AkaiKKRでLi-ion電池の充放電

AkaiKKRでリチウムイオン電池の起電力ではAkaiKKR(machikaneyama)を用いてリチウムイオン二次電池の満充電状態から完全放電状態までの間の平均起電力を計算しました。今回は、リチウムを段階的に放出させ、充放電の途中の起電力を計算しました。

前回同様、定量的にはどの程度信用してよいのかは分かりませんが、正電極材料にLiCoO2やLiNiO2を使うよりもLiCo1/3Ni1/3Mn1/3O2を使うほうが起電力の低下が起こりにくいという予想が得られました。


充電/放電の途中


AkaiKKRでリチウムイオン電池の起電力ではAkaiKKR(machikaneyama)を用いてリチウムイオン二次電池の起電力が、正電極材料によってどのように変化するかを計算しました。

その際、前回のエントリでは以下の化学反応を考え、満充電状態と完全放電状態の間のエネルギー差から起電力を計算しました。

LiCoO2 ⇔ CoO2 + Li + e-

しかしながら、このときの起電力は(おそらく)満充電状態から完全放電状態までの起電力の平均値だろうと考えられます。しかしながら、通常の電池では、放電をするにつれて起電力が下がっていきます。
より具体的に言うならば、例えば以下の二つの状況下では、求められる起電力が異なるはずであると言うことです。

LiCoO2 ⇔ Li0.9CoO2 + 0.1Li + 0.1e-

Li0.9CoO2 ⇔ Li0.8CoO2 + 0.1Li + 0.1e-

そんなわけで、前回のエントリと同様にして、充放電の途中の起電力を計算します。

入力ファイル


リチウムの濃度を変化させながら全エネルギーを変化させるために、シェルスクリプトと入力ファイルのテンプレートを作成しました。

#!/bin/csh -f

set XI_LIST=( 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 )

foreach XILI ( ${XI_LIST} )
set XIVC=`echo 100 - ${XILI} | bc`
echo " XI= "${XILI}
sed 's/'XIVC'/'${XIVC}'/g' in/LixCoO2.in0 | sed 's/'XILI'/'${XILI}'/g' > in/Li${XILI}CoO2.in
specx < in/Li${XILI}CoO2.in > out/Li${XILI}CoO2.out
cp data/LixCoO2 data/Li${XILI}CoO2
tail -n 1 data/LixCoO2.info
end


c----------------------LiCoO2--------------------------------
go data/LixCoO2
c------------------------------------------------------------
c brvtyp a c/a b/a alpha beta gamma
rhb 9.373 , , , 32.97 , , ,
c------------------------------------------------------------
c edelt ewidth reltyp sdftyp magtyp record
0.001 1.7 sra mjwasa mag 2nd
c------------------------------------------------------------
c outtyp bzqlty maxitr pmix
update 4 200 0.02
c------------------------------------------------------------
c ntyp
3
c------------------------------------------------------------
c type ncmp rmt field mxl anclr conc
LiVc 2 1 0.000 2
3 XILI
0 XIVC
Co 1 1 0.000 2
27 100
O 1 1 0.000 2
8 100
c------------------------------------------------------------
c natm
4
c------------------------------------------------------------
c atmicx atmtyp
0 , 0 , 0 , Co
0.5a , 0.5b , 0.5c , LiVc
0.26a , 0.26b , 0.26c , O
0.74a , 0.74b , 0.74c , O
c------------------------------------------------------------


計算結果


結果はFig.1の様になりました。

battery.png

Fig.1: AkaiKKRによるリチウムイオン電池の充放電特性


この計算結果がどの程度定量的に信用できるのかは、正直なところ私には良くわかりませんが、もし仮に今回の計算結果が正しいとしたらどの様な意味を持つのかについて考えて見ます。

まず、放出されるリチウムの量が移動する電子の量と1対1対応しているので、グラフの横軸のリチウム濃度と言うのは、定電流充電/放電した際の時間経過と考えることが出来ます。前回のエントリで書いたとおり、この場合の起電力の実体は全エネルギーの差でしかないので電圧が高いほど多くの電力が供給できることを意味しています。

この図からは、遷移金属にコバルトやニッケル単体を用いた場合よりも、コバルトニッケルマンガンを1/3ずつ入れたときの方が放電時の起電力の低下が少ないことが読み取れます。
電池の特性としては、容量が大きいだけでなく、消耗しても電圧が下がらないほうがありがたいので、コバルトの一部を置換することによって放電特性が良くなることを示しています。

というようなことを書いた後に


今回のエントリは、ふとした思い付きで計算してみたわけなのですが、どうやらリチウムイオン電池の起電力の第一原理計算は、本当に第一線の問題であるようです。

AkaiKKR掲示板ではWhy electrons are in vacancy? (in Japanese)にて議論されています。また中山 将伸さんのウエブページにはリチウムイオン電池(基礎編・電池材料学)第一原理計算(解析編)といった記事が公開されています。

