LTspiceでチャージポンプ負電源

見城尚志著電子回路入門講座よりチャージポンプ型の負電源回路のシミュレーションをLTspiceで行い、負荷電流の増大にともない出力電圧が降下し、リプル電圧が増える様子を確認しました。この場合の電力の変換効率は、最大でも50%程度であり、DCDCコンバータとしてはかなり低い方です。

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簡単な負電源の必要性


マイコン回路などの単電源で動作させることが多い回路であっても、2-3個のOPアンプを利用したい場合はよくあります。
こういった場合は、単電源OPアンプを利用することになるかと思いますが、単電源OPアンプは、各種のパラメータで両電源OPアンプに劣っている場合が多いですしGND付近での非線形性など、単電源であることに起因する問題も存在します。

要求される出力電流が小さい場合、簡易的な負電源を用意する方が手間が化からない事も多いです。
手軽にn倍電圧やn倍負電圧を用意する方法として、チャージポンプ型(スイッチトキャパシタ方式、コッククロフト・ウォルトン回路とも)の電源が挙げられます。
今回のエントリでは、見城尚志著電子回路入門講座のP339よりNE555を用いた負電圧発生回路をLTspiceを用いてシミュレーションします。

ロードレギュレーション


ダイオードのモデルには1N4148を用いました。

負荷電流を0-60mAまで変化させたときに、出力電圧やその変動がどのようになるかをシミュレーションしました。
以下にLTspiceによる結果を示します。


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fig.1: チャージポンプ負電源のスケマティック

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fig.2: 出力電圧波形

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fig.3: 出力電流に対する出力電圧、及び、出力電圧変動


fig.2に示したのが、それぞれの出力電流における出力電圧波形をプロットしたものです。

これを、LTspiceで.meas(実効値,積分値など)の方法を使って、分かり易くプロットしなおしたものがfig.3です。横軸に出力電流をとっています。
赤のラインで示したのが、出力電圧の絶対値です。理想的には12Vとなるはずですが、出力電流が大きくなるにつれて電圧降下が起こっていることが確認できます。
このグラフに関しては、電子回路入門講座に実測データが示されています。比較を行ったところ、LTspiceのシミュレーション結果の方が現実の回路よりも優れた特性を示しているため、実際に製作する場合は充分に余裕を持った設計をする必要があります。

同様に、出力電圧の変動(リプル)をピークtoピークでプロットしたのがfig.3の緑のラインです。出力電流が大きくなるほどリプルも大きく、ノイジーになっていることが分かります。

変換効率


LTspiceで.meas(実効値,積分値など)の方法を使い、入出力間の変換効率を求めました。


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fig.4: 変換効率のシミュレーション用スケマティック

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fig.5: 出力電流に対する変換効率(%)


変換効率は、最大でも50%程度となっており、DCDCコンバータとしては極めて悪い値です。

アプリケーション例


チャージポンプ式電源は、電力を取り出すための電源回路としては必ずしも優れているわけではありませんが、簡単に高い電圧を作り出すことができるという点では優れています。

応用回路としては、以下のようなものがあげられます。



タイマIC:NE555について


さて、今回の回路の中心部分となっているタイマICの555ですが、最近は話題に上がることが多くなっています。
トランジスタ技術2010年12月号2011年01月号では555の特集を行っていましたし、WEB上では555を題材にしたコンテストが開催されています(応募締め切りは2011年3月1日!)。

このタイマICであるNE555は古いICですが、今でも頻繁に利用されます。
特にCMOS版の互換ICであるLMC555は秋月電子通商で極めて安価に販売されているため、アマチュア電子工作で非常に良く使われます。私も以下のような点でとても気に入っています。

  • 安い
  • 電源電圧範囲が比較的広い
  • 出力電流容量が大きい


関連エントリ




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付録


このエントリで使用したLTspiceのシミュレーション用ファイルを添付します。ファイル名末尾の".txt"を削除して、"_"を"."に変更すれば使えるはずです。(参考:ねがてぃぶろぐの付録)


参考文献/使用機器




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tag: LTspice NE555 LM555 

三端子レギュレータの入力コンデンサ・出力コンデンサ

『三端子レギューレータの入力にはコンデンサが必須』という話はよく聞きます。

素人考えでは、三端子レギュレータはあまり綺麗でない入力電圧を安定化された出力電圧にする素子なので、出力側のコンデンサのほうが大事なような気がします。

しかし、入力コンデンサは、出力コンデンサよりも大事なようですね。
入力コンデンサを三端子レギュレータというアナログICのパスコンであると考えると納得できます。


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fig.1: 三端子レギュレータの入力コンデンサと出力コンデンサ



