擬似Cカーブ可変抵抗の定数設計

LTspiceで擬似Cカーブ可変抵抗コメント欄にて、擬似Cカーブ可変抵抗の定数設計の実際について質問をいただきました。

擬似Cカーブ可変抵抗(Rc)は、Bカーブ可変抵抗(Rb)と並列に入れる固定抵抗(Rp)から構成されるためパラメータが二つ存在します。この二つのパラメータを上手に選ぶことによって擬似Cカーブ可変抵抗の抵抗値(Rc)とその曲率の二つを変化させることが出来ます。

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擬似Cカーブ可変抵抗


電子回路の「ボリューム・つまみ」として可変抵抗は頻繁に使用されますが、そのつまみの回転角と抵抗値の間の関係は『直線的なBカーブ』『指数関数的なAカーブ』に加えて『対数関数的なCカーブ』の3種類が存在します。

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しかしながら、前者2つと比べてCカーブの可変抵抗はほとんど使われることが無いため、電子工作部品としても入手がやや困難です。

このためLTspiceで擬似Cカーブ可変抵抗では、Bカーブの可変抵抗と並列に普通の固定抵抗を接続することで、抵抗値の変化を上に凸なCカーブ的なものに出来る事をシミュレーションから確認しました。

この記事に対して、コメント欄にて、通りすがりさんに設計に関する質問をいただきました。

はじめまして。
50kCカーブ2連ポットを探していてたどり着きました。
記事を拝見しましたが難しくて(^^;
50kCカーブを作ろうとしたら100kBカーブにどのくらいの抵抗を抱かせればいいのでしょうか?
ご教授いただければ幸いです。


そこで、今回のエントリでは、具体的に擬似Cカーブの可変抵抗を作るに当たっての定数設計に関して書きます。

並列抵抗Rpの計算式


設計する擬似Cカーブ可変抵抗の値をRc、使用するBカーブ可変抵抗の値をRb、並列に入れる固定抵抗の値をRpとします。

擬似Cカーブ可変抵抗Rcは、RbとRpの並列接続なのでその値は
\frac{1}{R_c}=\frac{1}{R_b}+\frac{1}{R_p} ・・・(1)
から
R_c = \frac{R_b R_p}{R_b + R_p} ・・・(2)
であると分かります。

これをRpについて解くと
R_p = \frac{R_b R_c}{R_b - R_c} ・・・(3)
となります。

Bカーブ可変抵抗Rbと並列抵抗Rpの決定


今回の計算例として通りすがりさんの値Rc=50kΩを使います。

(2)式からRcを決めるための未知数はRbとRpの2つあります。しかしながら、Rbは市販のBカーブ可変抵抗なので、おのずと選ぶことの出来る値が限られてきます。
入手性が良さそうで、並列にして50kΩが作れそうな抵抗値として、差し当たりRb = 100kΩ、150kΩ、200kΩ、500kΩあたりを検討することにします。

ここまででRc = 50kΩとRbの候補が4種類決まるので(3)式から、それぞれのRbに対応したRpが計算できます。

Bカーブ抵抗(Rb)並列抵抗(Rp)
100kΩ100kΩ
150kΩ75kΩ
200kΩ66.7kΩ
500kΩ55.6kΩ
table.1: Rc = 50kΩのときのRbとRpの組み合わせ


擬似Cカーブ可変抵抗の曲率


table.1に50kΩの擬似Cカーブ可変抵抗を構成することが出来るBカーブ可変抵抗と並列抵抗の組み合わせの例を挙げました。

では、これらは全て同じ特性となるのでしょうか?
―――答えはNOです。

このことを確認するためにLTspiceで擬似Cカーブ可変抵抗とほぼ同じ方法でLTspiceを用いて擬似Cカーブ可変抵抗の曲率を計算してみました。

ただし、グラフの横軸をBカーブ可変抵抗器の抵抗値にしてしまうとRbの値によって横軸がそろわなくなるので、多少トリッキーではありますがLTspiceで電圧制御抵抗(VCR)の方法を使いました。
fig.2の横軸の単位が電圧となっていますが、これは電圧ではなくBカーブ可変抵抗の回転角であると考えてください。0から1で端から端まで回しきるイメージです。

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fig.1: 擬似Cカーブ可変抵抗のスケマティック

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fig.2: 抵抗の組み合わせによる曲率の違い。横軸は電圧ではなく、可変抵抗の回転角と読み替えてください。(0で抵抗値が最小、1で最大。)


シミュレーション結果から、どの組み合わせであっても、つまみを最小から最大に回しきった時に設計どおり抵抗値が0Ωから50kΩまで変化することがわかります。
しかしながら、その曲率は抵抗の組み合わせによって異なっており、Bカーブ可変抵抗に大きい抵抗値を選ぶほど曲率が大きくなっています。

