AkaiKKRでバンド構造(分散関係)

最新版(August 26, 2015)のAkaiKKR(machikaneyama)でバンド構造が簡単に描ける機能が追加されました。そのまま外部向けの文章(プレゼンテーションや論文など)に使うにはそっけないですが、計算の確認には便利です。

002_20150912192936f79.png

003_2015091219293582c.png
Fig.1-2: 面心立方構造(fcc)のNi90Fe10合金のバンド構造(upスピンとdownスピン)


今回は、この機能の使い方について書きます。


バンド構造計算の新機能


AkaiKKR(machikaneyama)では、バンド構造をプロットする代わりに、ブロッホスペクトル関数をプロットします。これまでもこの方法でバンド構造を描くことが可能でしたが、ブロッホスペクトル関数を計算するk点のパスを「全て」手動で設定しなければならなかったり、描画のためのgnuplotのスクリプトを自分で書かなければならなかったりと、不便がありました。(参考:AkaiKKRで不規則NiMn合金の分散関係AkaiKKRでSrTiO3ペロフスカイト)

August 26, 2015版のcpa2002v009cでは、これらの手間が随分と軽減される機能が新たに実装されました。この機能に関しては付属のReleaseNoteV009cに以下のように書かれています。(タイポと考えられる点は勝手に修正してあります。)

Another new feature provided by this version is the "spc" program that plots a dispersion relation (or broadened dispersion/Bloch spectrum function for alloy cases) if gnuplot is installed. If "spc" is specified instead of "go", then the program create data/file_up.spc and data/file_dn.spc, where data/file is the file specified as a data file in the input. Using the command

spc data/file_up.spc

will plot the dispersion on a gnuplot window. In the input data some additonal data specifying the symmetry points are needed in addition to the number of k-points that will be plotted.
For example, input data like

spc data/nife
fcc 6.65 , , , , , ,
0.001 1.0 nrl mjw mag 2nd
update 4 50 0.03
1
NiFe 2 1 0.0 2 26 40
28 60
1
0 0 0 NiFe
c------- below needed only for "spc" cases
c---number of k-point used for the plot
300
c--- W-point
1 0.5 0
c--- L-point
0.5 0.5 0.5
c--- Gamma-point
0 0 0
c--- X-point
1 0 0
c--- W-point
1 0.5 0
c--- K-point
0.75 0.75 0

will create data/nife_up.spc and data/nife_dn.spc.
Then

spc data/nife_up.spc
spc data/nife_dn.spc

plot the broadend dispersion curves for spin up and down states of Ni60Fe40 disorderd alloy along the W-L-Gamma-X-W-K symmetry lines using 300 k-points. To create the "spc" command, just type

make spc

This is a similar procedure to obtain "gdp" command that plot the DOS curve on a gnuplot window using "make gdp".


かなりいい加減な意訳をすると、以下のような感じでしょうか。

このバージョンのもう一つの新機能は"spc"というプログラムです。これはgnuplotがインストールされていれば、分散関係(合金の場合はにじんだ分散/ブロッホスペクトル関数)をプロットします。"go"の代わりに"spc"を指定することにより、specxプログラムはdata/file_up.spcとdata/file_dn.spcを作成します。ここでdata/fileは入力ファイルで指定されたデータファイルです。以下のコマンドを利用してgnuplotのウインドウ上に分散関係をプロットすることができます。

spc data/file_up.spc

入力ファイルには、通常の計算に加えていくつかのデータが必要になります。プロットする対称性の高いk点とその分割数です。
例えば、入力ファイルは以下のようになります。

spc data/nife
fcc 6.65 , , , , , ,
0.001 1.0 nrl mjw mag 2nd
update 4 50 0.03
1
NiFe 2 1 0.0 2 26 40
28 60
1
0 0 0 NiFe
c------- below needed only for "spc" cases
c---number of k-point used for the plot
300
c--- W-point
1 0.5 0
c--- L-point
0.5 0.5 0.5
c--- Gamma-point
0 0 0
c--- X-point
1 0 0
c--- W-point
1 0.5 0
c--- K-point
0.75 0.75 0

