Scilabで規則ポテンシャルと縮退

Scilabで一次元井戸型ポテンシャルでは、時間に依存しないシュレディンガー方程式を、固有値問題と考えて固有方程式を解くためのScilab関数であるspecを用いました。

H \phi = E \phi

(H: ハミルトニアン, φ: 波動関数, E: 固有エネルギー)

今回は、これを応用して規則的なポテンシャルの中では、ポテンシャルの高さが大きくなるにつれてエネルギー固有値が縮退することを確認しました。

001_2013081221404272f.png

Fig.1: 規則的ポテンシャルと波動関数



Scilabで一次元井戸型ポテンシャルでは、無限の高さを持つ一次元井戸型ポテンシャルの中に有限の高さを持つポテンシャル壁をひとつだけ置いたときの時間に依存しないシュレディンガー方程式を解き、波動関数を求めました。

今回は、微分方程式による物理現象のモデル化(PDF)に従って井戸の中に複数のポテンシャル壁が規則的に並んだ場合の計算を行います。

複数のポテンシャル壁がある平坦な井戸


プログラムの基本はScilabで一次元井戸型ポテンシャルと同様です。

Fig.1は規則的なポテンシャルと波動関数をプロットしたものです。
ポテンシャルの谷の部分の波動関数の値が高く、存在確率が高いことを表しています。

次にポテンシャルの高さを変えながら固有状態と固有エネルギーの関係をプロットしたものをFig.2に示します。

002_20130812214042142.png

Fig.2: 固有状態kに対するエネルギー固有値Ekの対応関係


関連エントリ




参考URL




付録


このエントリで使用したScilabのシミュレーション用ファイルを添付します。ファイル名末尾の".txt"を削除して、"_"を"."に変更すれば使えるはずです。(参考:ねがてぃぶろぐの付録)


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tag: Scilab シュレディンガー方程式 量子力学 固有値問題 井戸型ポテンシャル 縮退 

Scilabで一次元井戸型ポテンシャル

微分方程式による物理現象のモデル化(PDF)では、Octaveを用いていろいろな物理現象の数値計算を行っています。
今回は、その中のひとつである量子力学の問題をScilabでプログラミングします。

002_2013080422573295f.png

Fig.1: 無限高さの井戸型ポテンシャルの中に有限高さのポテンシャル壁がある場合



時間に依存しないシュレディンガー方程式


一次元のシュレディンガー方程式は、以下の様にあらわされます。

i \hbar \frac{\partial \psi(x,t)}{\partial t} = \left(- \frac{\hbar^2}{2m}\frac{\partial^2}{\partial x^2} + V(x) \right)\psi(x,t)

ここで

H = - \frac{\hbar^2}{2m}\frac{\partial^2}{\partial x^2} + V(x)

をハミルトニアンと呼びます。ハミルトニアンが時間に依存しないときは、波動関数ψ(x,t)は

\psi(x,t) = \phi(x)\exp\left(-\frac{i E t}{\hbar} \right)

のように変数分離できます。

このとき、以下のように時間に依存しないシュレディンガー方程式がえられます。(最早、変数がxだけになったので∂2/∂x2はd2/dx2と書きます。)

\left(-\frac{\hbar^2}{2m}\frac{\mathrm{d}^2}{\mathrm{d}x^2} + V(x) \right) \phi(x) = E \phi(x)

まず、数値計算をする上で定数の係数は面倒なだけなので、原子単位系のように

\frac{\hbar^2}{2m} = 1

と置きます。時間に依存しないシュレディンガー方程式をもう一度書き直すと

\left(-\frac{\mathrm{d}^2}{\mathrm{d} x^2} + V(x) \right)\phi(x) = E \phi(x)

となり、ハミルトニアンは

H = -\frac{\mathrm{d}^2}{\mathrm{d} x^2}+V(x)

となります。

今回はこの方程式をScilabによって数値的に解きます。

固有値問題


行列A、ベクトルxに対して

Ax = \lambda x

を満たすλ(スカラー)を行列Aの固有値、xを固有ベクトルといいます。

時間に依存しないシュレディンガー方程式もこの形をしており

H \phi = E \phi

A = H: ハミルトニアン
x = φ: 固有ベクトル = 波動関数
λ = E: 固有値 = 固有エネルギー

という関連になっています。

行列Aに対する固有値と固有ベクトルの組み合わせは複数あります。
Scilabではspecで簡単に計算することが出来ます。(参考:固有値問題)

固有ベクトルV, 対角成分に固有値λを並べた行列Dは
[V, D] = spec(A);

で計算できます。

D = <br />\left(<br />\begin{array}{cccc}<br />\lambda_1 & 0 & \hdots & 0 \\<br />0 & \lambda_2 & & \vdots \\<br />\vdots & & \ddots & 0 \\<br />0 & \hdots & 0 & \lambda_n<br />\end{array}<br />\right)  V = <br />\left\{<br />\left(<br />\begin{array}{c}<br />x_{1,1} \\<br />x_{2,1} \\<br />\vdots \\<br />x_{n,1}<br />\end{array}<br />\right)<br />\cdots<br />\left(<br />\begin{array}{c}<br />x_{1,n} \\<br />x_{2,n} \\<br />\vdots \\<br />x_{n,n}<br />\end{array}<br />\right)<br />\right\}