本物のCカーブ可変抵抗がこの中でどの曲率に一番近いのかは、残念ながら私は知りません。

対数的な変化をするCカーブ可変抵抗とは逆に、指数関数的な変化をするAカーブ可変抵抗は、オーディオの音量変化に頻繁に利用されます。これは、人間の五感が対数的な挙動を示すことが理由です。つまりオーディオのボリュームつまみに指数関数的なAカーブ可変抵抗を利用すると実際の音量も指数関数的に増えているにもかかわらず、人間の聴感からは直線的に音量が増えたように感じるということです。

Cカーブ可変抵抗もまた同様に、人間がつまみを回したときに『直線的に変化したな』と感じるような曲率になっているのが望ましいはずです。
実際のところ、私は擬似Cカーブ抵抗の使い道を自分でも良くわかっていないのですが、どういった曲率が人間にとって一番『しっくりくる』のかはカットアンドエラーで決めても良いのではないかと思います。

関連エントリ




付録


このエントリで使用したLTspiceのシミュレーション用ファイルを添付します。ファイル名末尾の".txt"を削除して、"_"を"."に変更すれば使えるはずです。(参考:ねがてぃぶろぐの付録)


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tag: LTspice 可変抵抗 

LTspiceで電圧制御抵抗(VCR)

LTspiceで回路シミュレーションにて、可変抵抗のシミュレーションをしたくなるときがしばしばあります。可変抵抗のシミュレーションにはいろいろ方法がありますが、今回は『過渡解析において、時間に依存して抵抗値の変わる抵抗モデル』を用いたシミュレーションについて書きます。

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○電圧制御電圧源
多くのSPICEは、電圧制御電圧源や電圧制御電流源のモデルを持っています。
これらは、2つのノード間の電位差に応じた出力を持ちます。

エレキジャックブログでもVoltage Dependent Voltage Source(電圧制御電圧源)の名前で特集が組まれています。

○電圧制御抵抗(Voltage Controlled Resister)
SPICEには多くの場合、可変抵抗に類するシミュレーションモデルがありません。そこで、上記の電圧制御電圧源と同様に、制御端子に印加された電圧によって抵抗値の変わる素子モデルで可変抵抗を表現しようとする試みがなされてきました。

eCircuit CenterのVoltage-Controlled Resistorが分かりやすいです。

○LTspiceの抵抗モデル
一方で、LTspiceの抵抗モデルは最初から抵抗値のパラメータをノードの電圧から設定できる機能があります。

バッファとヒステリシス その1のコメント欄にて、むらまつさんに以下のような質問をいただいたので、今回はヒステリシスコンパレータのシミュレーションを行います。

今、ヒステリシスを描きたい別の回路があります。単純化するためにコンパレータの入力の片側に電圧を入れておいて(帰還もさせています)、もう片側に抵抗で分圧して電圧を入れます。その抵抗値を上下に可変すると、コンパレータの出力がオンオフします。ヒステリシスをつけているのでオンするときと、オフするときの抵抗値が変わるはずなのですがうまくいきません。



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fig.1

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fig.2


○関連エントリ


○参考URL


○付録
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tag: LTspice 可変抵抗 過渡解析 

LTspiceでLED調光回路

LEDの調光回路について聞かれたので、30分ぐらいで簡単な回路を設計し、シミュレーションしました。
効率はかなり悪いですが、折角なのでそのLED調光回路のシミュレーションについて書いておきます。
可変抵抗で電流を調整し、カレントミラー回路でその電流をコピーするという構成です。
各LEDに流す電流は2-20mAで電源は5Vの安定化されたACアダプターで作ることにします。

【2009/04/30】シミュレーションに使うトランジスタモデルを変更しました。

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○要求仕様
求められた使用は以下のようなもの。


  • 電源はACアダプタで安定化された5V

  • LEDの順電流の可変範囲は2-20mA

  • LEDは白色(VF=3.5Vぐらい)

  • 並列数は9個

  • 1つの可変抵抗で調光



あとは、作る人がさほど電子工作が得意でなくても何とか作れるように部品点数が少ないというところでしょうか。

○カレントミラー
LEDの数が2この場合の回路をfig.1に示します。
R2は2kΩの可変抵抗で、この可変抵抗のつまみを回したときLED(D1)に流れる順電流がどのように変化するかシミュレーションしました。LEDのモデルQTLP690Cはおそらく赤LEDのモデルですが、トランジスタがが飽和しない範囲でなら(LEDの順電圧が3.5V程度を下回っている範囲でなら)何色のLEDでも挙動は、大きくは変わらないはずです。


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fig.1: LED数2のスケマティック

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fig.2: 可変抵抗R2の値とD1の順電流の関係


トランジスタのSPICEモデルは数理設計研究所さんのSpice Modelの物を使わせていただきました。
2SC1815のかわりにLTspice付属の2N3904のSPICEモデルを使うことにしました。