これはdata/nife_up.spcとdata/nife_dn.spcを作成します。

次に以下のコマンドを実行します。
spc data/nife_up.spc
spc data/nife_dn.spc

するとNi60Fe40合金のアップスピンとダウンスピンのにじんだ分散関係をW-L-Γ-X-W-Kの経路を300個のk点でプロットします。

表示のための"spc"実行ファイルを作成するには、以下のように端末に入力します。

make spc

これは状態密度曲線をgnuplotで表示する実行ファイル"gpd"を作成するために実行するmake gpdの手続きと同様です。


もはや上記の通りなのですがNi90Fe10合金のバンド構造を計算しています。

表示用プログラムspcのコンパイル


第一原理計算を実行する前に、結果をプロットするための実行ファイルをコンパイルします。コンパイラはifortでもgfortranでもコンパイル可能です。specxを作成したときと同様にAkaiKKRのインストールディレクトリに移動してmakeを利用します。

make spc

これで実行ファイルspcが作成されるはずです。

ポテンシャルファイルの作成


状態密度の計算と同様に、あらかじめgo計算を収束せてポテンシャルファイルを作成しておく必要があります。

./specx < in/nife


この際の入力ファイルは、AkaiKKRのインストールディレクトリにあるin/nifeを利用しました。

c--------------------NiFe------------------------------------
go data/nife
c------------------------------------------------------------
c brvtyp a c/a b/a alpha beta gamma
fcc 6.65 , , , , , ,
c------------------------------------------------------------
c edelt ewidth reltyp sdftyp magtyp record
0.001 1.0 nrl mjw mag 2nd
c------------------------------------------------------------
c outtyp bzqlty maxitr pmix
update 4 50 0.03
c------------------------------------------------------------
c ntyp
1
c------------------------------------------------------------
c type ncmp rmt field mxl anclr conc
NiFe 2 1 0.0 2
28 90
26 10
c------------------------------------------------------------
c natm
1
c------------------------------------------------------------
c atmicx atmtyp
0 0 0 NiFe
c------------------------------------------------------------


maxitr=50だとerr=-6まで達するのに2回ぐらい実行する必要があると思います。(参考:AkaiKKRでテスト計算)

バンド構造の計算


次にバンド構造を計算するための入力ファイルを作成します。
以下の内容のファイルをin/nife-spcとして保存しました。

c--------------------NiFe------------------------------------
spc data/nife
c------------------------------------------------------------
c brvtyp a c/a b/a alpha beta gamma
fcc 6.65 , , , , , ,
c------------------------------------------------------------
c edelt ewidth reltyp sdftyp magtyp record
0.001 1.0 nrl mjw mag 2nd
c------------------------------------------------------------
c outtyp bzqlty maxitr pmix
update 4 50 0.03
c------------------------------------------------------------
c ntyp
1
c------------------------------------------------------------
c type ncmp rmt field mxl anclr conc
NiFe 2 1 0.0 2
28 90
26 10
c------------------------------------------------------------
c natm
1
c------------------------------------------------------------
c atmicx atmtyp
0 0 0 NiFe
c------------------------------------------------------------
c------- below needed only for "spc" cases
c---number of k-point used for the plot
300
c--- W-point
1 0.5 0
c--- L-point
0.5 0.5 0.5
c--- Gamma-point
0 0 0
c--- X-point
1 0 0
c--- W-point
1 0.5 0
c--- K-point
0.75 0.75 0


go計算用の入力ファイルからの変更点はgoをspcにしたことと、ファイルの末尾にk点の分割数と計算するパスの対称性の高い点の座標を追加したことです。

これをspecxへ渡して.spcファイルを作成します。

./specx < in/nife-spc

するとdata/nife_up.spcとdata/nife_dn.spcが作成されます。
これらをそれぞれ実行ファイルspcへ渡せば、バンド構造が表示されます。

./spc data/nife_up.spc


補足


AkaiKKR(machikaneyama)のバージョンは、現在cpa2002v009cですが、この同じ名前のバージョンの中で頻繁に更新がされています。そんなわけで、バージョン名の代わりに公開された日付で、バージョンの違いを表しています。今回の記事ではAugust 26, 2015のバージョンを使って計算しています。

