Scilabで一次元のラプラス方程式 その3

Scilabで一次元のラプラス方程式 その1その2では一次元のラプラス方程式を 0 ≦ x ≦ 1 の範囲で以下の様なディリクレの境界条件で解きました。

一次元ラプラス方程式:
\frac{\partial^2 u}{\partial x^2} = 0

ディリクレ境界条件:
u = 1 (x = 0)
u = 0 (x = 1)

今回は、同様の方程式を x = 0 に関して以下の様なノイマンの境界条件で解きました。

ノイマン境界条件:
∂u/∂x = -1 (x = 0)


ラプラス方程式と境界条件


Scilabで一次元のラプラス方程式 その1その2では一次元のラプラス方程式をScilabを用いて数値的に解きました。

\frac{\partial^2 u}{\partial x^2} = 0

偏微分方程式を解くためには、この式のほかに幾つかの境界条件が必要です。
偏微分方程式の数値解法入門によると偏微分方程式の境界条件に関して以下の様に書かれています。

境界上においてuの値(関数値)が指定されている境界条件を第1種の境界条件あるいディリクレ(Dirichlet)の境界条件という.
一方,境界上でその境界の外向き法線方向nの微分係数∂u/∂nが指定されている場合がある.これを第2種の境界条件あるいはノイマン(Neumann)の境界条件という.

Scilabで一次元のラプラス方程式 その1その2、及びScilabで熱拡散方程式 その1その2その3は全てディリクレの境界条件でした。そこで今回は、一次元のラプラス方程式を境界の片側をノイマンの境界条件で、反対側をディリクレの境界条件として数値的に解くことにします。

連立方程式の立て方はScilabで一次元のラプラス方程式 その1の流儀で行きます。

問題設定


解くべき方程式は、一次元のラプラス方程式です。

\frac{\partial^2 u}{\partial x^2} = 0

ただし 0 ≦ x ≦ 1
境界条件は

x = 0 にて
\frac{\partial u}{\partial x} = -1

x = 1 にて
u = 0

とします。


001_20140220011035c9c.png
Fig.1: 計算の設定(と計算結果)


まず前回までと同様にディリクレ境界条件と偏微分方程式から以下の連立方程式が立ちます。

u1 - 2u2 + u3 = 0
u2 - 2u3 + u4 = 0
u3 - 2u4 + u5 = 0
u5 = 0

当然ながらこれだけでは変数の数に対して方程式の数が足りないので、ノイマンの境界条件についても考えます。1階の偏微分をを前進差分近似で表すと以下の様になります。

\frac{\partial u}{\partial x} = \frac{u_{i+1} - u_{i}}{\Delta x}

より良い精度で計算をするためには(-Δx,u0)の点も用意して中心差分近似を使うべきなのでしょうが、今回は前進差分近似で済ませることにします。

これがx = 0 で ∂u/∂x = -1 なので

\frac{u_2 - u_1}{\Delta x} = -1

したがって

u1 - u2 = Δx

結局、連立方程式は以下の様になります。

u1 - u2 = Δx
u1 - 2u2 + u3 = 0
u2 - 2u3 + u4 = 0
u3 - 2u4 + u5 = 0
u5 = 0

これをScilabで連立一次方程式の方法で解くプログラムがLaplace1d3_sce.txtです。

clear;

// xの刻み幅
dx = 1 / 4;
// グラフ用のx座標
x = [0:dx:1];

// *** 連立方程式の定義 ***
A = [1 -1 0 0 0;
1 -2 1 0 0;
0 1 -2 1 0;
0 0 1 -2 1;
0 0 0 0 1];
b = [dx;
0;
0;
0;
0];

// *** ラプラス方程式の解 ***
u = A \ b;

// *** グラフのプロット ***
// グラフのプロット
plot(x,u,'-ob');
// グラフの装飾
xlabel("x");
ylabel("u");
zoom_rect([0,0,1.2,1.2]);


境界条件の意味


ラプラス方程式は、熱拡散方程式や波動方程式の時間微分の項をゼロと置いたものでした。従って一次元のラプラス方程式自体の物理的なイメージは、例えば、充分に長い時間を置いた針金の中の温度分布などとして理解できます。

Scilabで熱拡散方程式 その1その2その3で分かるとおり、ディリクレの境界条件は、境界での温度を指定することに対応します。
一方で、ノイマンの境界条件は、境界での温度勾配を指定することに対応します。熱伝導に対するフーリエの法則は以下の様に表すことができます。

q = k \frac{\partial T}{\partial x}

(q: 熱フラックス, k: 熱伝導度, T: 温度, x: 位置)

フーリエの法則の式から明らかなように、境界での温度勾配を指定するということは、境界での熱流量を指定することと同じです。特に ∂T/∂x = 0 の場合は、熱流量がゼロということなので、境界が断熱的であることを意味しています。

関連エントリ




付録


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Scilabで一次元のラプラス方程式 その2

Scilabで一次元のラプラス方程式 その1ではラプラス方程式を差分化し連立一次方程式にした後、Scilabで連立一次方程式の方法で計算しました。

今回もほぼ全く同じ事を行うのですが、境界条件の部分を連立方程式にあらかじめ代入してしまうことで行列の大きさを少しだけ小さくしました。


001_20140217071734b51.png
Fig.1: ラプラス方程式の数値解



問題設定


Scilabで一次元のラプラス方程式 その1と同様に、一次元のラプラス方程式を数値的に解きます。

\frac{\partial^2 u}{\partial x^2} = 0

ただし 0 ≦ x ≦ 1 で境界条件は以下の通りです。

u = 1 (x = 0)
u = 0 (x = 1)

