ecaljでB-dopedダイヤモンド

ecaljと仮想結晶近似(VCA)を用いて、ダイヤモンドの炭素原子を5%ホウ素に置換したホウ素ドープダイヤモンドの電子構造を計算しました。結果は、AkaiKKRでB(N)-dopedダイヤモンドAkaiKKRでリジッドバンド模型もどきの結果と調和的で、純粋なダイヤモンドは絶縁体、ホウ素をドープしたダイヤモンドは金属的なバンド構造となりました。

bandplot-bdia-vca.png
Fig.1: ダイヤモンドとホウ素をドープしたダイヤモンドのバンド構造



仮想結晶近似(VCA)


不規則合金の電子構造の計算を行うためには、色々な近似が考えられます。
AkaiKKRでB(N)-dopedダイヤモンドでは、AkaiKKR(Machikaneyama)に実装されているコヒーレントポテンシャル近似(CPA)を用いました。AkaiKKRでリジッドバンド模型もどきでは、AkaiKKRを少しトリッキーに使い、リジッドバンド模型のような計算を行いました。他にもスーパーセルを使う方法も考えられます(参考: AkaiKKRでスーパーセル その1)。

今回は、更に別の方法として仮想結晶近似(VCA)を用いてホウ素をドープしたダイヤモンドの電子構造をecaljを用いて計算しました。

なお、これらの近似のエライ(つまり、近似として上等である)順番は、コヒーレントポテンシャル近似、仮想結晶近似、リジッドバンド模型です。スーパーセル法とコヒーレントポテンシャル近似は、どちらも一長一短なので、必ずしもどちらがエライというわけでもないはずです。

計算手法


計算手法は、基本的にはecaljで仮想結晶近似と同様です。通常通り、ダイヤモンドの結晶構造ファイルを作成します(参考: ecaljの実行手順(LDA計算), ecaljでシリコンのバンド構造(LDA計算))。
STRUC   ALAT=6.74
PLAT=0.0 1/2 1/2
1/2 0.0 1/2
1/2 1/2 0.0
SITE ATOM=C POS=0.0 0.0 0.0
ATOM=C POS=1/4 1/4 1/4

この結晶構造ファイルから ctrlgenM1.py を用いて制御ファイルを自動生成させます。

更にこの制御ファイルをテキストエディタで編集します。今回は、炭素(原子番号:6)の5%をホウ素(原子番号:5)に置換するので 6*0.95 + 5*0.05 = 5.95 とします。
SPEC
ATOM=C Z=5.95 R=1.42


計算結果


計算結果のバンド構造をFig.1に、状態密度をFig.2に示します。

tdos-bdia-vca.png
Fig.2: ダイヤモンドと炭素の5%をホウ素に置換したダイヤモンドの状態密度


純粋なダイヤモンドは半導体ですが、ホウ素をドープしたダイヤモンドはフェルミ準位が荷電しバンドの中にあるような、金属的なバンド構造になりました。仮想結晶近似(VCA)は、コヒーレントポテンシャル近似(CPA)とリジッドバンド模型の中間のエラさに位置するので、当然ながらこれら二つと似たような結果になります。

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tag: ecalj 仮想結晶近似 VCA 半導体 ダイヤモンド 

AkaiKKRとecaljでCuGaTe2 その2

AkaiKKRとecaljでCuGaTe2 その1ではAkaiKKR(machikaneyama)を用いてCuGaTe2の状態密度を計算しました。今回は、さらにecaljを用いて、LDAとGW近似の計算を行いました。その結果、AkaiKKRがCuGaTe2のバンドギャップを過小評価するのは、LDA/GGAに共通する問題であろう事、また、ecaljを用いてGW近似を適用すると、バンドギャップが改善されることが分かりました。

AkaiKKRLDAGW
Bandgap~0.4 eV0.1586 eV1.0962 eV
table.1: AkaiKKR(GGA), ecalj(LDA), ecalj(GW近似)のそれぞれのバンドギャップ



