LTspiceで超音波距離計

超音波距離計カテゴリでLTspiceをもちいた超音波距離計のシミュレーションをしてきました。
今回のエントリでは、これらをまとめて回路全体のシミュレーションを行いました。

その結果、超音波距離計の検出可能限界距離は送信パルス数の影響を強く受けることが分かりました。
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超音波距離計のシミュレーション


これまで、計7回にわたって超音波距離計のLTspiceによるシミュレーションを行ってきました。(超音波距離計カテゴリ)

今回は、これらをまとめて超音波距離計のすべての回路を接続した状態でのシミュレーションを行います。

標準デバイスでまにあわせ


LTspiceの標準デバイスでまにあわせるの考え方をもとに受信回路の過渡解析で利用した素子モデルのうち、外部のサイトから入手しなければならないモデルをLTspice標準で持っているものに置き換えました。

オーディオ用Opamp:NJM4580
LTspice標準のUniversalOpamp2に置き換え、オープンループゲイン・利得帯域幅積・スルーレートなど交流動作時に影響が大きそうなパラメータをNJM4580データシートを参考に入力しました。(参考:PSpiceによるOPアンプ回路設計)
小信号SBD:1SS106
深く考えずにLTspiceに標準でインストールされている小信号ショットキーバリアダイオードから選びました。もっといい選択肢があるかも。
コンパレータ:LM393
コンパレータは単純な電圧制御スイッチと考えて、そのモデルを用いました。(参考:LTspiceでビヘイビア電源ほか)


検出限界付近のシミュレーション


LTspiceを用いた超音波距離計の典型的なシミュレーション結果をfig.1-2に示します。


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fig.1: 超音波距離計のスケマティック(800x600)

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fig.2: 応答波形(800x600)


超音波距離計の最大検出可能距離は、最終段のコンパレータの出力V(logic)がLになるかならないかの間に境界があります。したがって、距離以外のパラメータをスイープしたときに検波後の波形V(d2out)の出力電圧が最大となる回路定数を選んだときが、超音波距離計の性能が最もよくなるということになります。

送信パルス数の影響


超音波距離計 第六回:送信パルス数では、超音波送信素子単体に関して送信パルス数をスイープしたシミュレーションを行いました。

本エントリで、送受信を含めた超音波距離計全体のスケマティックをかいたので、これに対して送信パルス数をスイープしたシミュレーションを行いました。
さらに.measコマンドを使い、パルス数に対して検波後のピーク電圧がどのように変化するかを調べました。(参考:LTspiceで.meas(実効値,積分値など))


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fig.3: パルス数のスイープ(800x600)

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fig.4: 応答波形

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fig.5: パルス数に対する検波後の最大電圧


シミュレーション結果は少し意外なことに、送信パルス数が10~11パルスあたりで検波後の電圧V(d2out)が最大をとり、さらにパルス数を増やすと、逆に測定可能距離が減り、15パルス以上では変化しなくなるというものでした。

現実の超音波距離計でも送信パルス数は測定可能距離に対して、影響が大きいパラメータかもしれません。

関連エントリ



付録


このエントリで使用したLTspiceのシミュレーション用ファイルを添付します。ファイル名末尾の".txt"を削除して、"_"を"."に変更すれば使えるはずです。(参考:ねがてぃぶろぐの付録)


参考文献/使用機器




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tag: LTspice 

超音波距離計 第七回:受信素子の駆動モデル

LTspiceでビヘイビア電源ほかで紹介した電流制御電流源を用いて、超音波受信素子を電流駆動するシミュレーションをLTspiceにて行いました。

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パルス数の限界


超音波距離計 第六回:送信パルス数にて送信パルス数を増加させていくと、やがて計測上限距離が伸びなくなる限界に達するのではないかという予想を立てました。


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fig.1: パルス数と距離の関係の予想


送信素子は共振回路であり、パルス数に対する送信強度は複雑に変化します。
そこで送信波形に対応した波形をもつ電源で受信素子を駆動する必要があります。

電流制御電流源でモデル化


基本的な考え方は、送信素子の抵抗成分で消費される電流と同じ電流波形で受信素子を駆動するというものです。
距離が離れるほど超音波のエネルギーが減衰するため、定性的ではありますが、増幅率を変化させることにより距離の変化も見ることもできると思います。

超音波送信素子のSPICEモデルは、超音波距離計 第四回:超音波素子の等価回路でモデル化を行ったものを、送信素子の駆動回路は第五回:ドライバの出力抵抗でモデル化したものを利用しました。

シミュレーション結果


以下に送信素子と受信素子の間にLTspiceでビヘイビア電源ほかで紹介をした電流制御電流源をはさんだシミュレーションの結果を示します。


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fig.2: 受信素子のスケマティック

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fig.3: シミュレーション結果


実測との比較はやっていない


本来ならここで素子の応答波形を実測して、シミュレーション結果との比較を行うことによりモデル化の妥当性を検証すべきなのですが、手元に使える素子が無いのでやりません。

