面心立方構造PGAOPA2277L10構造非線型方程式ソルバ2SC1815fccフェルミ面等高線ジバニャン方程式ヒストグラム確率論マテリアルデザイン正規分布結晶磁気異方性interp1フィルタ初期値ウィグナーザイツ胞c/aルチル構造岩塩構造スワップ領域リジッドバンド模型edeltBaOウルツ鉱構造重積分SIC二相共存ZnOquantumESPRESSOCapSensegnuplotmultiplot全エネルギー固定スピンモーメントFSM合金ノコギリ波フォノンデバイ模型ハーフメタル半金属TeXifortTS-110不規則局所モーメントTS-112等価回路モデルパラメータ・モデルヒストグラムExcel円周率GimpトラックボールPC直流解析入出力文字列マンデルブロ集合キーボードフラクタル化学反応三次元Realforce縮退日本語最小二乗法関数フィッティング疎行列シンボル線種ナイキスト線図陰解法負帰還安定性熱拡散方程式EAGLECrank-Nicolson法連立一次方程式P-10クーロン散乱Ubuntu境界条件MBEHiLAPW軸ラベルトランスCK1026MAS830L凡例PIC16F785LMC662AACircuit両対数グラフ片対数グラフグラフの分割specx.f

最新コメント
リンク

にほんブログ村 その他趣味ブログ 電子工作へ