カレントミラー回路でQ1の電流が、Q2やQ3にコピーされます。LEDの順電圧特性にばらつきがってもほぼ同じ電流が流れることが期待できます。

○多LED化
出力がカレントミラー方式なので、簡単に並列化できます。fig.3,4にLEDの数を9個にした場合のシミュレーション結果を示します。


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fig.3: LED数9のスケマティック

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fig.4: 可変抵抗R2の値とD1の順電流の関係(並列数を増やしても変化していないことが分かる)


○関連エントリ


○参考URL


○付録
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LTspiceでサーミスタ(温度係数を持つ抵抗)

LTspiceで温度解析で、LTspiceを使って温度解析をする方法を書きました。トランジスタやダイオードといった半導体に関して、SPICEはその温度係数を表すパラメータを持っています。
しかしながら、温度係数を持つ部品はトランジスタとダイオードだけではありません。
普通の抵抗器も温度係数を持ちますし、積極的に温度係数を持たせて温度計として利用する素子としてサーミスタもあります。

これらのモデルは、通常の抵抗器のモデルの抵抗値のパラメータの部分に温度を表すtempを含む式を入力することで作ることができます。
今回は、この方法を用いてサーミスタのシミュレーションを行います。
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温度係数を持つ抵抗


はじめに温度係数(TEMPCO)を持つ抵抗のモデルです。
このモデルは、25℃で1kΩの抵抗値を持ち、1℃あたり0.3%の抵抗値変化をもつ抵抗器です。
抵抗値を入力する欄に{1k+3*(temp-25)}と入力します。


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fig.1: 温度係数を持つ抵抗モデルのスケマティック

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fig.2: 温度係数を持つ抵抗モデルのグラフ。横軸が温度で縦軸が抵抗値。


サーミスタ


つぎに温度係数を持つ抵抗のモデルよりも複雑な数式で表されるサーミスタのモデルです。
サーミスタは、温度変化に対して以下の式で表されるような抵抗値変化をする素子です。


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ここで、Rthは温度Tにおける抵抗値で、RrはTrのときの抵抗値です。Bはサーミスタ定数です。
ただし、TとTrは摂氏ではなく絶対温度です。
以下では、村田製作所のNTC型サーミスタNTH4G39A 10E02の定数を使ったモデルです。
抵抗値は25℃で10kΩでB=3900です。
抵抗値を入力する欄に{10k*exp(3900*((1/(temp+273.15))-(1/298.15)))}と入力します。


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fig.3: サーミスタモデルのスケマティック

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fig.4: サーミスタモデルのグラフ。横軸が温度で縦軸が抵抗値。

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fig.5: サーミスタモデルのグラフ。横軸が温度で縦軸が抵抗値の片対数グラフ。


温度補償


最初に取り上げた温度係数を持つ抵抗は、半導体の温度補償を行うために使われるようです。
pcm1723さんのブログSX-150 の VCO の温度補償 (2) -- 回路と LTSpice シミュレーション (2)のエントリでは温度補償用抵抗を用いた温度補償のシミュレーションが行われています。

関連エントリ




付録


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LTspiceで3端子可変抵抗

可変抵抗の可動片は機械的接点であるがゆえに、接触不良がおこりえます。
対策として可動片の端子を固定抵抗でプルダウンした場合ときに、並列に入れた抵抗によって回転角と出力電圧の間の関係がどの程度ひずむのかをLTspiceで確認しました。

やってみた結論は「あまり気にするほどの事はなかった」です。

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○可変抵抗の機械的接触部分
可変抵抗の使い方としては、2端子のものと3端子のものが考えられます。


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fig.1: 機械接点の接触不良対策


ところが、2端子の可変抵抗を売っているところを見かけたことがありません。そこで、よく売られている3端子の可変抵抗を利用します。この場合、可動片から出ている端子と両端の端子のどちらか一方を使えば2端子の可変抵抗となります。
しかしながら、こういう場合は可動片から出ている端子と両端の端子のうち使わなかったほうの端子をfig.1の上の図のように短絡して使います。

これは、可動片が機械的な接点であるため接触不良が起こる可能性があるので、最悪の場合でも回路がオープンにならないようにするためです。

同様の事は3端子の可変抵抗でもいえます。3端子可変抵抗の接点が浮くと電位が不定になります。そこで、接点が離れても電位が不定にならないようにするため、固定抵抗を使って電位を固定することを考えます。

○3端子可変抵抗
fig.1のように10kの可変抵抗の可動片からGND側に向けて並列抵抗Rpを付加した回路に対して、並列抵抗の値により回転角と出力電圧の非線形性にどの程度影響が出るかをLTspiceによるシミュレーションで見積もりました。


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fig.2: 3端子可変抵抗と並列に固定抵抗を付加

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fig.3:色(Rp)の対応は 黄緑(1k) 青(10k) 赤(100k)


可変抵抗Rに対して、Rpを10倍程度の大きさにとればほぼ非線形性は無視できるようです。

○付録
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