LTspiceでトランス式チョッパアンプ

はじめてのトランジスタ回路設計で紹介されている個別半導体とトランスを組み合わせたチョッパアンプのシミュレーションをLTspiceを用いて行いました。

001_20110416083655.png 002_20110416083655.png


直流信号を交流変調してから増幅、復調すると増幅器の直流オフセットの影響をキャンセルすることが出来ます。汎用OPアンプをチョッピングで高精度化では、入力オフセット電圧の小さくない単電源OPアンプとマイコンを組み合わせることにより、微小直流信号を高精度にA/D変換するシミュレーションを行いました。

はじめてのトランジスタ回路設計には、個別半導体とサンスイのトランス2つ(ST-23,ST-71)を組み合わせたチョッパアンプの回路図とSPICE用のネットリストが載っています。

今回のエントリでは、このネットリストを読み取りLTspiceでシミュレーションを行いました。

モデルパラメータ


トランスの等価回路図は、はじめてのトランジスタ回路設計の値をそのまま用いました。
LTspiceでトランスを表現するためには、インダクタを2つ組み合わせて利用します。
コイルの結合係数はSPICE directiveで指定します。結合係数が正しく設定されると、回路図上のインダクタのシンボルにまき線方向を示す"○"印が付くはずです。(ただし、トランスではない普通のコイルにもまき線方向を示す"○"印をつける設定にすることも出来ます。)トランスのシミュレーションのサンプルは、LTspiceに標準で付属しています。LTspiceをインストールしたフォルダの中の/examples/Educationalフォルダの中を見てください。(Transformer.asc と Transformer2.asc)

JFETのモデルパラメータもオリジナルのネットリストと変更していません。
2SA1015を2石つかって構成した交流増幅回路は、はじめてのトランジスタ回路設計では、(計算時間短縮のため)OPアンプのモデルを使って簡素化してありましたが、(いまのPCの性能なら計算能力に関しては全く問題が無いと思われるので)回路図そのままをシミュレーションしました。2SA1015のモデルの代わりに2N3906のモデルを利用しました。(参考:LTspiceの標準デバイスでまにあわせる)

シミュレーション結果


以下にシミュレーション結果を示します。


001_20110416083655.png
fig.1: トランス式チョッパアンプのスケマティック

002_20110416083655.png
fig.2: 過渡解析結果


LTspiceによるシミュレーション結果は、(当然ながら)はじめてのトランジスタ回路設計で行われているシミュレーション結果と(ほぼ)同じ挙動となりました。

関連エントリ




付録


このエントリで使用したLTspiceのシミュレーション用ファイルを添付します。ファイル名末尾の".txt"を削除して、"_"を"."に変更すれば使えるはずです。(参考:ねがてぃぶろぐの付録)


参考文献/使用機器




はじめてのトランジスタ回路設計は絶版ということですが、CD-R版が購入できるようです。(Simさん情報ありがとうございます。)

また、同じ黒田徹著の実験で学ぶトランジスタ・アンプの設計―1~11石の増幅回路を組み立てながら… (Analogue Master Series)トランジスタ技術 2006年 7月号の特集記事をもとに再編集したものということですが、実質的にはじめてのトランジスタ回路設計の後継本です。トラ技の連載と内容が大きく変わっていないならば、シミュレーションだけではなく、パソコンを計測器として実回路の特性を測定する方法にも触れているはずです。
その代わり、おそらく本エントリでシミュレーションしたトランス式チョッパアンプの回路は載っていないと思います・・・。

フィードバック



にほんブログ村 その他趣味ブログ 電子工作へ

 ↑ 電子工作ブログランキング参加中です。1クリックお願いします。


コメント・トラックバックも歓迎です。 ↓      


 ↓ この記事が面白かった方は「拍手」をお願いします。

tag: LTspice スイッチング回路 トランジスタ チョッパアンプ トランス 

実用電源回路設計ハンドブック ほか

東日本大震災による福島の原発事故に関連して、趣味の電子工作業界では、自作ガイガーカウンターに注目が集まっています。

また、今後の電力不足にそなえて、無停電電源装置(UPS)の存在が話題に上がることも多くなったように感じます。

思い立ったが吉日ということで、以前からチェックしていた戸川 治朗著実用電源回路設計ハンドブック ハードウェア・デザイン・シリーズを購入しました。どうせ私は作りはしないのですが・・・

第7章に無停電電源装置の設計法が解説されています。




UPSについて


実のところ、個人レベルで購入できるパソコン用のUPSは、不意の電源時にPCを安全にシャットダウンするための時間を稼ぐといった程度の使用を想定しているので、停電時にバリバリPCを動かす用途には使えません。

