VESTAでAkaiKKRのための基本並進ベクトル

個人的にはAkaiKKRで複雑な結晶構造を持った結晶の第一原理計算を行う事はあまりないのですが、複雑な結晶構造の入力ファイルを簡単に作成できれば便利だとは思います。
今回は、結晶構造を指定するのに非常に良く使われるcifファイルからVESTAを利用して出力することの出来るVASP用の入力ファイルを流用することを考えます。


AkaiKKRのための基本並進ベクトル


結晶構造は、格子(lattice)と基本構造(basis)の組み合わせによって表現されます(参考:結晶学 Crystruct.info)。
AkaiKKR(machikaneyama)でも格子と基本構造の組み合わせによって結晶構造を指定します。格子を指定する方法は、ブラべ格子の種類をキーワードで指定する方法(AkaiKKRのブラベ格子)と基本並進ベクトルで指定する方法(AkaiKKRの基本並進ベクトル その1その2)があります。

いずれにせよ、結晶構造を指定するのために必要十分な情報があれば、それを格子と基本構造へと変換するのは簡単なはずです。
今回は、結晶構造を指定するのに非常に良く使われるcifファイルからVESTAを利用して出力することの出来るVASP用の入力ファイルを流用することを考えます。

六方最密充填構造コバルト(hcp-Co)の基本並進ベクトルと基本構造


まず目標の結晶のcifファイルを入手します。
入手先の候補はいろいろ考えられますが、今回は六方最密充填構造のコバルトのcifファイルGitHubの該当ページからダウンロードします。

次に、結晶構造描画ソフトであるVESTAでcifファイルを開きます。
VESTAでLaMnO3ペロフスカイトなどで結晶構造の描画の方法について説明していますが、今回は結晶構造を眺めるのが目的ではないので、次に進みます。

cifファイルを開いた状態で[File]→[Export Data...]と選択するとファイル保存のダイアログが立ち上がります。
ここでファイルの種類としてVASP (POSCAR;*.vasp)を選択し、保存をクリックします。
するとOptionウインドウが立ち上がり、座標系の選び方を聞いてくるので、今回はFractional coordinatesを選択します。(もちろんCartesian coordinatesを選べば直交座標系になります。なおNiggli reduced cellはよくわからないので今回はパスします。)

保存されたファイルをテキストエディタで開くと、以下のようになっているはずです。
見ての通り、前半が基本並進ベクトルで、後半が基本構造です。

Co
1.0
2.5071001053 0.0000000000 0.0000000000
-1.2535500526 2.1712123810 0.0000000000
0.0000000000 0.0000000000 4.0686001778
Co
2
Direct
0.333333343 0.666666687 0.250000000
0.666666627 0.333333313 0.750000000


ただし、基本並進ベクトルの単位はオングストロームとなっているので、基本並進ベクトルaの大きさで規格化したのち、基本並進ベクトルaの大きさ自体も原子単位系のBohrへと換算します。(c.f. 1 Bohr = 0.52917721092 Å)

c----------------------Co------------------------------------
go data/coAUX
c------------------------------------------------------------
c brvtyp a c/a b/a alpha beta gamma
aux
1.00000 0.00000 0.00000
-0.50000 0.86603 0.00000
0.00000 0.00000 1.62283
4.738
c------------------------------------------------------------
c edelt ewidth reltyp sdftyp magtyp record
0.001 1.0 nrl mjw mag 2nd
c------------------------------------------------------------
c outtyp bzqlty maxitr pmix
update 4 50 0.023
c------------------------------------------------------------
c ntyp
1
c------------------------------------------------------------
c type ncmp rmt field mxl anclr conc
Co 1 1 0.0 2
27 100
c------------------------------------------------------------
c natm
2
c------------------------------------------------------------
c atmicx atmtyp
0.333333343a 0.666666687b 0.250000000c Co
0.666666627a 0.333333313b 0.750000000c Co
c------------------------------------------------------------


その結果得られた入力ファイルが上記になります。
基本構造の下位の桁が少し怪しいことになっていますが、その点に目をつぶれば、正しく結晶構造を指定できています。

関連エントリ




参考URL




参考文献/使用機器




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VESTAでLaMnO3ペロフスカイト

VESTA - Visualization for Electronic and STructual Analysisを利用してLaMnO3ペロフスカイトの結晶構造を描画しました。

LaMnO3pv.png


結晶構造の描画


VESTAで結晶構造を表示するためには、なんらかのデータベースから結晶構造データ(.cifフィアルや.vestaファイル)を入手するか、或いは、自分で結晶構造のパラメターを入力する必要があります。

結晶構造のパラメータの入力の仕方を含むVESTAの使い方は、以下のサイトで分かりやすく紹介されています。



また、結晶構造データベースとしての有名どころは、以下の様なものがあります。


American Mineralogist Crystal Structure DatabaseGeneral Searchに化学式などを入力して検索すると、結晶構造のパラメータと.cifファイルの一覧が表示されます。


LaMnO3のパラメータ


今回は、一例としてLaMn3の結晶構造を描画します。
結晶構造のパラメータはTutorial for XtalEditや http://kotliar6.rutgers.edu/udo/prof/projects/lda/tutorial/tut_01.htm のInternet Archiveのアーカイブのものを利用します。

空間群は62番で、格子定数は以下の通りです。

  • a = 5.742 Å
  • b = 7.668 Å
  • c = 5.332 Å


単位格子内の原子位置はTable.1の通りです。

Wyckoffx/ay/bz/c
La4c0.5491/40.010
Mn4a000
OI4c-0.0141/4-0.070
OII8d0.3090.0390.224
table.1: LaMnO3単位格子内の原子位置


これらの情報を信州大学 情報科学演習空間群を利用して、さらに複雑な構造を描くに倣って入力します。


第一原理計算の入力ファイルに関して


AkaiKKR(Machikaneyama)などの第一原理計算のための入力には、結晶構造と原子位置を入力する必要があります。AkaiKKRの入力支援にはXtalEditというソフトがありますが、VESTAでもある程度のことはできそうだと言う感触はあります。

第一原理計算の入力ファイル作成に関して参考になりそうなURLを列挙しておきます。



関連エントリ




参考URL




付録


このエントリで使用したVESTAの結晶構造ファイルを添付します。ファイル名末尾の".txt"を削除して、"_"を"."に変更すれば使えるはずです。(参考:ねがてぃぶろぐの付録)


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