入力コンデンサはパスコン


冒頭で、入力コンデンサは三端子レギューレータというアナログICのパスコンのようなものだと書きましたが、図にするとfig.2のような感じです。


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fig.2: 三端子レギューレータはゲインの大きいアンプ


三端子レギューレータは、大雑把に言えば基準電圧生成回路とゲインの大きなエラーアンプ(と出力段のパワートランジスタ)で構成されています。

当然ながら、このエラーアンプの電源は入力端子から取っています。
ゲインの大きなOPアンプを安定に動作させるためには、パスコンが必要ですが、三端子レギューレータにしても同じことですね。

一方で、出力コンデンサはただの負荷容量です。

低ドロップ型三端子レギュレータ


ただし、出力にコンデンサを接続することを前提としたICも存在します。
低ドロップ型の三端子レギュレータやシャントレギュレータなどです。

シャントレギュレータの負帰還安定性に関しては、以前「詰め回路:TL431」を解くに書いているのでそちらをどうぞ。

関連エントリ




付録


このエントリで使用したBSch3V形式回路図ファイルを添付します。ファイル名末尾の".txt"を削除して、"_"を"."に変更すれば使えるはずです。


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tag: 三端子レギュレータ OPアンプ 

電源の出力インピーダンス

電圧源の出力インピーダンスは理想的にはゼロです。
現実の定電圧電源でも出力インピーダンスは低い方が優れた電源であると言うことになります。

一方で、電流源の出力インピーダンスは理想的には無限大となります。
よって、定電流電源は出力インピーダンスが高い方が優れた電源であるということになります。

今回は、LTspiceで直流的なロードレギュレーションのシミュレーションをすることで上記の内容を確認しました。

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電圧源の出力インピーダンス


fig.1-2は、出力抵抗を持った1V出力の電圧源に対して、負荷抵抗の値を変動させたときの出力電圧の変化をシミュレーションしたものです。
出力抵抗の値は10Ωと100Ωの2種類を比較しています。


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fig.1-2: 電圧源のシミュレーション


グラフから分かるように、出力抵抗の小さい方が出力電圧の変動も小さくなっています。

電流源の出力インピーダンス


電圧源のシミュレーションと同様に、出力抵抗を持った1A出力の電流源のシミュレーションを行いました。


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fig.3-4: 電流源のシミュレーション


電流源の場合は、出力抵抗が大きい方が負荷抵抗の変動に対する出力電流の変動が小さいことがわかります。

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tag: 定電流 LTspice 

LTspiceでTL431

テキサスインスツルメンツが公開しているTL431のSPICEモデルは、回路的に不適切なコンデンサを接続したとしても、発振に至る様をシミュレーションしてくれません。
そこで、TL431の等価回路からSPICEモデルを作り、不適切な値のコンデンサを接続した場合に発振に至るシミュレーションをLTspiceを用いて行いました。

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TL431の発振


TL431は負荷のキャパシタンスによって発振しやすい回路です。
fig.1は、テキサスインスツルメンツのTL431データシートから引用した負荷と発振に対する安定な領域を図示したグラフです。


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fig.1: 負荷と発振に対する安定領域


2009年12月号のトランジスタ技術には、TL431を発振させずに使うための回路についての問題が載っていました。参考:「詰め回路:TL431」を解く

テキサスインスツルメンツのTL431のSPICEモデル


簡単に回路の発振に対する安定性を検討するために、回路シミュレータが利用されます。しかし、TL431のSPICEモデルは位相の回転まではモデル化されておらず、実回路では発振する回路でもシミュレータ上では発振しないようです。参考:シミュレータでは発振しない TL431 LC 発振回路 - 実回路は TL431 で位相が回ってしまったらしい

等価回路からSPICEモデル作成


そこで、発振に対する安定性を議論するために等価回路図からSPICEモデルを作成します。
と言っても難しい話ではなく、TL431データシートの等価回路をそのままLTspiceのスケマティックにするだけで、トランジスタやダイオードもLTspice標準のものを使いました。