もしも、不意の停電ではなく、計画停電に備えるという意味でなら、あらかじめPCをシャットダウンしておけばよいだけなので、UPSは必要ないと思います。
不意の停電対策としては、ありうるかもしれませんが。

実を言うと、以前、使っていたものが最近壊れたため、新しいのを購入しようと思っていたところでの地震でした。
今購入すると、計画停電対策みたいに見えてちょっと嫌な感じなのですが、仕方ないのかもしれません。

個人利用でならテーブルタップ型が使い易かったです。



電源回路は、基礎にして奥義


(計画)停電の話題はさて置くとしても、電子工作において、電源回路の設計は、避けて通れないものです。マイコン入門の課題としてよく用いられるLED点滅だけでも、電源は絶対に必要です。

そんなわけで、電源回路の設計は電子工作の基礎の一角を担っているわけですが、その実、電子回路設計の中でもとりわけ奥が深いものでもあります。

私は、以前からスイッチング動作を含むアナログ回路が、趣味の電子工作の技術面においては一番面白いのではないかと考えてきましたが、そういう意味でもスイッチング電源は最高峰だと思います。

スイッチング回路設計をしたことのある友人から、改訂 スイッチング・レギュレータ設計ノウハウ―すべての疑問に応えた電源設計 現場技術者実戦シリーズが良書であると薦めてもらったのですが、積読状態です。

また、トランジスタ技術の連載をまとめた電源回路設計 成功のかぎ―要求仕様どおりの電源を短時間で設計できる (アナログ・デザイン・シリーズ)が出版されて既に結構たっていますが、私はまだ購入してません。これも良書だと聞いています。




フィードバック



にほんブログ村 その他趣味ブログ 電子工作へ

 ↑ 電子工作ブログランキング参加中です。1クリックお願いします。


コメント・トラックバックも歓迎です。 ↓      


 ↓ この記事が面白かった方は「拍手」をお願いします。

tag: スイッチング回路 トランジスタ技術 三端子レギュレータ 

LMC662で試作チョッパアンプ

汎用OPアンプをチョッピングで高精度化の方法を用いて、実測で約440μVの入力オフセット電圧を持つLMC662を低オフセット化する実験を行いました。このチョッパアンプのオフセット電圧の測定をしたところ、約55μVとなり、実際にオフセット電圧が小さくなっていることが確認できました。

004_20110328022019.png 005_20110328022019.png



LTspiceでのシミュレーション


汎用OPアンプをチョッピングで高精度化では、PICなどのマイコンと組み合わせることによって(オフセットの小さくない)汎用OPアンプを利用して、微小電圧の高精度測定を行うシミュレーションを行いました。


003_20110306112150.png
fig.1: マイコン利用チョッパアンプのスケマティック

005_20110306134701.png
fig.2: 入力電圧-出力電圧特性。横軸が入力電圧で、縦軸が出力電圧。赤で示したラインがチョッパ増幅器の出力電圧を表していて、緑が理想的な出力電圧をあらわしています。


その結果、5mVの入力オフセット電圧を持つOPアンプでも0-25mV程度の微小電圧を測定することができることがわかりました。
そこで今回は、現実のOPアンプでもシミュレーション通り低オフセット化が実現できるのかを確認するために、単電源OPアンプLMC662を対象に実験を行いました。

回路構成


利用した回路の概念図をfig.3に、もう少し詳細な回路図をfig.4に示します。


003_20110328022007.png
fig.3:測定回路の概念図

004_20110328022019.png
fig.4:ChopAMPの詳細な回路図


制御用のPICマイコンは8ピンのPIC12F683を利用しました。
基準電圧源には、鈴商で購入したLM4040で作成した4.096Vを利用しました。
A/D変換後のデータは、シリアル通信で(別のPICに接続した)キャラクタLCDに表示しました。
被測定用の微小電圧は、5mΩの抵抗(ミリオーム抵抗 前編)に0-5Aの電流を流すことによって生成しました。電源はHP6632Aシステム電源、電流とシャント電圧の測定はR6452Aデジタルマルチメータを利用しました。

測定結果


測定結果をfig.5に示します。


005_20110328022019.png
fig.5: マイコン利用自作チョッパアンプの測定結果


緑の十字シンボルが実測値で、赤のラインは測定値を線形フィッティングしたものです。

Vout = a * Vin + b
(Vout: 出力電圧, Vin:入力(シャント)電圧, a:ゲイン, b:出力オフセット電圧)

