昇圧電源を内蔵したIC

前からあっても不思議じゃないな、と思いつつも、実際に現物を見たことが無いから存在しないのだろうなと思っていたICがありました。それは、IC内部にスイッチングレギュレータを持つOPアンプです。

そんな折、EDN Japanチャージポンプを活用した単電源オペアンプという記事を見つけたので、ついでに考えたことを書こうと思います。


単電源OPアンプ


OPアンプの同相入力電圧範囲と出力電圧振幅は、ふたつの電源入力端子に加えられる電源電圧に依存します。
これらのパラーメータは、一般的なOPアンプでは、負の電源電圧よりも2~3V高いから正の電源電圧よりも2~3V低いところまでです。
fig.1は、NJM4580の出力電圧振幅の例で、出力できる電圧の範囲は、これら日本のラインの間の領域になります。


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fig.1: NJM4580の電源電圧-出力電圧振幅のグラフ,両電源OPアンプの例


こういった一般的な両電源OPアンプに対して、入出力できる範囲を負の電源電圧ギリギリまで改善したものを単電源OPアンプと呼びます。さらに、正の電源電圧側にも広げたものはレールtoレールOPアンプと呼ばれます。
fig.2は、単電源OPアンプであるLM358の同相入力電圧範囲です。


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fig.2: LM358の電源電圧-同相入力電圧のグラフ,単電源OPアンプの例


しかしながら、単電源OPアンプのGND付近での非線形性とバイアスのエントリにも書いたとおり、如何に単電源OPアンプといえど、完全に負の電源電圧までキレイに増幅ができるわけではないようです。

こういった理由から、単電源で扱えるはずの信号電圧範囲であっても、OPアンプのためだけに負電源を用意することがしばしばあります。

ADM3202


ADM3202は、TTL-RS232Cレベル変換ICです。
簡単に言うと、5Vの信号を±10Vぐらいの信号に変換できるということです。

このICは、正負の電圧を出力できるにもかかわらず、電源電圧は5V単電源です。その秘密は、IC内部に発振回路を持っていて、外付けしたコンデンサとあわせてチャージポンプ方式の昇圧電源と反転電源を構成しているところにあります。

ADM3202はデジタルICですが、NOT回路の代わりにOPアンプを入れておけば、単電源で完全なレールtoレールOPアンプになるはずです。


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fig.3: NOTの代わりにOPアンプを入れるとレールtoレールOPアンプになる?


というものの、実在する現物を見たことが無かったので、アナログ信号を扱うICの内部にスイッチング回路を仕込むのはノイズなどの観点から難しいのだろうなと思っていました。

オートゼロアンプ


一方で、内部にスイッチング回路を持つことによって高い特性を発揮させるアナログICも存在します。昔から存在するものとしては、チョッパアンプやオートゼロアンプと呼ばれるものがあります。


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fig.4: 古典的なオートゼロアンプ


これらのアンプは、スイッチングによってアンプのオフセットやドリフトを小さくすることができます。この方式は、低オフセットとされている高精度OPアンプのOP07などと比較しても、さらに優れたオフセット特性を持っています。

その反面で、周波数特性は極端に悪く、使われるのは熱電対アンプなどの高精度かつ直流とみなしていい周波数の回路のようです。

チャージポンプを活用した単電源オペアンプでは、スイッチングノイズと帯域の関係を以下のように書いています。

また、チャージポンプを用いる場合、スイッチングノイズが問題になる。それについては、チャージポンプのスイッチング周波数をオペアンプの帯域よりも高く設定することで、スイッチングノイズがオペアンプの熱雑音より小さく抑えられるようになっている。


オートゼロアンプでは、扱う周波数帯域が非常に低いことを前提としているため、こういった問題を回避することができるのでしょう。

PSoCのSMP


さて、自分自身の電源電圧を内蔵昇圧回路で生成するOPアンプという観点からすると、PSoCのスイッチモード・ポンプ(SMP)もまた、この定義に当てはまります。

PSoCのSMPのスイッチング周波数は約1.3MHzと、この手のスイッチング電源としては、少々高めです。この周波数設定も、チャージポンプ内蔵OPアンプのノイズ問題と同様の考え方に起因するのでしょう。

逆に、アナログ回路を含まないマイコンで似たようなことを考える場合は、スイッチング周波数を下げることができるかもしれません。参考:PSoC SMP風のDC-DC昇圧をPICでやってみる

関連エントリ




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tag: PSoC SMP PIC スイッチング回路 OPアンプ 

PSoC/SMP効率測定

AN2097は、負荷電流と効率の関係を表すグラフが無かったので、この関係を調べるため測定をしました。
その結果、最高の条件下では出力電流は100mA程度まで取り出せ、効率は80%前後になることが分かりました。

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AN2097


PSoCのSMPについて書かれた文章としては、AN2097:Power Management - Switch Mode Pumpが挙げられます。このアプリケーションノートでは、3.3V動作と5V動作のそれぞれに関して、インダクタンス・入力電圧・周囲温度を変更したときの最大出力電流・変換効率に関してのデータがまとめられています。

一般的に、DCDCの変換効率を低下させる損失は、低負荷電流領域ではコントローラの静的な消費が、高負荷電流領域ではコイルやスイッチ(MOSFET,SBD)でのジュール損がそれぞれ支配的です。

バッテリー動作において、その動作可能時間を見積もるために必要なのは、その負荷電流領域におけるバッテリの初期電圧から終端電圧までの変換効率です。
そこで、本エントリではSMPの負荷電流-効率特性の測定を行いました。

