LTspiceで日本語コメント

株式会社e-skettのウエブページにてLTspice用日本語表示変換ソフトが公開されています。これを使うことによって、LTspiceの回路図上に日本語でコメントを書き込むことができるようになります。

001_20130601012704.pngFig.1: 日本語コメントの例



日本語コメント


LTspiceは、標準では日本語のコメントを入力する機能を持っていません。
ねがてぃぶろぐのアクセス解析を調べてみても「LTspice 日本語 コメント」といった検索単語からこられる方も多く、日本語でコメントを入力することに対する潜在的な需要が大きいことが分かります。

これは、回路シミュレータに限らずCADソフト全般に対して言えることです。例えば、PCBエディタとして有名なEagleも外国製のソフトのためプリントパターン内に日本語を入力することが出来ません。これに対して、EAGLE基板/回路図に日本語を描くでは、ストロークフォントKST32Bを用いて回路パターンとして文字を表現するという事を行っています。

これと同様のことをLTspiceで行えば、回路図上に日本語のコメントを書き込む(描き込む)ことができます。

今回紹介するLTspice用日本語表示変換ソフトLTSJTextは、LTspiceの回路図ファイルに書き込まれた日本語コメントを、自動でストロークフォントによるライン描画に置き換えてくれるソフトです。

LTSJTextの使い方


LTSJTextの使い方は、(本家サイトの解説と大差ないですが)大雑把には以下の通りです。

私の試した環境ではWindows XP Professional (32bit)とWindows server 2008 R2(64bit)で動作しました。なお、本家である株式会社e-skettのページではWindowsXP、Windows7(64bit)、Windows8(64bit,デスクトップ)で動作確認を行っています。と書かれています。

  1. .Net framework 4.0以降のインストール
  2. LTSJTextのインストール
  3. 送るフォルダ(SendTo)にショートカットを作成


まず.NET Framework 4.5 のインストールを行います。(Windows XPの場合は.NET Framework 4.0を使います。)

次に本家の株式会社e-skettまたはVectorのLTSJText(LTspice用日本語テキスト変換ソフト)からLTSJTextをダウンロード、展開します。
展開して出来たフォルダはどこにおいてもかまいませんが、私はLTspice本体と同じフォルダにおいています。LTspiceのインストールと初期設定の手順でインストールしてあるならば"C:¥LTspiceIV¥LTSJText¥"または"C:¥Program Files¥LTC¥LTspiceIV¥LTSJText¥"です。

次に展開して出来たLTSJText.exeのショートカットを作ります。素直にデスクトップなどにショートカットを作っても良いですが、私は送る(SendTo)フォルダにショートカットを作りました。このようにしておけば.ascファイルを右クリックから日本語テキスト化することが出来ます。

それでは、日本語コメントを書き込んでみます。
ショートカットキー"t"からEdit Text on the Schematic:ウインドウを立ち上げ、普通に日本語のコメントを打ち込みます。(Fig. 2)


002_20130601012704.png
Fig.2: 日本語コメントの入力


すると、文字化けしたものが回路図上に入力されまが、気にせずこのまま保存します。このとき注意すべき点は、パスにスペース(空白記号)を含むフォルダに保存してはいけないということです。空白を含むフォルダに保存するとうまく日本語コメントに変換出来ません。


003_20130601012702.pngFig.3: 文字化けした回路図


文字化けしたまま保存した.ascファイルをLTSJText.exe(のショートカット)の上にドラッグアンドドロップします。送るフォルダにショートカットを作った場合は、右クリックから送ります。
するとFig.4のようなウインドウが立ち上がり、変換が完了します。


004_20130601012702.png

Fig.4: LTSJText.exeのウインドウ


元ファイルと同じフォルダに、ファイル名の末尾に_Jが付いたファイルが新たに出来ているはずです。

NG-SPICE + BSch3V


一方で、今回紹介した方法は、日本語の文字列をラインにして回路図上に書き込むといった方法をとっているため、一度書き込んだコメントを再編集する際には、もう一度最初から文字列を打ち込んでラインフォント化の手順を繰り返さなければいけません。