フィッティングの結果から a=102.129, b=0.0055435 という値が得られました。
従って、入力換算オフセット電圧が約55μVと求められました。

通常の差動増幅回路との比較


比較のために同じ個体のLMC662で通常のゲイン100倍の差動増幅回路を構成し、フィッティングから入力換算オフセット電圧を計算したところ440μVとなりました。

もともと入力オフセット電圧の低い個体だったようですが、それでも入力オフセット電圧の影響が、チョッピングによって改善されていることがわかります。

四端子法の必要性に対する補足


ただし、ミリオーム抵抗 後編での考察の通り電流測定を行う際には、正しい四端子測定を行わないと測定値が正しく得られません。

そういった意味では、今回のチョッパアンプは、シャント抵抗のプラス側とマイコンのGND端子の間の電圧を測定していることになるので、四端子測定とは言えません。
技術奴隷さんの指摘の通り、入力側のチョッピングは外付けスイッチを用意した方がよさそうです。

一方で、R6452Aデジタルマルチメータは、fig.3に示したとおりちゃんと四端子測定になるように接続してしまったので、今回のチョッパアンプの出力と直接比較することは、厳密に言うならば、できないということになります。

関連エントリ




付録


このエントリで使用したBsch3V形式回路図ファイルとチョッパアンプの測定データを添付します。回路図は、ファイル名末尾の".txt"を削除して、"_"を"."に変更すれば使えるはずです。



参考文献/使用機器




フィードバック



にほんブログ村 その他趣味ブログ 電子工作へ

 ↑ 電子工作ブログランキング参加中です。1クリックお願いします。


コメント・トラックバックも歓迎です。 ↓      


 ↓ この記事が面白かった方は「拍手」をお願いします。

tag: PIC OPアンプ スイッチング回路 チョッパアンプ 2ちゃんねる HP6632A R6452A 

FC2カウンター
カテゴリ
ユーザータグ

LTspiceAkaiKKRmachikaneyamaScilabKKRPSoC強磁性OPアンプPICCPA常微分方程式モンテカルロ解析ecaljodeトランジスタ状態密度インターフェースDOS定電流スイッチング回路PDS5022半導体シェルスクリプトレベルシフト乱数HP6632AR6452AI2C可変抵抗分散関係トランジスタ技術ブレッドボード温度解析反強磁性確率論バンドギャップセミナー数値積分熱設計非線形方程式ソルババンド構造絶縁偏微分方程式ISO-I2CLM358フォトカプラ三端子レギュレータカオスLEDシュミットトリガGW近似A/Dコンバータ発振回路PC817C直流動作点解析USBマフィンティン半径数値微分アナログスイッチTL43174HC4053カレントミラーサーボ量子力学単振り子チョッパアンプ補間2ちゃんねる開発環境bzqltyFFT電子負荷LDAイジング模型BSch基本並進ベクトルブラべ格子パラメトリック解析標準ロジックアセンブラ繰り返し六方最密充填構造SMPコバルトewidthFET仮想結晶近似QSGW不規則合金VCAMaximaGGA熱伝導cygwinスレーターポーリング曲線キュリー温度スイッチト・キャパシタ失敗談ランダムウォークgfortran抵抗相対論位相図スピン軌道相互作用VESTA状態方程式TLP621ラプラス方程式TLP552条件分岐NE555LM555TLP521マントル詰め回路MCUテスタFXA-7020ZR三角波過渡解析ガイガー管自動計測QNAPUPSWriter509ダイヤモンドデータロガー格子比熱熱力学awkブラウン運動起電力スーパーセル差し込みグラフ第一原理計算フェルミ面fsolveCIFxcrysden最大値最小値ubuntu最適化平均場近似OpenMPシュレディンガー方程式固有値問題井戸型ポテンシャル2SC1815TeX結晶磁気異方性OPA2277非線型方程式ソルバフラクタルFSM固定スピンモーメントc/agnuplotPGA全エネルギーfccマンデルブロ集合縮退正規分布キーボード初期値interp1multiplotフィルタ面心立方構造ウィグナーザイツ胞L10構造半金属二相共存ZnOウルツ鉱構造BaOSIC重積分磁気モーメント電荷密度化学反応クーロン散乱岩塩構造CapSenseノコギリ波デバイ模型ハーフメタルRealforceフォノンquantumESPRESSOルチル構造スワップ領域リジッドバンド模型edelt合金等高線凡例軸ラベル線種シンボルトラックボールグラフの分割MAS830LPIC16F785トランス入出力CK1026PC直流解析パラメータ・モデル等価回路モデル不規則局所モーメント関数フィッティング日本語ヒストグラムTS-112ExcelGimp円周率TS-110LMC662片対数グラフ三次元specx.fifortUbuntu文字列疎行列不純物問題ジバニャン方程式ヒストグラム確率論マテリアルデザインP-10境界条件連立一次方程式AACircuit熱拡散方程式HiLAPW両対数グラフ陰解法MBEナイキスト線図負帰還安定性Crank-Nicolson法EAGLE最小二乗法

最新コメント
リンク

にほんブログ村 その他趣味ブログ 電子工作へ