したがって、どの程度正しいのかはちょっと自信がありません。

超音波距離計に関する連載では、すべてLTspiceによるシミュレーションだけで話を進めているので、折角なので最後まで実測無しで進めてみようかなと思います。

関連エントリ




付録


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tag: LTspice 定電流 

超音波距離計 第六回:送信パルス数

超音波素子の等価回路のSPICEモデルを用いて、超音波距離計の測定用送信パルスの数を変化させたときの出力エネルギーの変化をLTspiceを用いた過渡解析から調べました。

その結果、定常状態へ至るまえにオーバーシュート様の消費電力ピークが見られ、此処まで到達するためには30程度の送信パルスが必要であることがわかりました。
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送信パルス数と計測距離の関係


超音波距離計 第五回:ドライバの出力抵抗では、超音波送信素子での消費電力に対するドライバの出力抵抗の影響を調べ、影響があまり大きくないことが分かりました。

一方で、計測可能距離に大きく影響するパラメータとして、ドライバの送信パルス数が知られています。
基本的には送信パルス数を増やす方が、最大計測可能距離が増します。しかしながら、実際の測定距離が短いときに過剰に長くパルスを送信すると、反射波が到達するときにまだ送信を続けていて、送信波形の回り込みと反射波の見分けが付かなくなるという問題もあります。
そこで秋月距離計では、3m以下を測定する場合は5パルス程度、10mまで測定することを目標にする場合は、30パルス程度を送信するしようとなっているようです。

今回のエントリでは、LTspiceを用いた過渡解析からパルス数と送信素子における消費電力の関係をシミュレーションしてみます。

シミュレーション結果


シミュレーションしたパルス数は、秋月超音波距離計に倣って5パルス・30パルス・1000パルス(実質的に無限)としました。fig.1-2にシミュレーションのスケマティックとR1での消費電力を示します。


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fig.1: ドライブ回路のスケマティック

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fig.2: パルス数による送信出力の変化


過渡解析では、共振が安定するまでに消費電力の激しいオーバーシュートが見られます。
5パルスではオーバーシュートの頂点まで達しませんが、30パルスは頂点まで達していますが、波形が安定するまでは至っていません。

パルス数と測定可能領域


パルス数を増していっても、いずれ出力強度が安定する定常状態へと達します。
一方で、受信回路の過渡解析における検波回路の出力もパルス数に応じて出力電圧が上昇した後に安定するという挙動を示しています。
したがって、パルス数を増して行ってもいずれかの時点で測定可能距離が増加しなくなることが予想されます。
このことを、模式的に表したのがfig.3のピンクのラインです。星型のシンボルで表したのが測定可能距離が飽和するパルス数です。


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fig.3: パルス数-測定距離特性による測定可能領域


ピンクのラインに加えて、反射による測定距離の下限を考慮すると、超音波距離計の測定可能距離は定性的にピンクと青のラインに囲まれた領域となることが分かります。
マイコン制御で広い測定可能領域をもつ超音波距離計を作成するならば、測定距離に応じて送信パルス数を可変するアルゴリズムを取り入れるのが効果的でしょう。

反射による下限のラインは定量的に引くことができるので、問題は計測可能距離が飽和する星型のシンボルであらわした点の送信パルス数です。

関連エントリ




付録


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tag: LTspice 

超音波距離計 第五回:ドライバの出力抵抗

超音波素子の等価回路でモデル化した超音波送信回路のLTspiceシミュレーションから、ドライバの出力抵抗が送信強度に与える影響を調べました。
その結果、200Ωの出力抵抗に対しても出力強度は1割り程度しか減衰しないことが分かりました。

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超音波素子の等価回路で、超音波素子のSPICE等価回路モデルをかきました。今回は、送信用ドライバの出力抵抗が、出力エネルギーに与える影響をLTspiceを利用してシミュレーションします。

出力抵抗ゼロのときの駆動電流


秋月電子通商の超音波デジタル距離計キットでは、その出力ドライバにCMOS4000シリーズの4069を並列にしたものを用いています。


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fig.1: 秋月超音波距離計の出力ドライバ


4000シリーズの標準ロジックが利用されているのは、74HCシリーズなどと比較して高い電源電圧で使える(≒送信強度を上げられる)ためだとおもいます。
このときの出力抵抗をゼロと仮定して、電源電圧VDD=9Vで駆動したときの定常状態におけるシミュレーション結果をfig.2-3に示します。


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fig.2-3: 出力抵抗ゼロのときの電流波形


スパイク状の電流部分を除いて、およそ4mAp-0の正弦波となっていることが分かります。

4000シリーズの出力抵抗


CMOS4050の出力抵抗にて、4050の出力抵抗の測定を行いました。


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fig.4: 4050の出力抵抗


その結果、電源電圧VDD=9Vで、出力電流が~10mA以下の領域では、出力抵抗が定抵抗的な振る舞いをすることが分かりました。
秋月超音波距離計で使用されているドライバは同じ4000シリーズの4069なので、特性が比較的似ているはずです。