ブロッホスペクトル関数の計算における、入力ファイルと出力結果のフォーマットは、バージョンごとによく変更されるようです。今回の更新の前もAkaiKKRで不規則NiMn合金の分散関係のエントリを書いていた時期とAkaiKKRでSrTiO3ペロフスカイトのエントリを書いていた時期では出力のフォーマットが異なります。

今後、ねがてぃぶろぐでどのバージョンを使うかは、悩ましい問題ではありますが、おそらく今回(August 26, 2015)のバージョンよりも前の古いフォーマットのものを使い続けることになると思います。その理由は、AkaiKKRで銅と銅亜鉛合金のフェルミ面のような計算をする際に、任意のk点でブロッホスペクトル関数を指定できると便利だからです。

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tag: AkaiKKR machikaneyama KKR CPA 分散関係 バンド構造 不規則合金 

AkaiKKRで不規則NiMn合金の分散関係

密度汎関数法の発展で紹介されているニッケル-マンガン合金のブロッホスペクトル関数(バンド構造, エネルギー分散関係, E-k曲線)をAkaiKKR(Machikaneyama)を用いて計算し、不規則性の効果によりにじんだバンド分散関係の図が得られました。




AkaiKKRで不規則NiFe合金の強磁性では、AkaiKKR(Machikaneyama)を用いてfcc構造のニッケルと鉄を端成分とする固溶体合金の電子の状態密度を計算し、鉄の濃度の上昇により75%付近で強磁性が消失することを確かめました。

今回は、状態密度だけでなく電子のバンド構造(エネルギー分散関係,E-k曲線)を描画してみます。計算対象の物質は、密度汎関数法の発展で紹介されているニッケル-マンガン合金です。

入力ファイル


セルフコンシステント計算(go)と状態密度計算(dos)のための入力部分はAkaiKKRで不規則NiFe合金の強磁性のものとほぼ同じで固溶させる原子の番号が26(Fe)から25(Mn)に変更された程度です。前回は、たくさんの組成に対して計算を行いましたが、今回は純粋なニッケルとニッケルに15%マンガンを固溶させたものの2つの組成だけを計算しました。

その代わり電子の分散関係を描画するためのブロッホスペクトル関数の計算(spc)を行います。
この計算には、計算を行うk点をk空間での座標で指定する必要があります。このときの座標は 2π/a で規格化されているので格子定数 a が異なる結晶でも同じ結晶構造なら使いまわすことが出来ます。


001_20130120185338.png

Fig.1: fcc構造の第一Brillouin Zone(Wikipediaより転載)

W1/200
L1/21/21/2
Γ000
X001
W1/201
K3/403/4
table.1: 計算するk点のパス


k点のパスの選び方はどう取るのがよいのかいまいち良く分からないのですが、table.1のk点を通るようにし、それぞれの特徴的なk点の間を100点ずつ計算することとしました。(密度汎関数法の発展のパスのとり方と違ってしまいました・・・すみません。)

最終的な入力ファイルは、NiMn_in.txtとなりました。

specx.fの編集


おそらくCygwinでAkaiKKR(Machikaneyama)のspecx.fの設定では、nk1xかnk3xのあたりが不足してしまうと思います。私が今回の入力ファイルを計算したときのspecx.fの設定は下記の通りです。