ここまでは前回と完全に同じです。

別解


前回とほぼ同じ内容ですが、行列のサイズを小さくするために表記を少し工夫します。

問題設定自体は同じですが、空間の分割数をひとつ増やします。それに伴って添え字を1からでは無く0からに変更しています。すなわち境界条件は u0=1, u4=0 です。

境界条件の部分を除いた連立方程式は以下の様になります。

u0 - 2u1 + u2 = 0
u1 - 2u2 + u3 = 0
u2 - 2u3 + u4 = 0

これに境界条件 u0=1, u4=0 を代入すると

-2u1 + u2 = -1
u1 - 2u2 + u3 = 0
u2 - 2u3 = 0

となります。

A = \begin{pmatrix} -2 & 1 & 0 \\ 1 & -2 & 1 \\ 0 & 1 & -2 \\ \end{pmatrix}

\mathbf{u} = \left( \begin{array}{c} u_1 \\ u_2 \\ u_3 \end{array} \right)

\mathbf{b} = \left( \begin{array}{c} -1 \\ 0 \\ 0 \end{array} \right)

とおけば、連立方程式を行列の形式で表すことができ

Au = b

やはりScilabで連立一次方程式の方法で計算することが出来ます。

今回の計算では、空間分解能が高くなったにもかかわらず、行列の大きさが小さくなっていることが分かると思います。まあ、あらかじめ境界条件の部分を代入して連立する方程式の数を2つ減らしただけですが。

Scilabで熱拡散方程式 その3 (陰解法)では、Octaveの精義の流儀に従っていますが、これは今回の方法と同じです。

一方、偏微分方程式の差分解法入門(PDF)前回の様に境界条件まで行列の中に含める方法を採っています。

関連エントリ




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Scilabで一次元のラプラス方程式 その1

Scilabで熱拡散方程式 その1その2その3では一次元の熱拡散方程式をScilabで数値的に解きました。今回はこれらプログラムをよりよく理解するために、より簡単な一次元のラプラス方程式を解いてみます。

\frac{\partial^2 u}{\partial x^2} = 0

実を言うと一次元のラプラス方程式は、Scilabで連立一次方程式で計算した連立一次方程式になってしまうので簡単に計算することが出来ます。


ラプラス方程式


ラプラス方程式は、熱拡散方程式や波動方程式に対して、時間の偏微分の項をゼロとしたものです。

2u=0

一次元の場合は

\frac{\partial^2 u}{\partial x^2} = 0

です。

時間による偏微分がゼロということなので、この式は定常状態の物理現象を表しています。

ラプラス方程式の解法


一次元のラプラス方程式を、0 ≦ x ≦ 1 の範囲で、下記の境界条件で解くことを考えます。

u = 1 (x = 0)
u = 0 (x = 1)

この解は、数値計算をするまでもなく直感的に (x,u)=(0,1) と (1,0) を通る直線となることが想像できます。

つまり

u = 1 - x

です。

このことを実際に差分化を行った数値計算から確認します。
簡単のため、空間の分割数は極端に少なくすることにします。(Fig.1)


001_201402170611560b6.png
Fig.1: ラプラス方程式の差分化


2u/∂x2 を差分化すると

\frac{\partial^2 u}{\partial x^2} = \frac{1}{(\Delta x)^2} (u_{i+1} - 2u_{i} + u_{i-1})

ラプラス方程式は ∂2u/∂x2 = 0 なので差分化したラプラス方程式は

ui+1 - 2ui + ui+1 = 0

となります。(参考:偏微分方程式の数値解法入門)

先ほどの境界条件とあわせると

u1 = 1
u1 - 2u2 + u3 = 0
u2 - 2u3 + u4 = 0
u4 = 0

となり、これは実のところScilabで連立一次方程式で解いた連立一次方程式以外の何物でもありません。

よって行列Aとベクトルu, bを以下の様におくと

A = \begin{pmatrix} 1 & 0 & 0 & 0 \\ 1 & -2 & 1 & 0 \\ 0 & 1 & -2 & 1 \\ 0 & 0 & 0 & 1 \\ \end{pmatrix}

\mathbf{u} = \left(   \begin{array}{c}     u_1 \\     u_2 \\     u_3 \\     u_4   \end{array} \right)

\mathbf{b} = \left(   \begin{array}{c}     1 \\     0 \\    0 \\     0   \end{array} \right)

連立方程式は、以下の様に行列の式で表現することが出来ます。

Au=b

Scilabで連立一次方程式と同様に計算すればラプラス方程式が解けたことになります。

clear;

// *** 連立方程式の定義 ***
A = [1 0 0 0;
1 -2 1 0;
0 1 -2 1;
0 0 0 1];
b = [1;
0;
0;
0];

// *** ラプラス方程式の解 ***
u = A \ b;

// *** グラフのプロット ***
// グラフ用のx座標
x = linspace(0,1,4);
// グラフのプロット
plot(x,u,'-ob');
// グラフの装飾
xlabel("x");
ylabel("u");
zoom_rect([0,0,1.2,1.2]);


関連エントリ




参考URL




付録


このエントリで使用したScilabのシミュレーション用ファイルを添付します。ファイル名末尾の".txt"を削除して、"_"を"."に変更すれば使えるはずです。(参考:ねがてぃぶろぐの付録)


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