日本語コメントのみが問題というわけではないのでしょうが、純国産の(シミュレータ連動でない)回路図エディタで標準で日本語入力の機能が付いているもの(例えばBSch3Vなど。)とSPICEを組み合わせることに挑戦している人たちもいるようです。(参考:NG-SPICE+BSch3V - 回路シミュレーターWiki)

関連エントリ




参考URL




付録


このエントリで使用したLTspiceのシミュレーション用ファイルを添付します。ファイル名末尾の".txt"を削除して、"_"を"."に変更すれば使えるはずです。(参考:ねがてぃぶろぐの付録)


参考文献/使用機器




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tag: LTspice 日本語 

LTspiceで直流解析(DC解析)

アマチュア電子工作でLTspiceを使う場合、「過渡解析(Tran解析)」「直流解析(DC解析)」「交流小信号解析(AC解析)」の3種類のシミュレーションが最もよく使われます。

今回取り上げる直流解析(DC解析)は、電圧や電流をゆっくり変化させたときの回路の挙動を調べるものです。
直感的に言えば、横軸に電圧や電流をとったグラフを書くのが直流解析だと考えればだいたいあってます。現実の回路で言うなら、DC電源とデジタルマルチメータを使う類の計測です。

具体的には、

などのシミュレーションができます。

このエントリの前半は、LTspiceを始めたばかりの初心者の方向けに、直流解析とはどういったものかを解説します。
後半では、すでにある程度LTspiceの直流解析を使ったことがある経験者の方向けに、単純な直流解析ではアプローチできない回路へのヒントとなる(かもしれない)エントリの紹介をしていきます。


基本的な分圧回路のシミュレーション


最初に、回路シミュレータを使うまでも無いような分圧回路についてのシミュレーションを行います。


001_20120513011214.png
fig.1: 分圧回路


fig.1の回路の入力に電圧をかけると、二分の一に分圧された電圧が出力されることが予想され、シミュレーションでも確かにそのようになります。(fig.2)


002_20120513011214.png
fig.2: 分圧された結果


LTspiceでのシミュレーションが初めての方は、まずLTspiceクイック・スタートを実際にやってみてLTspiceの使い方に慣れてください。今回の例では、解析の種類の選択・設定の部分でEdit Simulation CommandウインドウでDC seepを選択します。fig.3は、変化させる電圧源としてV1を指定、電圧を0Vから1Vまで1mVずつ変化させていく設定とした場合です。


003_20120513011214.png
fig.3: 直流解析の設定


『ゆっくり変化させる』とは?


ここまででは、直流解析は電流や電圧をゆっくり変化させる事だと書いてきました。
ゆっくり変化させるというのは、ざっくりと言ってしまうと
  • コンデンサは開放
  • コイルは短絡
として扱う、ということです。

コンデンサには、直流は流れません。また、コイルは直流に対してはただの導線です。
実際にfig.4の様に、分圧回路の出力に10μFのコンデンサを接続した回路のシミュレーションをしてみると、その結果は、コンデンサを接続していないときの結果(fig.2)とまったく同じになることがわかります。


004_20120513011214.png
fig.4: 分圧回路に10μFのコンデンサを追加した回路


一方で、この回路を過渡解析してみると、コンデンサの影響が確認できます。


005_20120513011214.png006_20120513011213.png
fig.5-6: コンデンサを付加した分圧回路の過渡解析


直流解析の結果のように、出力電圧が入力電圧だけで決まるなら出力電圧V(out)は、緑の線で示したようなV(in)/2となるはずですが、シミュレーション結果は、赤の線で示したようになまった波形になります。

従って、過渡解析直流解析ではコイル・コンデンサは回路図に書く意味が無い事がわかります。(2014/05/29訂正)
逆に、コイル・コンデンサの効果をシミュレーションする場合は、直流解析は使えないと言うこともできます。この場合は、過渡解析(tran解析)や小信号交流解析(AC解析)を利用します。

シミュレーションの実例


直流解析の応用例として、ねがてぃぶろぐで以前行ったシミュレーションをいくつか紹介します。

半導体の直流特性


PDS5022Sでカーブトレーサ電気用語は難しい(オームの法則)では、汎用シリコンダイオードの電圧-電流特性のシミュレーションをしました。
以下は、電気用語は難しい(オームの法則)のものです。

