汎用OPアンプをチョッピングで高精度化

オフセット電圧の低くない単電源OPアンプであっても、マイコンと組み合わせてチョッパアンプとすることにより、高精度の直流微小電圧測定を行うことができます。
PIC16F785には入力オフセット電圧が5mV(typ)のOPアンプが内蔵されています。今回のエントリでは、5mVのオフセットを持つOPアンプを用いてチョッパアンプを構成し、出力にオフセット電圧の影響が出なくなることをLTspiceによるシミュレーションから確認しました。

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オフセット誤差


マイコン回路において、GND基準の電圧出力をA/D変換したい用途はたくさんあります。測定したい電圧信号が小さい場合は、OPアンプを利用して増幅をすることになりますが、被測定信号が極めて微小な場合は、OPアンプの入力オフセット電圧に埋もれて正しく増幅することができません。

以下に示すfig.1-2は、入力オフセット電圧が5mVのOPアンプを用いて、101倍の非反転増幅回路を構成したときに、0-25mVの入力信号を増幅したLTspiceによるシミュレーション結果です。


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fig.1: 入力オフセット電圧5mVのOPアンプによる101倍非反転増幅回路

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fig.2: 赤が実際の出力電圧、緑が理想的な(オフセットの無い)出力電圧


赤で示したのが実際のシミュレーション結果で、緑で示したものがOPアンプの入力オフセット電圧がゼロという理想的な状態での出力結果です。
入力電圧の25mVという値に対して、近い値である5mVというオフセットを持つOPアンプでは、オフセット電圧の影響が無視できないほど大きいことが読み取れます。

したがって、微小電圧の増幅にはオフセットの小さい、高精度OPアンプと呼ばれる種類のものを利用するのが王道です。
高精度OPアンプとして代表的なOP07などは両電源を要求するので、チャージポンプ負電源などの簡易的な負電源を用意する必要があります。場合によっては、負電源三端子レギュレータを正電源用にするとドロップ分が負電源になるのようなトリッキーな手段が使えるかもしれません。
また、NJM2119のように低入力オフセット電圧である単電源OPアンプも存在します。

型番電源特徴オフセット(typ)オフセット(max)
OP07両電源高精度60uV150uV
NJM2119単電源高精度90uV450uV
LM358単電源汎用2mV7mV
LMC662単電源汎用1mV6mV
PIC16F785単電源マイコン内蔵5mV-
table.1: 各種OPアンプのオフセット電圧(OPアンプの値は新日本無線とナショナルセミコンダクタのデータシートより)


しかしながら、LM358,LMC662といったような単電源利用可能な汎用の(必ずしも低オフセットで無い)OPアンプが利用できると便利です。あるいは、OPアンプを内蔵したPIC16F785のようなマイコンを使えれば、部品点数削減になります。

今回のエントリでは、PICマイコンと汎用単電源OPアンプを組み合わせてチョッパアンプを構成し、高精度に微小電圧信号の測定を行う回路の設計、及び、LTspiceによるシミュレーションを行いました。

チョッパアンプの設計


チョッパ増幅器に関する解説は、(絶版のようですが)はじめてのトランジスタ回路設計―回路を設計製作しSPICEで検証!の第五章にOPアンプICの無かった時代にどのようにして直流増幅器のオフセットやそのドリフトを軽減していたかの説明として載っています。

マイコンと汎用OPアンプを組み合わせて構成する方法としては、MOSFETのローサイド電流をPICで計測 (2ちゃんねる ★ オペアンプ スレッドより)にてまとめた通り、技術奴隷さんの提唱している『ACアンプ+スイッチング』を利用します。

451 名前:439[sage]:2007/06/15(金) 18:19:35 ID:MHgqsRv+
>450
すみません。聞き方がよくありませんでした。>432を見て私が想像したのは
ttp://www.tij.co.jp/jsc/psheets/SBOA099A.pdf?application_note--appli_report.ht
の中の「古典的なオートゼロアンプ方式」のようなものだったのですが、この回路では
信号をチョッピングするために何らかのスイッチが必要になりますよね。

このスイッチには何を使えばよいのでしょうか?
まったく見当違いな事言ってたらすみません。

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452 名前:技術奴隷[]:2007/06/15(金) 22:10:18 ID:ABKqkZjs
>>451
面白い資料を見つけてきましたね。基本はそれでOKです。
とりあえずこんな回路でOKだと思うけどいかが?
ttp://www.geocities.jp/one_prisoner/AIF.html

AIF.png



この回路では、古典的なオートゼロアンプにおける最も信号源側のスイッチを抵抗で置き換えているため、ACアンプから見た信号源抵抗が高くなっています。(逆に信号源から見ると、この抵抗がACアンプの入力インピーダンスになるため、極端に低い値にすることも難しいです。)

このため、ACアンプ自体の入力インピーダンスが高くなければならなくなるので、LTspiceで入力インピーダンスでシミュレーションをしたブートストラップ回路を利用します。またブートストラップ型交流増幅回路にゲインを持たせる方法は定本 OPアンプ回路の設計―再現性を重視した設計の基礎から応用までを参考にしました。

通常のチョッパアンプでは、直流→交流変換を行い、増幅した後に、交流→直流変換を行いますが、マイコンでA/D変換をする前提の今回の回路では直流へ戻さず、交流信号に同期してA/D変換を行うことにします。

交流非反転増幅回路のゲインは101倍とし、チョッピングの周波数は100Hzとしました。
OPアンプはfig.1-2のシミュレーションと同様に5mVの直流オフセット電圧を持たせ、マイコンのI/OはLTspiceでビヘイビア電源ほかの電圧制御スイッチでモデル化しています。

シミュレーション結果


入力電圧を0Vから25mVまで1mVごとにシミュレーションを行っています。
以下に、LTspiceによるシミュレーション結果を示します。


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fig.3: マイコン利用チョッパアンプのスケマティック

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fig.4: 過渡解析の結果による出力電圧波形

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fig.5: 入力電圧-出力電圧特性。横軸が入力電圧で、縦軸が出力電圧。赤で示したラインがチョッパ増幅器の出力電圧を表していて、緑が理想的な出力電圧をあらわしています。


過渡解析の結果からLTspiceで.meas(実効値,積分値など)を用いて入力電圧-出力電圧グラフを書いたのがfig.5です。
赤で表したラインがシミュレーションから得られた出力電圧で、緑のラインが理想的な101倍の増幅器に期待される出力電圧です。

通常の非反転増幅回路によるシミュレーション結果であるfig.2と比較して、チョッパアンプの結果であるfig.5は赤と緑の線の差が小さく、入力オフセット電圧の影響が除去されていることが分かります。

関連エントリ




参考URL




付録


このエントリで使用したLTspiceのシミュレーション用ファイルを添付します。ファイル名末尾の".txt"を削除して、"_"を"."に変更すれば使えるはずです。(参考:ねがてぃぶろぐの付録)


参考文献/使用機器




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