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fig.2: TL431データシートの等価回路図


構成要素は大雑把に言って「バンドギャップ基準電圧」「差動増幅回路」「ダーリントントランジスタ」です。

シミュレーション結果


fig.3-4にLTspiceでのシミュレーション結果を示します。
負荷容量は確実に発振に至るであろう0.1uFとしました。


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fig.3: 過渡解析のスケマティック

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fig.4: 発振している出力波形


以下に示すfig.5-6は、負荷容量の値をパラメータスイープしたシミュレーション結果です。横軸は時間を、R11とC3の時定数で規格化したものです。


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fig.5: 過渡解析のスケマティック

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fig.6: 負荷容量の値によって発振の有無が変化する


負荷容量の値によって発振するかしないかが変化することがわかります。

TIのモデルとの使い分け


本エントリのSPICEモデルは、トランジスタの選択がいい加減であるため、正常動作時でも出力電圧が2.5Vよりも低めに出ます。また、発振に対する安定領域も実際のTL431と正確に一致するわけではありません。したがって、大雑把な傾向をつかむための利用にはよいかと思いますが、回路定数を決定するために使うようなことはできないと思います。

特に出力電圧が2.5V程度であることが重要な用途では、TIのモデルを利用するほうがよいです。

関連エントリ




参考URL




付録


このエントリで使用したLTspiceのシミュレーション用ファイルを添付します。ファイル名末尾の".txt"を削除して、"_"を"."に変更すれば使えるはずです。


参考文献




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tag: LTspice TL431 パラメトリック解析 

LTspiceで三角波/方形波発振回路

三角波を作る回路として、ヒステリシスコンパレータと積分回路をリング状にしたものが有名です。単電源で実現することを目標にLTspiceでシミュレーションしました。

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三角波発振回路とヒステリシス曲線


PSoC/GPIOのしきい値とヒステリシスPSoC/GPIOのしきい値と電源電圧では、オシロスコープと発振回路を用いて、ヒステリシス特性曲線を描きました。これらのエントリでは、PSoCでLED正弦波駆動の正弦波を流用できたので、信号源として正弦波を用いましたが、他の一般的なデジタルバッファのしきい値を調べるためには、信号源として三角波発振回路を用意する方が向いているでしょう。

三角波/方形波発振回路の構成


三角波を発生させる回路として、ヒステリシスコンパレータと積分回路をリング状にしたものが有名で、趣味の電子工作三角波発振器などいろいろなところで紹介されています。
この回路は、同一周波数の三角波と同位相の方形波を同時に取り出せるので便利です。
fig.1-2にLTspiceを用いたシミュレーションを示します。


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fig.1: 三角波/方形波発振回路のスケマティック

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fig.2: 三角波/方形波発振回路の出力波形


この回路の発振周波数は、以下の式で計算できます。

f = \frac{1}{4C_{1}R_{1}} \left( \frac{R_{2}}{R_{3}//R_{4}} \right)


発振周波数は電源電圧に依存しませんが、出力電圧振幅はV(ref)に対して対称である必要があります。多くの汎用OPアンプは出力電圧振幅が上下対称なので、V(ref)=0VとしVEE=-VCCと両電源で使うと上手くいくはずですが、LM358のように出力振幅が電源電圧に対して非対称な例外もあるので注意が必要です。

出力振幅がV(ref)に対して非対称の場合は、最悪発振しません。R3//R4を小さく採れば、発振させることができるかもしれませんが、三角波の傾きや矩形波のDuty比が非対称になります。


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fig.3: LM358を用いた三角波/方形波発振回路のスケマティック

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fig.4: LM358を用いた三角波/方形波発振回路の出力波形


fig.3-4では、LM358の出力振幅にあわせてV(ref)=2.0Vとしたシミュレーションを行いました。LM358のモデルはナショナルセミコンダクタのものを利用しました。

レールtoレールOPアンプ LMC6482


実際に単電源で三角波/方形波発振回路を作る場合は、入出力レールtoレールOPアンプを利用することになると思います。問題が出力電圧の対称性だけなら、LMC662等の出力のみがレールtoレールのOPアンプでもよいのですが、U1はコンパレータ動作のため、非反転入力端子にはfig.2のV(niv)のような電圧がかかります。

このように、三角波/方形波発振回路は、使用するOPアンプに対して出力振幅の対称性だけでなく、同相入力電圧範囲と出力電圧範囲が同じであることも、暗黙のうちに要求しています。
したがって、この回路を単電源で使用する場合は、出力振幅・同相入力電圧範囲がともに大きく取れる入出力レールtoレールOPアンプが必要になります。(まあ、現実的にはコンパレータとして動作させるだけなので、LMC662でもちゃんと発振するでしょうが。)

最近、秋月電子通商で2回路入りの単電源レールtoレールOPアンプLMC6482が売られるようになりました。次回のエントリでは、これで単電源三角波/方形波発振回路を作ります。

関連エントリ




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