002_20100306113832.png

003_20100306113832.png
fig.7-8:ダイオードのシミュレーション


順電圧(横軸)に応じて、順電流やダイオードの抵抗値が非線形に変化していることが読み取れます。(参考:1N4148のデータシート(PDF))

アナログICの直流特性


PICの電源電圧低下でLED点灯しきい値付近で線形増幅器になるコンパレータOPアンプの同相入力電圧範囲とバイアスでは、コンパレータやOPアンプの直流特性についてシミュレーションをしました。
以下は、PICの電源電圧低下でLED点灯で行ったシミュレーションで、電源電圧が低下するとコンパレータの出力がHとなる回路です。

001_20110127235631.png
002_20110127235630.png
fig.9-10: 電源電圧低下の検出回路


fig.10の上のパネルがコンパレータの出力で、電源電圧が2.2Vを下回ると出力がHになるコンパレータ動作をしています。

直流解析(DC解析)できない回路


ここからは、一見すると直流解析でシミュレーションできそうな回路でありながら、直流解析ではうまくいかない回路を一工夫してシミュレーションする方法を紹介します。そのエッセンスは、過渡解析を使うことです。

ヒステリシスコンパレータ


直流解析を利用しない直流解析のひとつ目の例が、時間的に直前の状態を参照するヒステリシスコンパレータ(シュミットトリガ回路)です。
解析の設定のときにDC sweepStart ValueStop Valueの値を逆にすれば、2つのしきい値の値を別々に調べることはできます。しかしながら、2つのしきい値を同時に一つのグラフにプロットすることはできません。

過渡解析においても、横軸を任意のノード(回路図上の好きな場所)の電圧を横軸にとったグラフを書くことができます。(LTspiceのグラフの横軸を変更する)
これを利用して、ひとつのグラフに2つのしきい値を同時に描くことを考えます。


011_20120513011445.png
fig.11: ヒステリシスコンパレータ


まずfig.11の様に、解析したいヒステリシスコンパレータのスケマティックを作成します。このとき、変化させる入力電圧の部分にゆっくり電圧が上昇して、その後、ゆっくり電圧が下降するような信号源を接続します。今回の例では電圧源をPULSEとして使用して、0Vから1秒かけて5Vまで上昇し、その後、1秒かけて0Vまで戻る信号源としました。


012_20120513011444.png
fig.12: 通常の過渡解析の結果


この過渡解析の結果がfig.12です。この段階では、横軸は時間です。
この横軸の時間の部分をクリックすると、fig.13の様なウインドウが立ち上がります。


013_20120513011444.png

014_20120513011444.png

fig.13-14: 横軸のtime(時間)をV(in)(入力電圧)に書き換える


立ち上がったウインドウのQuantity Plottedの部分にかかれたtimeを、横軸にとりたいもの、今回はV(in)に書き換えると(fig.14)、希望したヒステリシス曲線を表示することができます。(fig.15)


015_20120513011444.png
fig.15: ヒステリシス曲線


なんとなく難しいことをやったような印象があるかもしれませんが、実のところ、ゆっくりと変化させるを過渡解析で行っただけです。従って注意点は、その回路にとって充分ゆっくり電圧を変化させることです。

ねがてぃぶろぐでは、シュミットトリガ回路に関するエントリがたくさんあります。



スイッチングを含む回路


スイッチングを含む回路でも直流解析のようなことを行いたい場合があります。
たとえばスイッチングレギュレータのロードレギュレーション等です。

ねがてぃぶろぐでは、チャージポンプ型電源のロードレギュレーションや効率(LTspiceでチャージポンプ負電源)、チョッパアンプの直流特性(汎用OPアンプをチョッピングで高精度化)のシミュレーションを行いました。

これらの場合も、重要な点は過渡解析を使うことですが、シュミットトリガ回路の場合ほど単純ではなく、さらに一捻りとして.measコマンド.stepコマンドを利用します。