想定する動作条件


今回の測定では、1.5V乾電池を3直列で初期電圧4.5Vから終端電圧3.0Vまで使用することを想定して、以下の条件としました。

  • 出力電圧:5V
  • 入力電圧:3.0~4.5V(1.5V電池3直列)
  • システムクロック周波数:6MHz,24MHz


実験回路


実験に使用した回路の回路図を以下に示します。


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fig.1: 全体の構成

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fig.2: SMP基板の回路構成


負荷は自作の電子負荷、電圧測定はR6452A、電流測定はMETEX P-10のGreenとYellowを用いました。

インダクタはトーキンSNT-D20TFノーマルモードチョーク1.5A/10μH/45mΩを、ショットキーバリアダイオード(SBD)は11EQS04をそれぞれ用いました。どちらも秋葉原の鈴商で購入できます。

fig.2の回路は、PSoC/SMP電流増強の回路の流用ですが、PNPトランジスタの部分は今回は使用していません。

結果


以下に結果のグラフを示します。


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fig.3: 負荷電流-効率曲線


低負荷電流領域では、コントローラの静的消費により効率が低い。高負荷電流領域に行くにしたがって静的消費の割合が相対的に減るため効率が上昇するが、インダクタやスイッチのジュール損の影響で頭打ちになる。同じ負荷電流では、入出力電位差が小さい方がコイルやスイッチに流れる電流が小さくなるため、効率がよくなり、システムクロック周波数が低い方が静的消費が少なくなるため効率がよくなる。といったことが読み取れます。

無負荷時の入力電流・消費電力


ブーストコンバータの効率低下の要因は、静的消費とジュール損です。
システムクロック周波数に応じて静的消費が変化すると考えれば、同一クロックにおける入力電圧に起因する入力電力の変化は、入力電力にともなうジュール損の変化を表していると考えられます。

3.0V 24MHz4.5V 24MHz3.0V 6MHz4.5V 6MHz
入力電流[mA]38.619.423.38.73
入力電力[mW]115.887.1269.6737.66


CPUのトリップ


fig.3において、Input:3.0V,6MHz(青の点)100mA付近での効率が特異的に悪化しているのは、SMPの出力電流の限界を超えてしまい、出力電圧が低下し、CPUがトリップして動作が不安定になったためMCUでの消費電力が増えたのではないかと考えています。


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fig.4: 負荷電流過多による出力電圧の低下


結果の意味するところ


PICマイコンのNOPとGOTOの消費電力等を見ても分かるとおり、MCUの消費電力は、その実行している命令の種類や動作させている内部モジュールの種類や数・設定に応じて変化します。
このため、スイッチングレギュレータ制御ICでつくったDCDCコンバータと同様な理屈で効率を議論するのは、少しおかしく感じるかもしれません。

今回の効率測定の結果は、あくまで最大値だと考えるべきでしょう。

関連エントリ




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参考文献




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tag: PSoC SMP スイッチング回路 

PSoC/SMP電流増強の考察

SMPの出力電流増強アプリケーションであるAN2349は外付け部品が多く、スイッチングコンバータ制御ICを追加するのと比較してメリットが少ない。
PSoCのSMPの機能を有効利用して部品点数を削減しながら、高出力電流を達成する回路構成を検討したが、芳しくなかった。


Switch Mode Pump(SMP)


バッテリー動作を想定した多くのマイコンでは、バッテリの本数を減らすための方法として低電圧動作を可能とするように設計されています。
例えば、PIC12F683では、動作周波数が8MHz以下の条件では、2.0Vから動作します。これは、1.5V電池2本を直列にしたときに1本あたり1.0Vまで使う場合の電圧に相当します。


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fig.1: PIC12F683の電源電圧-動作可能システムクロック領域


一方PSoCは、Switch Mode Pump(SMP/スイッチモードポンプ)と呼ばれる電源電圧の昇圧機能で、低電圧電源動作を実現します。数本の電池から安定化された3.3Vや5Vの電源電圧を生成することが出来るため、消費電力が低いながらも安定化された電源を要求するモジュールなどを使うときに便利です。


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fig.2: SMPの回路構成


AN2349


SMPの電流増強のアプリケーションとしてAN2349が挙げられます。AN2349では、外部に低ON抵抗のMOSFETと反転ゲートドライバを追加することにより出力電流の増加を実現しています。


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fig.3: AN2349の回路構成


しかしながら、最終的な外付け部品がIC、FET、インダクタ、SBDとなり、スイッチングコンバータ専用ICを使う場合と比較して実装面積的にはあまりメリットがありません。

PNPトランジスタ


SMP端子の有効利用を考える際に問題になるのが、「1.3MHz固定のスイッチング周波数」と「出力論理」の二つです。
出力論理に関しては、Nch-MOSFETを接続するためには論理反転を行わなければなりません。また、1.3MHzという比較的高いスイッチング周波数を考えると、ゲートドライブにはそれなりの回路が必要です。

そんなわけで、インバータもゲートドライバも必要ないPNPトランジスタをスイッチとして採用してみたらどうかと思い実験してみました。


004_20090805175829.png
fig.3: PNPトランジスタを使ったSMP


結果は惨敗。
昇圧そのものはできましたが、無負荷状態でも入力電流が1Aと言うとんでもない事態に。

この回路は、SW1を切り替えることによって普通のSMPの実験もできるようにしました。
次回から普通のSMPの特性試験を行っていこうと思います。

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