CuGaTe2のバンドギャップ問題


AkaiKKRとecaljでCuGaTe2 その1では、AkaiKKR(machikaneyama)を用いてCuGaTe2の状態密度を計算しました。その結果、得られたバンドギャップの大きさは過小評価となりました。これがLDA/GGAに起因する問題ならば、ecaljのLDA計算でも過小評価となり、かつ、GW近似を適用することで改善が見られるはずです。そこで今回は、LDAとGW近似の両方でCuGaTe2の計算を行います。

ecaljの結晶構造ファイル


ecaljの実行手順(LDA計算)ecaljの実行手順(GW近似)で書いたとおりecaljのために最低限必要なのは結晶構造ファイル ctrls.cugate2 だけです。ecaljの結晶構造ファイルは、基本並進ベクトルで格子を指定し、直交座標系で原子位置を指定する必要があります。

AkaiKKRではブラベ格子の種類は「ブラベ格子のキーワード」を指定する方法と「基本並進ベクトル」を指定する方法の2種類があります(参考: AkaiKKRのブラベ格子AkaiKKRの基本並進ベクトル その1AkaiKKRの基本並進ベクトル その2)。また、原子位置も「直交座標系」で与える方法と「分率座標系(fractional coordinate)」で与える方法の2種類あります。

もしもAkaiKKRの入力ファイルが、ブラベ格子のキーワードを利用している、あるいは、原子位置が分率座標系で与えられている場合、ecaljの入力フォーマットに合うように直す必要があります。AkaiKKRの入力ファイルからecaljの入力ファイルを作る方法としては、いったんcifファイルなどを経由してVESTAを利用する方法が正攻法でしょう(参考: VESTAでAkaiKKRのための基本並進ベクトル)。

しかし、もしもすでにAkaiKKR用の入力ファイルがあるのなら、ワンステップだけとはいえ、余計な手間がかかっている感があります。幸いにして、AkaiKKRの出力には、基本並進ベクトルと直交座標系での原子位置が出力されるので、今回はこれらを利用してecaljのための入力ファイルを作ります。

具体的には、AkaiKKRとecaljでCuGaTe2 その1の出力結果から、以下の基本並進ベクトルと原子位置の部分を抜き出します。

   primitive translation vectors
a=( -0.50000 0.50000 0.99600)
b=( 0.50000 -0.50000 0.99600)
c=( 0.50000 0.50000 -0.99600)


   atoms in the unit cell
position= 0.23703000 0.25000000 0.24900000 type=Te
position= 0.76297000 0.75000000 0.24900000 type=Te
position= 0.75000000 0.23703000 0.74700000 type=Te
position= 0.25000000 0.76297000 0.74700000 type=Te
position= 0.50000000 0.50000000 0.00000000 type=Ga
position= 0.50000000 0.00000000 0.49800000 type=Ga
position= 0.00000000 0.00000000 0.00000000 type=Cu
position= 0.00000000 0.50000000 0.49800000 type=Cu
position= 0.75000000 0.25000000 0.24900000 type=Es1
position= 0.25000000 0.75000000 0.24900000 type=Es1
position= 0.75000000 0.75000000 0.74700000 type=Es1
position= 0.25000000 0.25000000 0.74700000 type=Es1
position= 0.00000000 0.00000000 0.49800000 type=Es2
position= 0.50000000 0.50000000 0.49800000 type=Es2
position= 0.00000000 0.50000000 0.00000000 type=Es2
position= 0.50000000 0.00000000 0.00000000 type=Es2


結局CuGaTe2の結晶構造ファイルは、以下のようになります。

STRUC   ALAT=11.5388
PLAT=-1/2 1/2 0.99600
1/2 -1/2 0.99600
1/2 1/2 -0.99600
SITE ATOM=Te POS=0.23703000 0.25000000 0.24900000
ATOM=Te POS=0.76297000 0.75000000 0.24900000
ATOM=Te POS=0.75000000 0.23703000 0.74700000
ATOM=Te POS=0.25000000 0.76297000 0.74700000
ATOM=Ga POS=0.50000000 0.50000000 0.00000000
ATOM=Ga POS=0.50000000 0.00000000 0.49800000
ATOM=Cu POS=0.00000000 0.00000000 0.00000000
ATOM=Cu POS=0.00000000 0.50000000 0.49800000