     & (natmmx=4, ncmpmx=4, msizmx=198, mxlmx=3, nk1x=2200, nk3x=2688,
& msex=201, ngmx=15, nrpmx=650, ngpmx=650, npmx=350, msr=400)

specx.fを編集したらふたたびmakeします。

gnuplotで分散関係(E-k曲線)の描画


以上のような設定で計算を実行するとdataディレクトリにni.spcやni85mn15.spcといったファイルが出来ます。(ファイル容量が5MBと大きいため、fc2blogにはアップロードできませんでした。)

これらのファイルは、入力ファイルで指定したk点の座標(波数ベクトル:k)ごとに、エネルギー(E)とブロッホスペクトル関数(A(k,E))の値が書かれています。これを、横軸に波数ベクトルk、縦軸にエネルギーEをとり、ブロッホスペクトル関数A(k,E)を色の濃淡で表すことを考えます。

これをどのように実現するのがベターなのか、私には自信がありませんが、gnuplotではカラーマップを使った2次元プロット(pm3d map)で描画できそうです。

入力のデータ形式は3次元データのフォーマットの様にx,y,zの組で与える必要があります。ni.spcをみるとyとzに相当するエネルギーEとブロッホスペクトル関数A(k,E)の値は既に組になって書かれているので、1列目にx軸の数値を補ってやる必要があります。

k点のパスは W → L → Γ → X → W → K なので、この順に道のりの長さをx軸の数値にします。
三次元空間の2点間の距離は

\sqrt{(x_2 - x_1)^{2} + (y_2 - y_1)^{2} + (z_2 - z_1)^{2}}


なのでパスの最初の点であるWからの道のりの長さはそれぞれtable.2のようになります。ここの計算は簡単なスクリプトで自動化できるのだろうとは思うのですが、差し当たりExcelでちまちま計算しました。一度計算すれば(結晶構造が同じでエネルギーメッシュやk点の分解能が同じなら)コピー&ペーストで使いまわせます。(fc2blogの容量制限でアップローで出来ずすみません。)時間が出来たらなんらかのスクリプトを書こうと思います。

W0
L0.70710678
Γ1.57313218
X2.57313218
W3.07313218
K3.42668558
table.2: W点からの逆格子空間の道のり


目盛見出しの「目盛見出しを任意の文字に変更する」の方法を使えばx軸の値を文字列に置き換えられます。ラベルにα,βの様なギリシャ文字を使いたいの方法でギリシャ文字を含むラベルがかけます。リンク先の例ではpostscriptのターミナルでしか使えないようにも見える記述ですが、
gnuplot > set terminal windows enhanced

gnuplot > set terminal png enhanced
も可能です。
table.2の対応を考慮して
set xtics   ("{W}" 0.000000, "{L}" 0.707107, "{/Symbol G}" 1.57313, "{X}" 2.57313, "{W}" 3.07313, "{K}" 3.42669)
としました。

計算結果: 純ニッケル


以降は計算結果です。まずは純ニッケルについて。


002_20130120185338.png

Fig.2: Niの状態密度


Fig.2は、AkaiKKRで不規則NiFe合金の強磁性のときと全く同じ計算で、上半分が上向きスピンの状態密度、下半分が下向きスピンの状態密度で、エネルギーの原点がフェルミ面です。

003_20130120185338.pngFig.3: Niの上向きスピンの分散関係004_20130120185337.pngFig.4: Niの下向きスピンの分散関係


Fig.3-4は、ニッケルのバンド分散関係を上向きスピン、下向きスピン別々にプロットしたものです。どちらも似たような形をしていますが、フェルミ面が曲線の傾きが小さいバンドの密集しているところを横切っている(下向きスピン)かそれよりも高いところを横切っているか(上向きスピン)の違いがわかります。これは、状態密度の図(Fig.2)でフェルミ面が、下向きスピンでは状態密度の高いところにあり、上向きスピンでは低いところにあることと対応しています。