以下に示すのは、LTspiceでチャージポンプ負電源にて行った出力電圧-電力変換効率のシミュレーション結果です。


004_20110128034323.png
fig.16: 変換効率のシミュレーション用スケマティック

005_20110128034301.png
fig.17: 出力電流に対する変換効率(%)


.measコマンド.stepコマンドの組み合わせはLTspiceで.meas(実効値,積分値など)にて解説しています。
この組み合わせのシミュレーションは、詰まるところ、スイッチングを含む回路の過渡解析を、条件を変えながら複数回行っているというものです。
スイッチング回路のシミュレーションは、時間がかかります。それをさらに複数回繰り返すということは、それ相応の時間がかかるということがこの方法の欠点です。したがって、ステップの刻み幅などはよく考える必要があります。

関連エントリ




参考URL




付録


このエントリで使用したLTspiceのシミュレーション用ファイルを添付します。ファイル名末尾の".txt"を削除して、"_"を"."に変更すれば使えるはずです。(参考:ねがてぃぶろぐの付録)


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tag: LTspice 直流解析 スイッチング回路 

LTspiceで演算増幅回路

以下(fig.1)に示すような回路があるとします。


001_20120204024428.png
Fig.1: V1の電圧が0Vのとき、outの電圧は何ボルトでしょう?


R1は1Ωで1Aの電流が流れています。
V1における電圧は0Vでした。outにおける電圧は何ボルトでしょうか?

答えは1Vで、単純にオームの法則から求めることができます。

V = R * I = 1Ω * 1A = 1V

です。


反転増幅回路


これと同じ状況は、OPアンプ回路でよく見ます。
OPアンプは、負帰還をかけて、反転入力端子と非反転入力端子が同電位となる様にして使われるからです。(ヴァーチャルショートあるいは仮想短絡などと呼ばれます。)
Fig.2-3は、こういった場合の少し現実的な回路です。


002_20120204024428.png

003_20120204024428.png
fig.2-3: V1の電位はGNDと同電位だとわかる


抵抗値や電流・電圧を計算しやすい値にしていましたが、肝心なのは比率だけなので、実際の回路設計で使いやすい値に変更しても同じことです。(Fig.4-5)


004_20120204024427.png

005_20120204024427.pngfig.4-5: より現実的な回路定数として、R1を10kΩにI1を100uAに変更


これを90度回転させると、よく見慣れた反転増幅回路となります。(fig.6-7)


006_20120204024427.png

007_20120204024508.pngfig.6-7: 一般的な反転増幅回路


もう少し複雑な回路:加算回路, 対数増幅回路


こういった考え方は、『一見すると複雑な回路』の動作を考えるときに役に立つかもしれません。

たとえば、先ほどの反転増幅回路において電流源の数を増やせば加算回路になります。


008_20120204024507.png

009_20120204024815.pngfig.8-9:加算回路


また、R1の代わりに抵抗以外の素子を入れると、その素子の特性を反映した増幅回路になります。
一例として、ダイオードを入れた回路を紹介します。


010_20120204024507.png

011_20120204024506.pngfig.10-11:素朴なログアンプ


ダイオードの電流-電圧特性は、指数(対数)関数的です。
したがって、増幅回路も線形ではなく指数(対数)的なものになります。

『一見すると複雑な回路』もヴァーチャルショートを仮定すると、挙動が追いかけやすくなります。
ただし、OPアンプ素子そのものは、負帰還をかけた増幅回路としても、負帰還をかけないコンパレータとしても使われることがあるので、注意が必要です。(その両方のようなトリッキーな回路にも需要があるようです:しきい値付近で線形増幅器になるコンパレータ)

補足:ログアンプの温度特性


fig.10に示した素朴なログアンプは、通常、実用的ではありません。その原因は、帰還素子として利用するダイオードの温度特性が極端であるからです。

前述の素朴なログアンプを、LTspiceで温度解析したものがfig.12-13です。20℃から50℃まで温度変化が出力に与える影響は、入力電圧に換算すると最大で一桁程度の変化に相当します。


012_20120204024506.png

013_20120204024524.pngfig.12-13:素朴なログアンプの温度解析(20-50℃)


よほど限られた用途以外では、これだけ大きな変動は許容されないはずです。そのため、ログアンプは温度補償を必要とします。温度補償の詳しい解説は、岡村 廸夫著 定本 OPアンプ回路の設計等に書いてあります。