エントリを書き終わってから、上記のようなページに気が付いたので、このエントリの公開をやめるか(あるいはちゃんと計算しなおすか)とも考えましたが、あまり労力をかける気も起きなかったので、そのまま公開することにしました。
そんなわけで(変な言い回しですが)ちゃんとした研究のためにこのページに来てくださった方は、このエントリが極めてテキトーに作られていることにご注意ください。

関連エントリ




参考URL




付録


このエントリで使用したAkaiKKRの入力ファイルのテンプレートとシェルスクリプトを添付します。ファイル名末尾の".txt"を削除して、"_"を"."に変更すれば使えるはずです。(参考:ねがてぃぶろぐの付録)


参考文献/使用機器



フィードバック



にほんブログ村 その他趣味ブログ 電子工作へ

 ↑ 電子工作ブログランキング参加中です。1クリックお願いします。


コメント・トラックバックも歓迎です。 ↓      


 ↓ この記事が面白かった方は「拍手」をお願いします。

tag: AkaiKKR machikaneyama KKR CPA シェルスクリプト 起電力 

AkaiKKRでリチウムイオン電池の起電力

2014年の2月末に行われた第24回CMD®ワークショップではAkaiKKR(machikaneyama)のアドバンストコースを受講させていただきました。その際のマテリアルデザインのテーマのひとつとして、リチウムイオン二次電池の起電力の計算があります。今回のエントリでは、リチウムイオン二次電池の正電極材料である LiCoO2のコバルトをニッケルやコバルトニッケルマンガンに置き換えたときの起電力の計算を行いました。

01-150p-01.jpg
Fig.1 リチウムイオン二次電池はモバイル機器に使われる。



リチウムイオン二次電池


二次電池(充電して再利用できる電池)には、ニッケル水素電池(エネループなど)や鉛蓄電池(自動車のバッテリーなど)といろいろな種類が存在しています。
その中でリチウムイオン電池は、小型で大容量という特長を生かして携帯電話やノートパソコンのバッテリーとして利用されています。

LiCoO2 ⇔ Li1-xCoO2 + xLi + xe-

リチウムイオン二次電池の正極で起きている化学反応は、上記の様に表すことができます。リチウムイオン二次電池は高性能なバッテリーなのですが、材料のコバルトが高価であるという欠点があります。そこでコバルトを別の遷移金属で代替する研究が行われてきました。

以前受講させていただいたCMD®ワークショップでは、AkaiKKR(machikaneyama)のアドバンストコースにて、リチウムイオン二次電池のコバルトを他の遷移金属(Ti, V, Cr, Mn, Fe, Co, Ni, Cu, Zn,Al, etc.)に置き換えたときに、その起電力がどのように変化するかのマテリアルデザインを行いました。

入力ファイルと起電力の計算


今回はリチウムイオン二次電池の正電極の材料になるLiCoO2のコバルトをニッケルに置換した場合とコバルトニッケルマンガンに1/3ずつ置換した場合の起電力を計算します。

起電力は充電状態と放電状態のエネルギー差から計算できます。第一原理計算入門AkaiKKRには以下の様に書かれています。

起電力の計算
-V = Total Energy (LiCoO2) - Total Energy (CoO2) - Total Energy (Li)
結果は 13.6 * Ry = eV となるが、1e あたりにすると、Vとなる。

コバルトをニッケルに置き換えた計算、及び、コバルトの一部をニッケルとマンガンに置き換えた計算では差し当たり格子定数などを変更しないことにします。LiCo1/3Ni1/3Mn1/3O2の計算もコヒーレントポテンシャル近似(CPA)を用いて下記の様なインプットファイルを作成することが出来ます。

c---------------------LiCoNiMnO2-----------------------------
go data/LiCoNiMnO2
c------------------------------------------------------------
c brvtyp a c/a b/a alpha beta gamma
rhb 9.373 , , , 32.97 , , ,
c------------------------------------------------------------
c edelt ewidth reltyp sdftyp magtyp record
0.001 1.7 sra mjwasa mag 2nd
c------------------------------------------------------------
c outtyp bzqlty maxitr pmix
update 4 200 0.02
c------------------------------------------------------------
c ntyp
3
c------------------------------------------------------------
c type ncmp rmt field mxl anclr conc
Li 1 1 0.000 2
3 100
CoNiMn 3 1 0.000 2
27 33
28 33
25 33
O 1 1 0.000 2
8 100
c------------------------------------------------------------
c natm
4
c------------------------------------------------------------
c atmicx atmtyp
0 , 0 , 0 , CoNiMn
0.5a , 0.5b , 0.5c , Li
0.26a , 0.26b , 0.26c , O
0.74a , 0.74b , 0.74c , O
c------------------------------------------------------------


結果


計算の結果得られた起電力をTable. 1に示します。起電力(電圧)として表にしてありますが、結局の所、計算しているのは全エネルギーの差なので、満充電から完全放電までに取り出せる電力と言うこともできます。