したがって、時間に依存しないシュレディンガー方程式を解くために必要なことは、行列A、すなわちハミルトニアンHをどのような行列としてあらわすかという問題であると言えます。

ハミルトニアンを行列として表現する


基本的な考え方はシュレーディンガー方程式を行列風に描くの通りです。

まずハミルトニアンの前半部分である∂2/∂x2から行きます。
微分の定義から、充分小さいhを考えれば、微分は差分に置き換えることが出来ます。

\frac{\mathrm{d}}{\mathrm{d}x}\phi(x) = \frac{\phi(x+h)-\phi(x)}{h}

\frac{\mathrm{d}}{\mathrm{d}x}\left( \frac{\mathrm{d}}{\mathrm{d}x}\phi(x) \right) = \frac{\frac{\phi(x+h)-\phi(x)}{h}-\frac{\phi(x)-\phi(x-h)}{h}}{h}

2階の微分はこれらを組み合わせて

\begin{eqnarray*}<br />\frac{\mathrm{d}}{\mathrm{d}x}\left( \frac{\mathrm{d}}{\mathrm{d}x}\phi(x) \right) & = & \frac{\frac{\phi(x+h)-\phi(x)}{h}-\frac{\phi(x)-\phi(x-h)}{h}}{h} \\<br />& = & \frac{\phi(x+h)-2\phi(x)+\phi(x-h)}{h^2}<br />\end{eqnarray*}

シュレーディンガー方程式を行列風に描くに倣って行列風に書き下すと

- \frac{\mathrm{d}^2}{\mathrm{d}x^2} = <br />\left(<br />\begin{array}{ccccccc}<br />\frac{2}{h^2} & -\frac{1}{h^2} & 0 & \hdots & & \hdots & 0 \\<br />-\frac{1}{h^2} & \frac{2}{h^2} & -\frac{1}{h^2} & 0 & \hdots & & \vdots \\<br />0 & -\frac{1}{h^2} & \frac{2}{h^2} & -\frac{1}{h^2} & 0 & \hdots & \\<br />\vdots & \ddots & \ddots & \ddots & \ddots & \ddots & \vdots \\<br />& \hdots & 0 & -\frac{1}{h^2} & \frac{2}{h^2} & -\frac{1}{h^2} & 0 \\<br />\vdots &  & \hdots & 0 & -\frac{1}{h^2} & \frac{2}{h^2} & -\frac{1}{h^2} \\<br />0 & \hdots &  & \hdots & 0 & -\frac{1}{h^2} & \frac{2}{h^2}<br />\end{array}<br />\right)


ポテンシャルは、対角成分にポテンシャルの値を入力するだけです。
xiにおけるポテンシャルをvi=V(xi)とおくと、最終的なハミルトニアンは以下のようになります。

\begin{eqnarray*}<br />H &=& - \frac{\mathrm{d}^2}{\mathrm{d}x^2} + V \\<br />&=& \left(<br />\begin{array}{ccccccc}<br />\frac{2}{h^2} + v_1 & -\frac{1}{h^2} & 0 & \hdots & & \hdots & 0 \\<br />-\frac{1}{h^2} & \frac{2}{h^2} + v_2 & -\frac{1}{h^2} & 0 & \hdots & & \vdots \\<br />0 & -\frac{1}{h^2} & \frac{2}{h^2} + v_3 & -\frac{1}{h^2} & 0 & \hdots & \\<br />\vdots & \ddots & \ddots & \ddots & \ddots & \ddots & \vdots \\<br />& \hdots & 0 & -\frac{1}{h^2} & \frac{2}{h^2} + v_{n-2} & -\frac{1}{h^2} & 0 \\<br />\vdots &  & \hdots & 0 & -\frac{1}{h^2} & \frac{2}{h^2} + v_{n-1} & -\frac{1}{h^2} \\<br />0 & \hdots &  & \hdots & 0 & -\frac{1}{h^2} & \frac{2}{h^2} + v_n<br />\end{array}<br />\right)<br />\end{eqnarray*}<br />


井戸型ポテンシャルの中央にポテンシャル壁がある場合


微分方程式による物理現象のモデル化(PDF)に従って、井戸型ポテンシャルの中央に有限の高さのポテンシャル壁がある場合の計算を行います。

中心からw0の幅に高さv0のポテンシャルがある場合のプログラムを書きます。

プログラムはeigen_sce.txtです。

まずはv0=0の場合、いわゆる普通の無限高さの井戸型ポテンシャルのなかの波動関数の計算です。

001_201308042257325d7.png

Fig.2: 無限高さの井戸型ポテンシャルの中の波動関数


更にv0=100のときの波動関数を計算したものが冒頭のものになります。

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