結果


LDAを用いた結果、ワンショットGW近似を用いた結果、および、前回計算したAkaiKKRのGGAの結果を示します。

CuGaTe2-GW.png
Fig.1: QSGWによるCuGaTe2の状態密度

CuGaTe2-LDA.png
Fig.2: LDAによるCuGaTe2の状態密度

CuGaTe2DOS.png
Fig.3: GGA(AkaiKKR)によるCuGaTe2の状態密度


まず、大まかに見れば状態密度の形状はどれもほとんど同じであることが分かります。ただし、バンドギャップができるはずの部分では、LDAやAkaiKKR(GGA)の結果は、GW近似の結果と比較してギャップエネルギーを過小評価していることが分かります。

ecaljのログファイルには、バンドギャップの値が出力されます。前回のAkaiKKRの値とあわせて比較するとTable.1のようになりました。

ただし、LDA/GGAはバンドギャップを過小評価するという以上のことを言おうと思うと、微妙な議論になるかもしれません。
結晶構造と格子定数を合わせてあるとはいえ、細かい設定は異なります。AkaiKKRではpbe(GGA)を、ecaljのLDAはvwnを使っている点。AkaiKKRはフルポテンシャルでない点、などです。実際、空孔を入れたり原子球近似(ASA)を使ったりすることでギャップの値が改善されるということは、バンドギャップの値がポテンシャルの形状に影響を受けるはずだということです(参考: AkaiKKRでダイヤモンド型構造半導体)。

LDA/GGAのバンドギャップ過小評価は、第一原理計算パッケージ全般についてまわる問題だけあって、私には結論が出せませんが、仮にバンドギャップが正しい値を示さなくても、バンド構造や全エネルギーに関して議論を行うことは、何らかの意味があるかもしれません。

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tag: AkaiKKR machikaneyama KKR ecalj LDA GGA GW近似 QSGW 半導体 バンドギャップ 

AkaiKKRとecaljでCuGaTe2 その1

第一原理計算パッケージには、それぞれ特徴があり、計算したい物質によって適切に使い分ける必要に迫られることがあります。AkaiKKR(machikaneyama)は不規則系に適しており、ecaljは半導体のバンドギャップを求めるのに適しています。

例えば、不規則を含む半導体の計算をAkaiKKRで行いたいと考えたとき、不規則を含まない端成分の計算をecaljの結果と比較しておくことは有用です。今回はCuGaTe2を対象として、AkaiKKRで状態密度の計算をおこないました。

CuGaTe2DOS.png
Fig.1: CuGaTe2の状態密度



AkaiKKRとecaljの長所


AkaiKKR(machikaneyama)は、コヒーレントポテンシャル近似(CPA)を導入することによって、合金などの不規則性を扱うことが可能であるという特徴があります。
またecaljはGW近似を用いて、半導体のバンドギャップの見積もりを局所密度近似(LDA)から改善できる長所があります。

他にもさまざまな第一原理計算パッケージが、それぞれ特有の長所を持っています。このため、しばしば複数のコードでの計算結果を比較するということが起こります。

今回と次回では、AkaiKKRの掲示板に投稿された CuGaTe2 のバンドギャップをこれら二つのコードで計算し、バンドギャップと状態密度の比較を行います。今回はAkaiKKRでの計算です。

計算手法


入力ファイルはCannot reproduce the bandgap of CuGaTe2に投稿されているものとほとんど同じですが、少しだけ変更してあります。一つ目の変更点は、スピン軌道相互作用を(計算が重いので)はずした事。二つ目はewidthを小さくしたことです。

