PWscfでZnOの構造緩和
入力ファイルのテンプレート
まずPWscfの入力作成補助で紹介したxlt2pw.pyを利用して、ZnOの入力ファイルの雛形を作ります。入力の元になるxtlファイルは、CIFからVESTAを通じて出力します。CIFはDFT計算用データベース MatNaviで紹介した無機材料データベース(AtomWork)などからダウンロードします。
xtl2pw.py ZnO.xtl vc-relax 1
cp ZnO.in ZnO.relax.in
擬ポテンシャルとカットオフエネルギー
PWscfの擬ポテンシャルを参考に入力ファイルを編集します。
擬ポテンシャルの種類には PAW ポテンシャルを選びました。
ATOMIC_SPECIES
Zn 65.38 Zn.pbe-dnl-kjpaw_psl.1.0.0.UPF
O 15.999 O.pbe-n-kjpaw_psl.0.1.UPF
カットオフエネルギーは、擬ポテンシャルファイルに書かれている推奨値を参考にします。波動関数のカットオフの推奨値は酸素の方が大きく、電荷密度の推奨値は亜鉛の方が大きいことに注意が必要です。それぞれ大きいほうの1.5倍ぐらいを選びました。
ecutwfc = 75.0 ,
ecutrho = 420.0 ,
圧力
圧力下の構造最適化を行うこともできます。その場合は
press
に圧力を設定します。単位は kbar です(1 GPa = 10 kbar)。原子位置の制約
xtl2pw.py の最後の入力パラメータは、原子位置の制約の有無に関連しています。
0 を入力すると全ての原子について位置の最適化を行います。
1 を入力すると結晶学的に動かなさそうな原子を固定して計算します。
下記は xtl2pw.py の最後のパラメータに 1 をしていた場合の入力ファイルです。原子の座標の後ろに更に3つの数字が続いていますが、これが原子を動かすか否かのフラグになっていて 0 なら固定、1 なら動かせることを意味しています。今回の例では、酸素原子のz方向だけ原子を最適化するようになっていることが分かります。
ATOMIC_POSITIONS crystal
Zn 0.333333 0.666667 0.000000 0 0 0
Zn 0.666667 0.333333 0.500000 0 0 0
O 0.333333 0.666667 0.389010 0 0 1
O 0.666667 0.333333 0.889010 0 0 1
入力ファイル
結局、入力ファイルは以下のようにしました。
&control
calculation='vc-relax' ,
restart_mode='from_scratch' ,
prefix='ZnO' ,
outdir = './ZnO/' ,
wfcdir = './ZnO/' ,
pseudo_dir = './' ,
disk_io='default' ,
forc_conv_thr= 0.001 ,
verbosity = 'default' ,
nstep = 100 ,
/
&system
ibrav= 4 ,
celldm(1) = 6.14709011 ,
celldm(3) = 1.60158627686 ,
nat = 4 ,
ntyp = 2 ,
ecutwfc = 75.0 ,
ecutrho = 420.0 ,
/
&electrons
electron_maxstep = 100 ,
mixing_beta = 0.7 ,
! use smaller conv_thr for better results ,
conv_thr = 1.0d-12 ,
/
&ions
ion_dynamics='bfgs' ,
/
&CELL
cell_dynamics = 'bfgs' ,
press = 0.001,
press_conv_thr = 0.05 ,
! cell_dofree = 'xyz' ,
/
ATOMIC_SPECIES
Zn 65.38 Zn.pbe-dnl-kjpaw_psl.1.0.0.UPF
O 15.999 O.pbe-n-kjpaw_psl.0.1.UPF
ATOMIC_POSITIONS crystal
Zn 0.333333 0.666667 0.000000 0 0 0
Zn 0.666667 0.333333 0.500000 0 0 0
O 0.333333 0.666667 0.389010 0 0 1
O 0.666667 0.333333 0.889010 0 0 1
K_POINTS automatic
6 6 4 0 0 0
結果
圧力を変化させながら格子定数がどのように変化するかを調べた結果が Fig.1 です。40 GPaまでは正常に圧縮されていっていますが 50 GPa で異常が見られます。
pwout2xtl.pyをもちいて出力したxtlファイルをVESTAで描画してみると、酸素原子のz位置が大きく動いて、結晶全体がc軸方向につぶれたことが良く分かります。
関連エントリ
参考URL
参考文献/使用機器
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tag: PWscf QuantumESPRESSO 最適化 ZnO