関連エントリ




付録


このエントリで使用したLTspiceのシミュレーション用ファイルを添付します。ファイル名末尾の".txt"を削除して、"_"を"."に変更すれば使えるはずです。(参考:ねがてぃぶろぐの付録)


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tag: LTspice OPアンプ  

OPアンプのバイアス電流と高抵抗

一般的に、OPアンプ回路に使う抵抗は1k-100kΩ程度が良いとされています。しかしながら、ほとんどの使い方では、メガオーム以上の抵抗を使うことがないので、高抵抗を使うとどうなるのかを実感することは、多くありません。
今回は、低周波数のフィルタ回路を作る際に、OPアンプの入力バイアス電流の大きさと抵抗値の関係性が問題になった例を紹介します。

001_20120128192250.png 002_20120128192249.png 003_20120128192249.png 004_20120128192248.png


カットオフ周波数100mHzのハイパスフィルタ


趣味の電子工作で作るフィルタの帯域は、可聴域であることがほとんどで、広帯域のフィルタと言われると、高い周波数まで性能がよいフィルタということになります。

しかし、今回は、それとは逆の話で、低周波数の交流フィルタ回路の話を紹介します。
地惑実験(電子回路)のときの話です。
(厳密に言うと、回路設計や対処をしたのは私が休んだ日の話なので、私がやったのは、後日行った原因解明です。)

地震の研究は、地球惑星科学の中でも王道のひとつです。地震による建物の固有周波数は、およそ数Hz程度です。
地球惑星科学科の電子回路実習では、実験室がある建物の固有周波数が計測できれば面白いということで、秋月電子通商の3軸加速度センサをデータロガーに接続して、計測を行いました。

秋月の加速度センサは、単電源動作をさせるため、出力電圧にVcc/2のバイアスがかかっています。しかしながら、これでは、信号を増幅する際うっとおしいので、交流結合して直流分をカットしてしまおうと思いました。ただし、計測したい信号周波数が低いため、ハイパスフィルタのカットオフ周波数を低くしなければなりません、そんなわけで設計した100mHzのハイパスフィルタがfig.1-2です。


001_20120128192250.png
002_20120128192249.png

fig.1-2: カットオフ周波数100mHzのハイパスフィルタ


しかしながら、この回路を実際に組んでみると、期待通り動作する学生と、無信号時でも出力に数百mV程度のオフセット電圧が乗ってしまう学生とが出てきました。
それぞれの回路を比べると、どうやらOPアンプにuA741を選択した学生の回路ではオフセット電圧が発生し、TL071を選択した学生にはオフセットが現れないということでした。

原因はOPアンプのバイアス電流


uA741は、バイポーラトランジスタ入力のOPアンプです。これに対して、TL071はJFET入力のOPアンプです。
これらの構成上の違いは、OPアンプの入力インピーダンスに現れます。

uA741の入力バイアス電流の標準値は80nAで、TL071の65pAと比較すると3桁以上悪い値です。
バイアス電流の影響をモデル化するためにfig.1の回路の非反転入力端子に電流源I1を接続し、出力にあらわれるオフセット電圧のシミュレーションを行いました。


003_20120128192249.png
004_20120128192248.png

fig.3-4: 入力バイアス電流が出力のオフセットに与える影響


シミュレーション結果fig.4から明らかなように、バイアス電流10nAあたり100mVのオフセット電圧が発生しています。これは、数十nAのバイアス電流を持つuA741を使った学生の回路で数百mVのオフセットが見られたことを定量的に説明できます。

電流源I1の電流はR2に流れることにより電位差を発生させます。この電圧が出力のオフセット電圧の原因です。したがって、(C2を大きくできる、カットオフ周波数がより高いなどの理由で)R2の値が小さければ出力のオフセットはより小さくなることになります。

高抵抗・高容量を必要とする回路


一般論として、OPアンプの帰還抵抗や入力抵抗に利用する抵抗の値は1k-100kΩ程度が良いと言われています。
可聴域のフィルタを作っている限りは、メガオームを超える抵抗を扱うことはほとんどないので、抵抗値が高すぎることに頭を悩ますことは稀でした。