c--------------------CuGaTe2---------------------------------
go data/cugate2
c------------------------------------------------------------
c brvtyp a c/a b/a alpha beta gamma
bct 11.5388 1.992 1 90 90 90
c------------------------------------------------------------
c edelt ewidth reltyp sdftyp magtyp record
0.001 0.7 sra pbe nmag 2nd
c------------------------------------------------------------
c outtyp bzqlty maxitr pmix
update 4 500 0.015
c------------------------------------------------------------
c ntyp
5
c------------------------------------------------------------
c type ncmp rmt field mxl anclr conc
Cu 1 0 0.0 2 29 100
Ga 1 0 0.0 2 31 100
Te 1 0 0.0 2 52 100
Es1 1 0 0.0 0 0 100
Es2 1 0 0.0 0 0 100
c------------------------------------------------------------
c natm
16
c------------------------------------------------------------
c atmicx atmtyp
0.23703x 1/4y 1/8z Te
0.76297x 3/4y 1/8z Te
3/4x 0.23703y 3/8z Te
1/4x 0.76297y 3/8z Te
1/2x 1/2y 0.0z Ga
1/2x 0.0y 1/4z Ga
0.0x 0.0y 0.0z Cu
0.0x 1/2y 1/4z Cu
c
0.75x 1/4y 1/8z Es1
0.25x 3/4y 1/8z Es1
3/4x 0.75y 3/8z Es1
1/4x 0.25y 3/8z Es1
c
0.0x 0.0y 0.25z Es2
1/2x 1/2y 0.25z Es2
0.0x 1/2y 0.0z Es2
1/2x 0.0y 0.0z Es2
c------------------------------------------------------------


結果


Fig.1に状態密度を示します。
AkaiKKRでの状態密度やバンド構造(ブロッホスペクトル関数)のエネルギー分解能は source/specx.f の msex で指定することが可能で、デフォルトでは msex=201 となっています。したがって、状態密度を計算するために ewidth = 0.8 Ry とした場合の分解能は 4 mRy 程度になります。その結果、状態密度の図だけを見ると、バンドギャップが存在するか否かが微妙です。

AkaiKKRでバンドギャップの測り方では、バンドギャップを決める場合、状態密度から値を読むよりも、バンド構造から見るほうが良さそうであると書きました。CuGaTe2は、伝導帯の上端(CBM)と価電子帯の下端(VBM)が共にΓ点に存在する直接遷移型の半導体であるとの事なので、その付近のバンド構造をプロットしたのがFig.2です。

CuGaTe2band.png
Fig.2: Γ点周辺のCuGaTe2のバンド構造


GaAsの場合と異なり、CBMにフェルミ準位(というか計算上のエネルギー基準点)が張り付いてしまっていますが、電子の数を足し上げるときの数値計算上の誤差と思うので、いまは気にしないことにします。

ローレンツ関数へのフィッティングは、あまりきれいにいかなかったので、目視で読むと、バンドギャップの大きさはおよそ 30 mRy 程度でしょうか。換算すると 0.4 eV 程度となるので、Cannot reproduce the bandgap of CuGaTe2に書かれている通り 1 eV 程度存在するはずのバンドギャップから見ると過小評価です。

AkaiKKRに限らず密度汎関数理論(DFT)に局所密度近似(LDA)や一般化勾配近似(GGA)を組み合わせた第一原理計算パッケージは、バンドギャップを過小評価してしまう問題が広く知られています。
ecaljで利用できるGW近似は、この問題に対する回答のひとつです。AkaiKKRとecaljでCuGaTe2 その2では、ecaljを用いてCuGaTe2の状態密度とバンドギャップを計算します。

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tag: AkaiKKR machikaneyama KKR CPA ecalj 半導体 バンドギャップ バンド構造 分散関係 GW近似 

ecaljで半金属α-スズ

ダイヤモンド構造を持つα-スズ(灰色スズ)は、バンドギャップがほとんどない半金属であることが知られています。今回は、ecaljを用いてα-スズの計算し、LDA計算でもGW近似計算でも半金属的なバンド構造を持つことを確認しました。

aSnLDAdos.png

Fig.1: ダイヤモンド構造スズ(α-スズ, 灰色スズ)の状態密度の計算結果。



ダイヤモンド構造のα-スズ


私たちがスズと聞いて、日常的に思い浮かべるのは、β-スズと呼ばれる正方晶の結晶で、金属です。ここで周期表を眺めてみると、スズは14族に属する元素です。14族元素を上から順に見てみると、炭素・シリコン・ゲルマニウムといずれもダイヤモンド構造をとる半導体です(炭素の最安定構造はグラファイトですが)。スズもまた、13℃以下の温度では、ダイヤモンド構造をとり、α-スズ(灰色スズ)と呼ばれ、通常のβ-スズ(白色スズ)と区別されます。