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fig.5: 4069の出力電流特性

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fig.6: 4050の出力電流特性


東芝セミコンダクタ4000シリーズCMOSロジックIC一覧表から4069と4050の出力電流特性の項目を比較したところ、電源電圧VDD=10Vで25℃のときの出力電圧降下ΔV=0.5Vという(実際の超音波距離計の使用条件に近い)条件における出力電流は、4069でIoh=-2.2mA,Iol=3.2mAと4050のIoh=-2.5mAと近い値でありました。

したがって今後のエントリでは、9V動作時の4069の出力抵抗は測定した4050の特性と近いと仮定します。
fig.4より、出力電流が4mA以下の領域では、出力抵抗は定抵抗的であり、バッファ1個あたりでおよそ200Ωです。これを2並列・2直列として、トータルで(200//200)+(200//200)=200Ωの出力抵抗としてモデル化します。

出力抵抗による出力強度への影響


超音波素子の等価回路での考察から、R1における消費電力が超音波の送信強度の指標となると考えます。
出力抵抗の効果を見るために、0Ω(1mΩ),100Ω,200Ωと出力抵抗のパラメータをスイープしてシミュレーションを行いました。


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fig.7-8: 送信強度に対するドライバの出力抵抗の影響


赤・緑・青の順に出力抵抗が大きくなります。
200Ωのときの出力抵抗の存在は、定性的に送信強度を1割り程度小さくすることが分かります。
最も重要な問題は、このR1における消費電力の変化が、現実の測定可能距離に対してどの程度の影響を与えるかという点ですが、それは残念ながらシミュレーションだけから判断するのは難しいでしょう。

しかしながら、私には、200Ωという直感的に言って大きく感じられる出力抵抗と比較して、受ける影響が小さいと感じられました。

関連エントリ




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超音波距離計 第四回:超音波素子の等価回路

超音波送信・受信素子を抵抗、コイル、コンデンサの組み合わせで表した等価回路を用いて、LTspiceによるシミュレーションを行い、その周波数特性の確認を行いました。
その結果、送受信感度が高くなる周波数範囲は、狭そうだという予想が立ちました。

また、等価回路中の抵抗成分における消費電力が、超音波送信強度の評価基準になるのではないかと予想しましたが、うまく説明できませんでした。
暫定的に、周波数を固定した条件では、抵抗成分における消費電力が送信強度の指標になると考えることにしました。

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受信感度と送信強度


計測距離を伸ばす方法は、大雑把に言うと受信感度を上げる方法と、送信強度を増す方法の2通りがあります。

第二回第三回と超音波距離計の受信回路のシミュレーションを行ってきました。

今回と次回は、送信素子およびそのドライブ回路をLTspiceでシミュレーションすることにより、どうすれば送信強度を上げることができるかについて考えます。

超音波送信・受信素子のSPICE等価回路モデル


日セラの超音波発振素子T40-16のデータシートによると、水晶発振子などと同様に抵抗・インダクタ・コンデンサの回路網を用いて等価回路をかくことができます。
fig.1のL1+C1+R1//C2で表した部分が超音波素子の等価回路です。


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fig.1: 超音波送受信素子の等価回路

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fig.2: 周波数特性


トランジスタ技術2006年1月号によると、送信強度が最高になる周波数は直列共振周波数であるfsのとき、受信感度が最高になるのは並列共振周波数であるfpのときです。
送信素子と受信素子の特性をわずかにずらして設計することにより、送信素子のfsと受信素子のfpが40kHz前後で一致するように作られています。

送信強度の相対的評価


さて、次にどのような条件下で超音波の送信強度が最大になるかを回路シミュレーションからどのように評価するかを考えたいと思いますが、実を言うと、此処こそが私が2008年からずっと引っかかっていて、更新ができなかったところでもあり、現時点でもよく分からないので、悩んでいるところです。

私は、次のように考えました。
常識的に考えれば、素子から外部へ放出される超音波のエネルギーは、等価回路中で消費されなければなりません。ここで、RLC回路網の中のキャパシタンス成分やインダクタンス成分は電力を消費しないため、外部に放出される超音波のエネルギーは抵抗成分で消費されるようにモデル化されるはずです。等価回路モデルの中で抵抗成分はR1しかないのでこの抵抗における消費電力が最大になるとき(≒消費電流が最大になるとき)が送信強度が最大になるのではないか、と。


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fig.3-4: 共振周波数とR1の消費電流が最大となる周波数


しかしながら結果は予想と反して、fig.3-4に示したとおり、抵抗R1の消費電流が最大となるのは、送信強度が最大となるはずの直列共振周波数fsよりも、むしろ並列共振周波数fpに近い周波数となりました。

次回以降に向けて


等価回路のSPICEシミュレーションからは、fsが最大強度となる周波数であることが確認できませんでした。
ただ、いずれにせよ、周波数を固定した場合の送信強度は、R1における消費電力が大きい方が大きくなるはずと考えて次回のエントリを進めようと思います。

また、送信・受信素子ともに40kHz付近における特性は周波数の変化に応じて激しく変化するため、送信強度や受信感度がもっともよくなる周波数帯域はかなり狭いのではないかとも予想できます。

関連エントリ




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