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Scilabでラザフォード散乱

微分方程式による物理現象のモデル化(PDF)に従ってラザフォード散乱のプログラムをScilabで書き直します。

001_20130729024531.png

Fig.1: ラザフォード散乱のシミュレーション結果の中心部分を拡大したもの。



点電荷によるα粒子の散乱


前期量子力学の重要な結論の一つに、原子はほとんど「すかすか」で質量と正の電荷は原子の中心の極めて狭い領域に集中しているというラザフォードの原子模型があります。このことを明らかにした実験がラザフォード散乱です。原子の構造に関しては九州大学のインターネット・セミナーミクロの世界」 - その1 - (原子の世界の謎) 第2部: 原子の構造が分かりやすいです。以下のトムソンの原子模型とラザフォードの原子模型の図も上記サイトから引用しました。このインターネットセミナーは書籍にもなっているようです(わかりやすい量子力学入門―原子の世界の謎を解く)。

Atom.png


金の原子核が金原子の大きさとくらべて充分小さく大きさが無視できると仮定すると、金原子はZAuの正の電荷を持つ点電荷であると考えることが出来ます。この金原子に5.3MeVのエネルギーを持つα粒子に作用するクーロン力は、金の原子核を局座標の原点に置くと、以下のようにあらわされます。

f = \frac{Z_{\alpha}Z_{\mathrm{Au}}e^2}{4 \pi \epsilon_0}\frac{1}{r^2}

たいそうな形をしていますが、r以外は全て定数です。つまり、クーロン力は金の原子核の距離だけで決まり、その大きさは距離の二乗に反比例します。

002_20130729024531.png

Fig.2: クーロン力


クーロン力のx成分とy成分はそれぞれ以下のようにあらわせます。

f_x = f \cos\theta = f\frac{x}{r}

f_y = f \sin\theta = f\frac{y}{r}

これらを運動方程式へ代入し、両辺をα粒子の質量mαで割ると

\frac{\mathrm{d}^2x}{\mathrm{d}t^2} = \frac{Z_{\alpha}Z_{\mathrm{Au}}e^2}{4 \pi \epsilon_0 m_{\alpha}}\frac{x}{r^3}

\frac{\mathrm{d}^2y}{\mathrm{d}t^2} = \frac{Z_{\alpha}Z_{\mathrm{Au}}e^2}{4 \pi \epsilon_0 m_{\alpha}}\frac{y}{r^3}

x,y,r以外は定数なので適切な単位系を設定すると

\frac{Z_{\alpha}Z_{\mathrm{Au}}e^2}{4 \pi \epsilon_0 m_{\alpha}} = 0.0614

となります。なお、微分方程式による物理現象のモデル化(PDF)には数値が書かれていませんが、α粒子の質量は陽子2つと中性子2つでmα=3756[MeV/c2]です。

プログラム


以上を踏まえたプログラムを以下に示します。
これによって描かれた図がFig1およびFig.3です。

003_20130729024530.png

Fig.3: ラザフォード散乱


clear;
// 表示領域のサイズ
//xymax = 2000; // 表示領域を2000*2000に設定
xymax = 400; // 表示領域を400*400に設定
// グラフの縦横比を等しくする
h = scf(); // ウィンドウを作成
ha = h.children(1); // Axes(座標軸)オブジェクトへのハンドルを取得
ha.isoview = "on"; // 座標軸の縦横比を等しくする
ha.data_bounds = [- xymax,- xymax; xymax, xymax]; // 座標軸表示範囲の設定

// *** 解くべき常微分方程式 ***
function dx = ruther(t,x)
r = sqrt(x(1) ^ 2 + x(3) ^ 2);
dx(1) = x(2);
dx(2) = 0.0614 * x(1) / r ^ 3;
dx(3) = x(4);
dx(4) = 0.0614 * x(3) / r ^ 3;
endfunction

// *** 時間ベクトル ***
T = linspace(0,100000,1000);

// *** α粒子の初速度 ***
v0 = 0.053;
vx0 = v0;
vy0 = 0;

// *** α線源の位置 ***
// x座標
x0 = - 2000;

// y座標を変えながらα粒子の運動を計算
for y0 = -95:10:95
X0 = [x0; vx0; y0; vy0];
X = ode(X0,0,T,ruther);
plot(X(1,:),X(3,:),'-r');
end

// 描画範囲の設定
zoom_rect([- xymax,- xymax, xymax, xymax]);


クーロン力のベクトル表示


α粒子が受けるクーロン力は単純に位置のみに依存するので、その力の向きと方向を矢印であらわして見ます。
矢印を表示するScilabのコマンドはchampで、champのためのベクトルを用意するのに便利なのがndgridです。

ベクトル表示を加えたプログラムがrutherford_sce.txtです。

004_20130729024530.png

Fig.4: ラザフォード散乱の結果にクーロン力のベクトルを追加したもの。


矢印の長さが、その点にあるα粒子が受けるクーロン力の大きさを表しています。数式を見るとクーロン力は距離の2乗に反比例することが分かりますが、グラフにしてみても強いクーロン力を受けるのは金原子核のごく近傍だけです。

さて微分方程式による物理現象のモデル化(PDF)の問題28は、つまるところトムソンの原子模型を採用すると散乱はどうなるのかということです。(例題でなく問題という割には答えも書いてありますが)。
これはトムソン模型の原子内部と外部でクーロン力の関数が以下のように場合分けされると考えれば簡単に考察できます。

f( \vec{r} ) = \begin{cases}<br />\frac{Z_{\alpha}Z_{\mathrm{Au}}e^2}{4 \pi \epsilon_0 m_{\alpha} R^3} \vec{r} & (r \leq R) \\<br />\frac{Z_{\alpha}Z_{\mathrm{Au}}e^2}{4 \pi \epsilon_0 m_{\alpha} r^3} \vec{r} & (r > R)<br />\end{cases}

r > Rでは、これまでに考えてきたラザフォード模型と同じ結果を示しますが、r≦Rではr=Rのときと同じ力しか受けません。したがってトムソン模型では飛んできたα粒子を大きな角度へ押し返すような散乱は起こりません。

なお、元PDFの数式は、またしても質量mαで割り算するのを忘れているようです。

参考URL




付録


このエントリで使用したScilabのシミュレーション用ファイルを添付します。ファイル名末尾の".txt"を削除して、"_"を"."に変更すれば使えるはずです。(参考:ねがてぃぶろぐの付録)


参考文献/使用機器




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tag: Scilab 常微分方程式 ode 量子力学 クーロン散乱 

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