Sn-Alpha-Beta-small.jpg

Fig.2: 左は金属のβ-スズ(白色スズ)で右はダイヤモンド構造のα-スズ(灰色スズ)。Wikipediaのスズのページより


今回はecaljを利用してダイヤモンド構造のα-スズのバンド構造を計算します。
なおWikipediaのスズのページにはバンドギャップが約0.1 eVの半導体[要出典]と書かれています。

計算手順


ecaljのMATERIALSディレクトリで ./job_materials.pySn--noexec オプションをつけて実行すると関連するファイル群が作成されます。
./job_materials.py Sn --noexec

その中から結晶構造ファイル ctrls.sn だけコピーして、後はいつもどおり計算します。

計算結果


LDA計算とワンショットのQSGW計算を行いました。

aSnLDA.png
aSnQSGW.png

Fig.3-4: ダイヤモンド構造のスズ(α-スズ, 灰色スズ)のバンド構造の計算結果(LDAとQSGW)


LDAもGW近似も状態密度を見るとフェルミ準位に状態の谷がありますが、金属なのか半導体なのかの判断は微妙です。バンド図を見るとLDAの方はわずかながらフェルミ準位でバンドの重なりがあります。GW近似の結果は、微妙です。

ecaljでAg2Oの状態密度のときは、LDA計算ではバンドギャップがまったくなかったものが、QSGW計算にするとギャップが開くという結果が得られました。これに対して今回のα-スズの計算ではQSGW計算でもほとんど(あるいはまったく)バンドギャップが見られませんでした。このことは現実のα-スズでもバンドギャップがほとんど(あるいはまったく)ない半金属的な電子構造を持つということと調和的です。

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tag: ecalj QSGW 半金属 

ecaljで仮想結晶近似

ecaljの仮想結晶近似(VCA)の機能を用いてbcc Fe1-xCoxの状態密度を計算しました。
その結果、AkaiKKRでFeCoの磁気モーメントと格子定数で計算したコヒーレントポテンシャル近似(CPA)の結果と似たような挙動が確認できました。

FeCo.gif

Fig.1: 仮想結晶近似(VCA)によるbcc Fe1-xCoxの状態密度



合金の電子状態


固体物理の多くの第一原理計算パッケージでは、結晶の周期性を利用しているため不規則構造の計算が苦手です。AkaiKKR(machikaneyama)は、コヒーレントポテンシャル近似(CPA)を用いて不規則性を扱います。合金を扱うほかの方法としては、スーパーセル法(参考: AkaiKKRでスーパーセル その1)などがあります。これ以外にもCPAよりももう一歩手前の近似法として仮想結晶近似(VCA: Virtual Crystal Approximation)というものが存在します。

ecaljのマニュアルを読むと、どうやらVCAが使えるようなので、今回は体心立方構造(bcc)のFe1-xCoxの状態密度を計算してみました。

計算手順


ecaljのマニュアルのP15にはYou can use Z=37.5 for virtual crystal approximation, however, you can not do it in ctrls now. Edit it in ctrl file.のように書いてあります。そこで通常通りbcc鉄の結晶構造ファイルを作り ctrlgenM1.py--nspin=2 のオプションを与えて制御ファイルを作成します(参考: ecaljで強磁性鉄のスピン分極計算)。

この後、作成した制御ファイルの原子番号Zを編集します。例えばFe0.8Co0.2なら、原子番号が26の鉄と27のコバルトの合金なので 26*0.8 + 27*0.2 = 26.2ということだと思います。(しかしこれだとFe0.9Ni0.1でも同じ結果になってしまう?私が何か勘違いしている?)

結果


以下に計算結果の純鉄とFe0.8Co0.2の状態密度を示します。

FeCo0.png
FeCo20.png

Fig.2-3: bcc Feとbcc Fe0.8Co0.2の状態密度


コバルト濃度を増していくと、アップスピンの状態密度が低エネルギー側へ移動していくような挙動が見られました。これはAkaiKKRでFeCoの磁気モーメントと格子定数で計算した結果と似たような挙動であることが分かります。

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