フィルタ回路だけでなく、発振回路の場合も、低周波数を実現するためには高抵抗・高容量の素子が必要になります。
高容量かつ高精度のコンデンサは高価なので、結果的に高抵抗を使うことを選ばざるを得ないことはあると思います。
今回の問題の本質は、uA741がTL071よりも劣っていたというよりは、高抵抗を使うような設計に対して無神経であったところにあると思います。

関連エントリ




付録


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tag: LTspice OPアンプ 

LTspiceでトランス式チョッパアンプ

はじめてのトランジスタ回路設計で紹介されている個別半導体とトランスを組み合わせたチョッパアンプのシミュレーションをLTspiceを用いて行いました。

001_20110416083655.png 002_20110416083655.png


直流信号を交流変調してから増幅、復調すると増幅器の直流オフセットの影響をキャンセルすることが出来ます。汎用OPアンプをチョッピングで高精度化では、入力オフセット電圧の小さくない単電源OPアンプとマイコンを組み合わせることにより、微小直流信号を高精度にA/D変換するシミュレーションを行いました。

はじめてのトランジスタ回路設計には、個別半導体とサンスイのトランス2つ(ST-23,ST-71)を組み合わせたチョッパアンプの回路図とSPICE用のネットリストが載っています。

今回のエントリでは、このネットリストを読み取りLTspiceでシミュレーションを行いました。

モデルパラメータ


トランスの等価回路図は、はじめてのトランジスタ回路設計の値をそのまま用いました。
LTspiceでトランスを表現するためには、インダクタを2つ組み合わせて利用します。
コイルの結合係数はSPICE directiveで指定します。結合係数が正しく設定されると、回路図上のインダクタのシンボルにまき線方向を示す"○"印が付くはずです。(ただし、トランスではない普通のコイルにもまき線方向を示す"○"印をつける設定にすることも出来ます。)トランスのシミュレーションのサンプルは、LTspiceに標準で付属しています。LTspiceをインストールしたフォルダの中の/examples/Educationalフォルダの中を見てください。(Transformer.asc と Transformer2.asc)

JFETのモデルパラメータもオリジナルのネットリストと変更していません。
2SA1015を2石つかって構成した交流増幅回路は、はじめてのトランジスタ回路設計では、(計算時間短縮のため)OPアンプのモデルを使って簡素化してありましたが、(いまのPCの性能なら計算能力に関しては全く問題が無いと思われるので)回路図そのままをシミュレーションしました。2SA1015のモデルの代わりに2N3906のモデルを利用しました。(参考:LTspiceの標準デバイスでまにあわせる)

シミュレーション結果


以下にシミュレーション結果を示します。


001_20110416083655.png
fig.1: トランス式チョッパアンプのスケマティック

002_20110416083655.png
fig.2: 過渡解析結果


LTspiceによるシミュレーション結果は、(当然ながら)はじめてのトランジスタ回路設計で行われているシミュレーション結果と(ほぼ)同じ挙動となりました。

関連エントリ




付録


このエントリで使用したLTspiceのシミュレーション用ファイルを添付します。ファイル名末尾の".txt"を削除して、"_"を"."に変更すれば使えるはずです。(参考:ねがてぃぶろぐの付録)


参考文献/使用機器




はじめてのトランジスタ回路設計は絶版ということですが、CD-R版が購入できるようです。(Simさん情報ありがとうございます。)

また、同じ黒田徹著の実験で学ぶトランジスタ・アンプの設計―1~11石の増幅回路を組み立てながら… (Analogue Master Series)トランジスタ技術 2006年 7月号の特集記事をもとに再編集したものということですが、実質的にはじめてのトランジスタ回路設計の後継本です。トラ技の連載と内容が大きく変わっていないならば、シミュレーションだけではなく、パソコンを計測器として実回路の特性を測定する方法にも触れているはずです。
その代わり、おそらく本エントリでシミュレーションしたトランス式チョッパアンプの回路は載っていないと思います・・・。

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tag: LTspice スイッチング回路 トランジスタ チョッパアンプ トランス 

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