計算結果: Ni0.85Mn0.15


次にニッケルマンガン合金の計算結果です。


005_20130120185337.png

Fig.5: Ni0.85Mn0.15の状態密度


ニッケルの状態密度は、鋭いピークを持った形状をしていましたが、ニッケルマンガン合金は俄然ブロードな形となっています。

006_20130120185337.pngFig.6: Ni0.85Mn0.15の上向きスピンの分散関係007_20130120185347.pngFig.7: Ni0.85Mn0.15の下向きスピンの分散関係


ブロードな状態密度の形状は、分散関係の図でバンドを示す線がにじんでしまっていることと対応付けられます。(Fig.3-4の段階で既に線がにじんでしまっているように見えますが、これは本来シャープな曲線のはずです。にじんでしまっているように見えるのは、おそらく、私の技術的な問題です。)

密度汎関数法の発展には、このことに関して以下のようにあります。

Ni0.85Mn0.15合金のエネルギー分散の図が本を水でぬらしてしまったようにところどころにじんでいるのがわかる。これは印刷の失敗でも汚れでもなくて、まさに不規則性の効果が現れたものである。Niの場合には系が規則的なために結晶運動量hk/2πが良い量子数となって固有エネルギーを決定するのに対して、Ni0.84Mn0.15合金では系がもはや規則的でないために結晶運動量hk/2πについて固有状態が得られずブロッホスペクトル関数が広がってしまうのである。


関連エントリ




参考URL




付録


このエントリで使用したAkaiKKRの入力ファイルを添付します。


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tag: AkaiKKR machikaneyama KKR CPA 分散関係 バンド構造 不規則合金 

AkaiKKRで不規則NiFe合金の強磁性

計算機マテリアルデザイン入門 (大阪大学新世紀レクチャー)で紹介されている不規則NiFe合金の状態密度をAkaiKKR(Machikaneyama)を利用して計算しました。

NiFe.gif
Fig.1: NiFe合金の状態密度


その結果、NiFe合金は65%以上のFe濃度から急激に(特に上向きスピンの)状態密度の形状が変化し、75%Fe程度で強磁性を失うことが確認できました。


コヒーレントポテンシャル近似(CPA)


第一原理バンド計算法は、結晶構造の周期性を利用して計算を行っているため、ランダムに原子が置換している不規則合金の計算を苦手としています。比較的よく利用されている解決策は、複数の単位格子を合わせて大きな単位格子(スーパーセル)をつくり、その中の原子を不純物原子に置き換えて計算を行うというものです。しかしながら、この方法では希薄な不純物合金の計算をするためには大きなスーパーセルが必要となるため計算量が増えるという問題点もあります。

コヒーレントポテンシャル近似(coherent potential approximation: CPA)は、こういった問題を解決するために考案された近似法で、TB(tight-banding)法やKKR(Korringa-Kohn-Rostoker)法といったバンド計算法と組み合わせて不規則合金の電子構造を計算することが出来ます。CPAの解説記事としてはコヒーレント・ポテンシャル近似 CPA-1--2-CPAの応用(米沢富美子 固体物理 1971, 1972)などがあるようです。AkaiKKR(Machikaneyama)は、大阪大学の赤井久純先生が公開されているKKR-CPAを用いた第一原理計算パッケージです。

CygwinでAkaiKKR(Machikaneyama)ではWindows上でAkaiKKR(Machikaneyama)を利用する方法を書きました。今回はCPAの応用として良く挙げられているfcc構造のニッケル-鉄合金の状態密度計算を行いました。(参考: 計算機マテリアルデザイン入門 (大阪大学新世紀レクチャー))


