LTspiceで直流解析(DC解析)

アマチュア電子工作でLTspiceを使う場合、「過渡解析(Tran解析)」「直流解析(DC解析)」「交流小信号解析(AC解析)」の3種類のシミュレーションが最もよく使われます。

今回取り上げる直流解析(DC解析)は、電圧や電流をゆっくり変化させたときの回路の挙動を調べるものです。
直感的に言えば、横軸に電圧や電流をとったグラフを書くのが直流解析だと考えればだいたいあってます。現実の回路で言うなら、DC電源とデジタルマルチメータを使う類の計測です。

具体的には、

などのシミュレーションができます。

このエントリの前半は、LTspiceを始めたばかりの初心者の方向けに、直流解析とはどういったものかを解説します。
後半では、すでにある程度LTspiceの直流解析を使ったことがある経験者の方向けに、単純な直流解析ではアプローチできない回路へのヒントとなる(かもしれない)エントリの紹介をしていきます。


基本的な分圧回路のシミュレーション


最初に、回路シミュレータを使うまでも無いような分圧回路についてのシミュレーションを行います。


001_20120513011214.png
fig.1: 分圧回路


fig.1の回路の入力に電圧をかけると、二分の一に分圧された電圧が出力されることが予想され、シミュレーションでも確かにそのようになります。(fig.2)


002_20120513011214.png
fig.2: 分圧された結果


LTspiceでのシミュレーションが初めての方は、まずLTspiceクイック・スタートを実際にやってみてLTspiceの使い方に慣れてください。今回の例では、解析の種類の選択・設定の部分でEdit Simulation CommandウインドウでDC seepを選択します。fig.3は、変化させる電圧源としてV1を指定、電圧を0Vから1Vまで1mVずつ変化させていく設定とした場合です。


003_20120513011214.png
fig.3: 直流解析の設定


『ゆっくり変化させる』とは?


ここまででは、直流解析は電流や電圧をゆっくり変化させる事だと書いてきました。
ゆっくり変化させるというのは、ざっくりと言ってしまうと
  • コンデンサは開放
  • コイルは短絡
として扱う、ということです。

コンデンサには、直流は流れません。また、コイルは直流に対してはただの導線です。
実際にfig.4の様に、分圧回路の出力に10μFのコンデンサを接続した回路のシミュレーションをしてみると、その結果は、コンデンサを接続していないときの結果(fig.2)とまったく同じになることがわかります。


004_20120513011214.png
fig.4: 分圧回路に10μFのコンデンサを追加した回路


一方で、この回路を過渡解析してみると、コンデンサの影響が確認できます。


005_20120513011214.png006_20120513011213.png
fig.5-6: コンデンサを付加した分圧回路の過渡解析


直流解析の結果のように、出力電圧が入力電圧だけで決まるなら出力電圧V(out)は、緑の線で示したようなV(in)/2となるはずですが、シミュレーション結果は、赤の線で示したようになまった波形になります。

従って、過渡解析直流解析ではコイル・コンデンサは回路図に書く意味が無い事がわかります。(2014/05/29訂正)
逆に、コイル・コンデンサの効果をシミュレーションする場合は、直流解析は使えないと言うこともできます。この場合は、過渡解析(tran解析)や小信号交流解析(AC解析)を利用します。

シミュレーションの実例


直流解析の応用例として、ねがてぃぶろぐで以前行ったシミュレーションをいくつか紹介します。

半導体の直流特性


PDS5022Sでカーブトレーサ電気用語は難しい(オームの法則)では、汎用シリコンダイオードの電圧-電流特性のシミュレーションをしました。
以下は、電気用語は難しい(オームの法則)のものです。

002_20100306113832.png

003_20100306113832.png
fig.7-8:ダイオードのシミュレーション


順電圧(横軸)に応じて、順電流やダイオードの抵抗値が非線形に変化していることが読み取れます。(参考:1N4148のデータシート(PDF))