正極材料実験値(Wikipedia)計算値(AkaiKKR)
LiCoO23.7 V3.72 V
LiNiO23.5 V 2.94 V
LiCo1/3Ni1/3Mn1/3O23.6 V3.28 V
table.1: 正極材料と起電力。
実験値はWikipediaのリチウムイオン二次電池より。


差し当たり起電力の大きさでコバルトを使ったときが最大、次がコバルトニッケルマンガンが混ざった状態で、全てニッケルに置き換えたときが最小であると言うことは再現しています。現実の系のことを定量的に予想するには、もう少し色々と考えないといけないと思います。bzqltyしかり、格子定数しかり、充放電の中間の状態しかり。

なおCMD®ワークショップの際は、受講者それぞれに異なった遷移金属を割り当てて、計算結果を持ち寄って比較すると言うことをやっていました。私に割り当てられたのはコバルトを10%スカンジウムに置き換えたもの、すなわちLiCo0.9Sc0.1O2だったのですが、計算してみるとewidthがcoreに引っかかってなかなか上手く収束してくれませんでした。

関連エントリ




参考URL




付録


このエントリで使用したAkaiKKRの入力ファイルを添付します。ファイル名末尾の".txt"を削除して、"_"を"."に変更すれば使えるはずです。(参考:ねがてぃぶろぐの付録)


参考文献/使用機器





フィードバック



にほんブログ村 その他趣味ブログ 電子工作へ

 ↑ 電子工作ブログランキング参加中です。1クリックお願いします。


コメント・トラックバックも歓迎です。 ↓      


 ↓ この記事が面白かった方は「拍手」をお願いします。

tag: AkaiKKR machikaneyama KKR CPA 起電力 マテリアルデザイン 

FC2カウンター
カテゴリ
ユーザータグ

LTspiceAkaiKKRScilabmachikaneyamaKKRPSoCOPアンプPICCPA強磁性モンテカルロ解析常微分方程式トランジスタode状態密度インターフェースDOSPDS5022ecaljスイッチング回路定電流半導体シェルスクリプトレベルシフト乱数HP6632A温度解析ブレッドボードI2CR6452A分散関係トランジスタ技術可変抵抗確率論数値積分反強磁性セミナー非線形方程式ソルバ絶縁バンドギャップ熱設計偏微分方程式バンド構造GW近似カオス三端子レギュレータLEDフォトカプラシュミットトリガISO-I2CA/DコンバータLM358USBカレントミラーTL431マフィンティン半径PC817C数値微分アナログスイッチ発振回路サーボ直流動作点解析74HC40532ちゃんねる標準ロジックチョッパアンプLDAアセンブラFFTbzqltyイジング模型ブラべ格子開発環境補間量子力学電子負荷BSchパラメトリック解析単振り子基本並進ベクトル熱伝導繰り返しGGAMaximaTLP621ewidthSMP相対論抵抗位相図ランダムウォークスピン軌道相互作用六方最密充填構造不規則合金FETコバルト失敗談QSGWcygwinスレーターポーリング曲線スイッチト・キャパシタラプラス方程式gfortranキュリー温度状態方程式条件分岐格子比熱TLP552LM555TLP521三角波NE555過渡解析FXA-7020ZRWriter509テスタ詰め回路MCUマントルダイヤモンドQNAPデータロガーガイガー管自動計測UPS井戸型ポテンシャルawk第一原理計算仮想結晶近似ブラウン運動差し込みグラフ平均場近似fsolve起電力熱力学OpenMPスーパーセル固有値問題最適化最小値VCAシュレディンガー方程式VESTAubuntu最大値面心立方構造PGAOPA2277L10構造非線型方程式ソルバ2SC1815fccフェルミ面等高線ジバニャン方程式ヒストグラム確率論マテリアルデザイン正規分布結晶磁気異方性interp1フィルタ初期値ウィグナーザイツ胞c/aルチル構造岩塩構造スワップ領域リジッドバンド模型edeltBaOウルツ鉱構造重積分SIC二相共存ZnOquantumESPRESSOCapSensegnuplotmultiplot全エネルギー固定スピンモーメントFSM合金ノコギリ波フォノンデバイ模型ハーフメタル半金属TeXifortTS-110不規則局所モーメントTS-112等価回路モデルパラメータ・モデルヒストグラムExcel円周率GimpトラックボールPC直流解析入出力文字列マンデルブロ集合キーボードフラクタル化学反応三次元Realforce縮退日本語最小二乗法関数フィッティング疎行列シンボル線種ナイキスト線図陰解法負帰還安定性熱拡散方程式EAGLECrank-Nicolson法連立一次方程式P-10クーロン散乱Ubuntu境界条件MBEHiLAPW軸ラベルトランスCK1026MAS830L凡例PIC16F785LMC662AACircuit両対数グラフ片対数グラフグラフの分割specx.f

最新コメント
リンク

にほんブログ村 その他趣味ブログ 電子工作へ