入力ファイル


入力ファイルには、複数の計算設定を順に書いておくことによって、一挙に計算をさせることが出来ます。下記にNiとNi95Fe5の計算部分を示します。実際の入力ファイルは5%ずつ鉄の濃度を振ってfcc構造の純鉄まで計算を行いました。(NiFe_in.txt)

c ***********************************************
c pure Nickel
c ***********************************************
c *** Self-consistent calculation ***
go data/ni
fcc 6.67 , , , , , ,
0.001 1.2 nrl mjw mag init
update 4 100 0.02
1
Ni 1 0 0 2 28 100
1
0 0 0 Ni
c *** Density of States (DOS) calculation ***
dos data/ni
fcc 6.67 , , , , , ,
0.001 1.2 nrl mjw mag 2nd
update 13 100 0.02
1
Ni 1 0 0 2 28 100
1
0 0 0 Ni

c ***********************************************
c Nickel + 5% Iron
c ***********************************************
c *** Self-consistent calculation ***
go data/ni95fe5
fcc 6.67 , , , , , ,
0.001 1.2 nrl mjw mag init
update 4 100 0.02
1
NiFe 2 0 0 2 28 95
26 5
1
0 0 0 NiFe
c *** Density of States (DOS) calculation ***
dos data/ni95fe5
fcc 6.67 , , , , , ,
0.001 1.2 nrl mjw mag 2nd
update 13 100 0.02
1
NiFe 2 0 0 2 28 95
26 5
1
0 0 0 NiFe


格子定数はCygwinでAkaiKKR(Machikaneyama)のときと同様に a = 6.67 (bohr)としFeの濃度にかかわらず一定となるようにしました。描画する状態密度をきれいにするためにdos計算のbzqltyは前回よりも大きくしてあります。bzqlty=13は、前回のspecx.fの設定を用いたfcc構造の計算では最大の値です。13よりも大きい数を設定すると、計算の途中でspecx.exeが停止します。したがって、これ以上見栄えの良いDOSを描きたければ、specx.fのnk1mxとnk3mxを大きな値に修正した後、再びmakeをする必要があります。

結果


以下に、ニッケルに0-100%の鉄を固溶させた合金を5%ごとに計算した状態密度を示します。


000Fe.png
Fig.2: Pure Nickel

005Fe.png
Fig.3: Nickel + 5% Iron

010Fe.png
Fig.4: Nickel + 10% Iron

015Fe.png
Fig.5: Nickel + 15% Iron

020Fe.png
Fig.6: Nickel + 20% Iron

025Fe.png
Fig.7: Nickel + 25% Iron

030Fe.png
Fig.8: Nickel + 30% Iron

035Fe.png
Fig.9: Nickel + 35% Iron

040Fe.png
Fig.10: Nickel + 40% Iron

045Fe.png
Fig.11: Nickel + 45% Iron

050Fe.png
Fig.12: Nickel + 50% Iron

055Fe.png
Fig.13: Nickel + 55% Iron

060Fe.png
Fig.14: Nickel + 60% Iron

065Fe.png
Fig.15: Nickel + 65% Iron

070Fe.png
Fig.16: Nickel + 70% Iron

075Fe.png
Fig.17: Nickel + 75% Iron

080Fe.png
Fig.18: Nickel + 80% Iron

085Fe.png
Fig.19: Nickel + 85% Iron

090Fe.png
Fig.20: Nickel + 90% Iron

095Fe.png
Fig.21: Nickel + 95% Iron

100Fe.png
Fig.22: Pure fcc Iron


強磁性の消失


ニッケル-鉄合金の強磁性は、実験から約74%Feで消失することが知られています。
今回計算した結果の図は、上半分が上向きスピン、下半分が下向きスピンの状態密度をあらわしています。強磁性の消失は、75%Fe(Fig.17)で上下対称な図になっていることから読み取れます。

不規則合金の電子構造を理解するにあたってリジッドバンドモデル(固定バンドモデル、Rigid band model)が良く持ち出されるが、コヒーレント・ポテンシャル近似と合金の強磁性(金森順次郎 (1972) 固体物理)によると不規則NiFe合金の強磁性の消失は、一見リジッドバンドモデルで説明が付く様に見えるが、平均電子数の変化によるフェルミ準位の位置の変化が本質では無いとのことです。

関連エントリ




参考URL




付録


このエントリで使用したAkaiKKRの入力ファイルを添付します。


参考文献/使用機器






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