アナログICの直流特性


PICの電源電圧低下でLED点灯しきい値付近で線形増幅器になるコンパレータOPアンプの同相入力電圧範囲とバイアスでは、コンパレータやOPアンプの直流特性についてシミュレーションをしました。
以下は、PICの電源電圧低下でLED点灯で行ったシミュレーションで、電源電圧が低下するとコンパレータの出力がHとなる回路です。

001_20110127235631.png
002_20110127235630.png
fig.9-10: 電源電圧低下の検出回路


fig.10の上のパネルがコンパレータの出力で、電源電圧が2.2Vを下回ると出力がHになるコンパレータ動作をしています。

直流解析(DC解析)できない回路


ここからは、一見すると直流解析でシミュレーションできそうな回路でありながら、直流解析ではうまくいかない回路を一工夫してシミュレーションする方法を紹介します。そのエッセンスは、過渡解析を使うことです。

ヒステリシスコンパレータ


直流解析を利用しない直流解析のひとつ目の例が、時間的に直前の状態を参照するヒステリシスコンパレータ(シュミットトリガ回路)です。
解析の設定のときにDC sweepStart ValueStop Valueの値を逆にすれば、2つのしきい値の値を別々に調べることはできます。しかしながら、2つのしきい値を同時に一つのグラフにプロットすることはできません。

過渡解析においても、横軸を任意のノード(回路図上の好きな場所)の電圧を横軸にとったグラフを書くことができます。(LTspiceのグラフの横軸を変更する)
これを利用して、ひとつのグラフに2つのしきい値を同時に描くことを考えます。


011_20120513011445.png
fig.11: ヒステリシスコンパレータ


まずfig.11の様に、解析したいヒステリシスコンパレータのスケマティックを作成します。このとき、変化させる入力電圧の部分にゆっくり電圧が上昇して、その後、ゆっくり電圧が下降するような信号源を接続します。今回の例では電圧源をPULSEとして使用して、0Vから1秒かけて5Vまで上昇し、その後、1秒かけて0Vまで戻る信号源としました。


012_20120513011444.png
fig.12: 通常の過渡解析の結果


この過渡解析の結果がfig.12です。この段階では、横軸は時間です。
この横軸の時間の部分をクリックすると、fig.13の様なウインドウが立ち上がります。


013_20120513011444.png

014_20120513011444.png

fig.13-14: 横軸のtime(時間)をV(in)(入力電圧)に書き換える


立ち上がったウインドウのQuantity Plottedの部分にかかれたtimeを、横軸にとりたいもの、今回はV(in)に書き換えると(fig.14)、希望したヒステリシス曲線を表示することができます。(fig.15)


015_20120513011444.png
fig.15: ヒステリシス曲線


なんとなく難しいことをやったような印象があるかもしれませんが、実のところ、ゆっくりと変化させるを過渡解析で行っただけです。従って注意点は、その回路にとって充分ゆっくり電圧を変化させることです。

ねがてぃぶろぐでは、シュミットトリガ回路に関するエントリがたくさんあります。



スイッチングを含む回路


スイッチングを含む回路でも直流解析のようなことを行いたい場合があります。
たとえばスイッチングレギュレータのロードレギュレーション等です。

ねがてぃぶろぐでは、チャージポンプ型電源のロードレギュレーションや効率(LTspiceでチャージポンプ負電源)、チョッパアンプの直流特性(汎用OPアンプをチョッピングで高精度化)のシミュレーションを行いました。

これらの場合も、重要な点は過渡解析を使うことですが、シュミットトリガ回路の場合ほど単純ではなく、さらに一捻りとして.measコマンド.stepコマンドを利用します。

以下に示すのは、LTspiceでチャージポンプ負電源にて行った出力電圧-電力変換効率のシミュレーション結果です。


004_20110128034323.png
fig.16: 変換効率のシミュレーション用スケマティック

005_20110128034301.png
fig.17: 出力電流に対する変換効率(%)


.measコマンド.stepコマンドの組み合わせはLTspiceで.meas(実効値,積分値など)にて解説しています。
この組み合わせのシミュレーションは、詰まるところ、スイッチングを含む回路の過渡解析を、条件を変えながら複数回行っているというものです。
スイッチング回路のシミュレーションは、時間がかかります。それをさらに複数回繰り返すということは、それ相応の時間がかかるということがこの方法の欠点です。したがって、ステップの刻み幅などはよく考える必要があります。

関連エントリ




参考URL




付録


このエントリで使用したLTspiceのシミュレーション用ファイルを添付します。ファイル名末尾の".txt"を削除して、"_"を"."に変更すれば使えるはずです。(参考:ねがてぃぶろぐの付録)


参考文献/使用機器




フィードバック



にほんブログ村 その他趣味ブログ 電子工作へ

 ↑ 電子工作ブログランキング参加中です。1クリックお願いします。


コメント・トラックバックも歓迎です。 ↓      


 ↓ この記事が面白かった方は「拍手」をお願いします。

tag: LTspice 直流解析 スイッチング回路 

FC2カウンター
カテゴリ
ユーザータグ

LTspiceAkaiKKRmachikaneyamaScilabKKRPSoC強磁性OPアンプPICCPA常微分方程式モンテカルロ解析ecaljodeトランジスタ状態密度インターフェースDOS定電流スイッチング回路PDS5022半導体シェルスクリプトレベルシフト乱数HP6632AR6452AI2C可変抵抗分散関係トランジスタ技術ブレッドボード温度解析反強磁性確率論バンドギャップセミナー数値積分熱設計非線形方程式ソルババンド構造絶縁偏微分方程式ISO-I2CLM358フォトカプラ三端子レギュレータカオスLEDシュミットトリガGW近似A/Dコンバータ発振回路PC817C直流動作点解析USBマフィンティン半径数値微分アナログスイッチTL43174HC4053カレントミラーサーボ量子力学単振り子チョッパアンプ補間2ちゃんねる開発環境bzqltyFFT電子負荷LDAイジング模型BSch基本並進ベクトルブラべ格子パラメトリック解析標準ロジックアセンブラ繰り返し六方最密充填構造SMPコバルトewidthFET仮想結晶近似QSGW不規則合金VCAMaximaGGA熱伝導cygwinスレーターポーリング曲線キュリー温度スイッチト・キャパシタ失敗談ランダムウォークgfortran抵抗相対論位相図スピン軌道相互作用VESTA状態方程式TLP621ラプラス方程式TLP552条件分岐NE555LM555TLP521マントル詰め回路MCUテスタFXA-7020ZR三角波過渡解析ガイガー管自動計測QNAPUPSWriter509ダイヤモンドデータロガー格子比熱熱力学awkブラウン運動起電力スーパーセル差し込みグラフ第一原理計算フェルミ面fsolve最大値xcrysden最小値最適化ubuntu平均場近似OpenMP井戸型ポテンシャルシュレディンガー方程式固有値問題2SC1815結晶磁気異方性OPA2277非線型方程式ソルバTeXgnuplot固定スピンモーメントFSMPGAc/a全エネルギーfccフラクタルマンデルブロ集合正規分布縮退初期値interp1multiplotフィルタ面心立方構造ウィグナーザイツ胞L10構造半金属二相共存SICZnOウルツ鉱構造BaO重積分クーロン散乱磁気モーメント電荷密度化学反応CIF岩塩構造CapSenseノコギリ波デバイ模型ハーフメタルキーボードフォノンquantumESPRESSOルチル構造スワップ領域リジッドバンド模型edelt合金等高線線種凡例シンボルトラックボールPC軸ラベルグラフの分割トランス文字列CK1026MAS830L直流解析Excel不規則局所モーメントパラメータ・モデル入出力日本語最小二乗法等価回路モデルヒストグラムGimp円周率TS-110TS-112PIC16F785LMC662三次元specx.fifortUbuntu疎行列不純物問題Realforceジバニャン方程式ヒストグラム確率論マテリアルデザインP-10境界条件連立一次方程式熱拡散方程式AACircuitHiLAPW両対数グラフ片対数グラフ陰解法MBEナイキスト線図負帰還安定性Crank-Nicolson法EAGLE関数フィッティング

最新コメント
リンク

にほんブログ村 その他趣味ブログ 電子工作へ